ケーブルベア(ケーブルキャリヤ)の選定方法|基礎・実践ガイド

 

ここでは 機械駆動部のケーブル保護やホース保護に使われる 「ケーブルベア(ケーブルキャリヤ)の選定方法|基礎」I am making a note about the

 

FA自動機や産業用ロボットの設計において、可動部の配線をいかに安全に保護するかは設備全体の信頼性を左右する大きなテーマになります。  実務の現場では、「どの部品を選べば早期の断線トラブルを防げるのか」「フリースパンや収納率の計算が複雑で自信が持てない」「カタログの数値だけでは実際の過酷な環境での耐久性が読めない」といった潜在的な課題に直面し、設計ミスによる後悔を恐れて悩むことはないでしょうか。

 

正直、量産機などではケーブルベア(ケーブルキャリア)に入るものがほぼ特定されるので選定はまだ出来ますが、FA自動機などにおいては、毎回新規設計になるので「中に何がどのように入るのか」を詳細に把握するのが難しいです。

 

その為、WEB上には断片的なノウハウは散見されますが、実際の装置設計に直結する網羅的かつ体系的な情報を見つけにくいのが現状と考えられます。

 

私自身も機械設計の現場で多くの失敗や試行錯誤を経験してきました。 本記事では、私のこれまでの経験に加え、経験だけでは補いきれない最新の規格やメーカーの技術資料などを徹底的に調べ上げ、他のサイトには足りない客観的で詳細な情報をまとめました。

 

この記事は、読者の皆様がケーブルキャリアの全体像を広く浅く、かつ実務に必要な最低限の知識を体系的に学べるピラーページとして構成しています。具体的には、基礎となる国内外主要メーカーの製品特徴と違いから始まり、稼働環境に適した材質選びやストロークに応じた長さの計算手順を詳しく解説します。  さらに、断線トラブルを防ぐための適切な収納率の確保と仕切板の活用術、そして最終的な設備の寿命を延ばす設計基準や海外輸出時に求められる規格対応まで、実務で直面する疑問に対する答えを完全に網羅しています。

 

これらの情報を読み進めることで、特に設計初心者の方が実践的な答えがを見つけやすく、選定の基本となる標準的な知識が身につけば幸いです。

 

失敗しないケーブルベア選定方法とメーカー

ケーブルキャリアに関する必須の基礎知識

設備の可動部へ電力や信号を途切れることなく供給する配線は、システム全体を動かす生命線となります。  高頻度で動作する機械において、これらの配線を外部の障害物や自己交差による摩擦から保護し、一定の軌道に沿って安全に案内する機械要素がケーブルキャリアです。

 

日本の設計現場ではこの部品をケーブルベアと呼ぶことが多くありますが、これは株式会社椿本チエインが保有する登録商標になります。  同社が国内市場で先駆的な役割を果たしてきた背景から、現場において半ば代名詞として定着していると考えられます。

 

On the other hand,公的な図面を作成する際や他社と仕様をすり合わせる場面では、ケーブルキャリアやエナジーチェーンといった一般名称や各社の商標を正確に使い分けることが相手に意図を明確に伝えるコツとなります。  配線を保護せずに機械を動かし続けると、金属疲労や被覆の激しい摩耗によって、予期せぬラインの停止や莫大な修理コストを引き起こすリスクが高まります。  これを未然に防ぎ、設備の安定稼働を約束するためには、正しい基礎知識を持った上で最適な保護部品を採用することが不可欠となります。

 

国内外の主要メーカーと製品の種類

保護部品を選定するにあたり、市場にどのような製品が存在し、どのサプライヤーから調達するかを知っておくことは非常に有益なアプローチとなります。  現在、日本国内のFA自動機市場においては複数のメーカーが独自の強みを持った製品を展開しており、用途や予算に応じて最適な供給元を見つけ出すことが設計者の腕の見せ所となります。

 

例えば、国内発祥のメーカーは日本のモノづくりに特化したきめ細やかなサポート体制や短納期での部品供給を得意としている傾向があります。  対して海外発祥のメーカーは、世界規模での豊富な採用実績や、オンライン上で完結する利便性の高い寿命計算シミュレーターを提供していることが多く見受けられます。

 

また、製品の種類も多岐にわたり、軽さと扱いやすさを重視した樹脂製から、高温環境や過酷な重量物に耐えられる金属製まで幅広く揃っています。  これらの中から、クリーンルーム向けの発塵を抑えた特殊タイプや静音性に優れたモデルなど、使用環境の厳しさに応じて最適な種類を絞り込んでいく作業が求められます。

 

 

椿本チエインの製品特徴と強み

国内市場において長年にわたり圧倒的なシェアと知名度を誇るのが 株式会社椿本チエイン It is.  前述の通り、ブランド名が現場で代名詞として使われていることからも、日本の機械設計者からの厚い信頼がうかがえます。

 

主力製品であるプラケーブルベヤは、エンジニアリングプラスチックを使用しており、軽量でありながら高い機械的強度を備えている点が大きな魅力です。  標準的な用途から高速駆動が求められる設備まで、幅広いニーズに対応できる汎用性の高さを持っています。  さらに、静音性を徹底的に追求したモデルや、クリーン環境に特化した高度な製品もラインナップされており、特殊な環境下での使用にも強みを発揮します。

 

また、設計者が手軽に仕様を決定できるよう、ウェブ上で利用できる自動選定ツールや寿命計算プログラムを提供している点も実務において非常に助かる機能です。  これにより、設計の初期段階で素早くおおよその寸法や配置を検討することが可能となり、業務の効率化に大きく貢献しています。

 

 

イグスやTHKなど各社の特徴比較

日本の業界内で活躍するメーカーは他にも存在し、それぞれが独自の技術で市場のニーズに応えています。  ドイツに本社を置くイグスは、樹脂機械部品の世界的トップメーカーとして知られ、自己潤滑性を持つ特殊なポリマー素材を用いた エナジーチェーン を展開しています。

 

軽量化と長寿命化に特化しており、過酷な耐久試験に基づいた信頼性の高いデータを提供している点が特徴として挙げられます。  一方、直動システムの世界的メーカーであるTHKは、直線運動のガイド技術を応用した独創的な製品を開発しています。  同社の サイルベア は、一般的なピン連結ではなくリンクレス構造を採用することで、摺動による摩耗粉の発生を極限まで抑えることに成功しました。

 

この構造により、高い静粛性とクリーン度が要求される半導体製造装置などで高く評価されています。以下の表に、主要メーカーの特徴を詳細にまとめました。

 

企業名およびブランド 主な呼称・商標 特徴および市場での位置づけと提供製品群
株式会社椿本チエイン ケーブルベア、プラケーブルベヤ 国内市場を牽引する先駆的メーカーであり「ケーブルベア」の商標を保有する。汎用的な樹脂製の「TKR形」や「TKP形」、静音性を重視した「TKS形」、クリーン環境対応の「TKUA形」など極めて広範なラインナップを展開し、自動計算ツールも充実している。
イグス株式会社 エナジーチェーン ドイツに本社を置く樹脂機械部品の世界的メーカー。高耐久かつ自己潤滑性を持つ独自のポリマー素材を強みとし、軽量化と長寿命化に特化した製品群を提供する。オンラインシミュレーションツールが強力。
THK株式会社 ケーブルキャリア、サイルベア 直動システムのトップメーカー。一体成形のリンクレス構造を持つ「サイルベア」はガタや隙間がなく、高速稼働時の低騒音・低発塵性に優れる。直動部品との親和性が非常に高い。
株式会社日本ピスコ プラレールチェーン 空圧機器メーカーとしての強みを活かし、エアチューブとの親和性が高い製品を展開。小型から中型まで扱いやすいラインナップが豊富。
CPS ケーブルチェーン 韓国発祥のメーカー。コストパフォーマンスに優れており、標準的な仕様のFA自動機において近年シェアを拡大している。

 

 

形状と長さで絞るケーブルベア選定方法

使用環境に適した材質と形状の選び方

設備が設置される空間の条件を正確に把握することは、適切な部品を選ぶための強固な土台となります。  材質は大きく分けて樹脂製と金属製に分類され、現代の一般的な屋内工場で稼働する機械であれば、モーターへの負荷が少なく軽量な樹脂製が選ばれることが主流となっています。

 

しかしながら、工作機械の加工室内のように高温の切削切りくずが飛散する環境や、鋳造設備周辺のような過酷な熱源が存在する場所では、樹脂製では溶融や変形を引き起こす危険性が極めて高くなります。  このようなシビアな環境下においては、耐熱性と高い引張強度を併せ持つスチール製やステンレス製の採用が絶対条件will be.

 

形状に関しても、環境の清浄度に応じた選択が求められます。  周囲に粉塵や液体がないクリーンな環境であれば、放熱性に優れメンテナンス時のアクセスが容易なオープン形が最適です。  逆に、木くずや切削油が降り注ぐような環境では、内部への異物侵入を完全に防ぐクローズド形を選ぶことで、配線の被覆を物理的・化学的ダメージから守り抜くことができます。

 

以下の表に、薬品や溶媒に対する材質別の耐性目安を示します。

材質の種類 クエン酸(10パーセント)への耐性 クロム酸(1パーセント)への耐性 酢酸(5パーセント)への耐性
スチール製 不可 不可 不可
ステンレス製 適当 適当 適当
エンジニアリングプラスチック(標準品) 適当 不可 適当
エンジニアリングプラスチック(低摩擦仕様) 使用条件により可 不可 適当
参考出典先:椿本チエイン テクニカルガイド(https://tt-net.tsubakimoto.co.jp/tecs/qada/ccv/qada_ccv.asp

 

 

ストロークに応じたフリースパンの確認

可動部が移動する全距離をストロークと呼びますが、この移動に伴い保護部品が自身の重みと内容物の重みを支えながら、空中で真っ直ぐに張り出せる長さをフリースパン(自立可能長さ)と呼びます。  この許容長さを超えて使用すると、部品が大きく垂れ下がり、軌道を外れて周囲の構造物に激突する原因となります。

 

適切なサイズを決定するためには、まず内部に格納する全ての配線について、一メートルあたりの合計質量を正確に計算します。  次に、メーカーのカタログや選定ツールに記載されている能力線図というグラフを参照し、計算した合計質量と必要なフリースパン長さが安全な許容範囲内に収まっているかを確認する作業を行います。  もし自立できる限界を超えてしまう場合は、部品のサイズをワンランク大きくして機械的な剛性を高めるか、設計を変更して軌道の下部を支えるサポートローラーを追加する工夫を取り入れる必要があります。

 

この確認作業を怠ると、設備稼働直後に部品が座屈して破損する深刻なトラブルに直結するため、最も慎重な検討が求められるプロセスとなります。

 

 

長距離移動を支えるガイドレールの役割

大型の搬送装置やガントリーロボットのように、ストロークが数メートルを超える巨大な設備では、部品が自立できるフリースパンの限界を容易に超えてしまいます。

 

このような長距離移動の条件下では、フリースパンの範囲内で運用することを諦め、部品の上段が下段の上に乗って滑るように 動作するスライディング仕様 を採用することが標準的な設計手法となります。

 

この構成を安定して動作させるために不可欠な要素がガイドレールです。  ガイドレールを設置することで、長い距離を高速で移動する際にも部品が左右に蛇行したり、横倒れしたりするのを防ぎ、常に正しい軌道を維持させることが可能になります。  また、滑り動作によってリンク同士が連続的に擦れ合うため、摩擦熱や摩耗を抑える対策も必須となります。

 

摩擦を低減する専用部品の活用

スライディング仕様で設計する場合は、部品の底面に低摩擦素材で作られた専用のグライドシューを取り付けるオプションがあれば必ず選択してください。  これにより滑りが飛躍的に滑らかになり、部品の摩耗を大幅に遅らせることができます。  同時に、駆動モーターの推力を計算する際には、部品全体の重量による慣性力だけでなく、滑りによって生じる動摩擦抵抗も確実に計算式に含めなければ、動作時のトルク不足を招きエラーを引き起こす原因となります。

 

稼働軌道に必要なリンク数の算出

設備に取り付けるための部品の全体長さは、ストローク量と曲げ半径を基にした幾何学的な計算式から導き出します。  正確な長さを算出することで、短すぎて最大移動時に突っ張ってしまったり、逆に長すぎて余分なたわみが生じたりするのを防ぐことができます。  最も標準的な設置方法であり、固定端がストロークのちょうど中央に位置する場合、必要なリンクの全体長さを求める基本公式は以下のようになります。

 

L = S / 2 + πR + K

 

ここで、L は全体長さ、S は移動ストローク長、R は曲げ半径、そして K は固定部付近の余裕を持たせるためにメーカーが規定するピッチファクター(安全加算値)を示しています。  もし固定端が中央からずれた位置に配置されている場合は、ずれた距離の分だけ部品を余分に長く手配しなければなりません。  部品コストを最小限に抑え、かつコンパクトな空間に収めるためには、可能な限り固定端を可動範囲の中心に配置することが理にかなった優れた設計アプローチとなります。

 

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計算に基づく最適なケーブルベア選定方法

適切な収納率を守るための内空計算

部品の内部空間にどれだけの配線を詰め込めるかを示す指標が収納率です。  空間に対して隙間なく配線を詰め込んでしまうと、屈曲動作のたびに配線同士が激しく擦れ合い、摩擦熱によって被覆が早期に破れてしまいます。

 

For this reason,内部空間には適度な余裕を持たせることが絶対のルールとなります。  一般的な丸型の電気配線の場合、内部の断面積に対する収納率は概ね60パーセント以下に抑えることが強く推奨されています。  さらに、空圧や油圧のホースを格納する場合は、圧力が加わった際にホース自体が膨張して太くなる現象を考慮しなければなりません。  そのため、ホース類を含む場合はより厳しい基準を設け、収納率を40パーセントから50パーセント以下に低く保つ工夫が必要となります。

 

内空寸法を決める具体的な計算としては、全ての配線を横一列に並べた際の合計幅を求め、それぞれの外径に対して最低でも2ミリメートル、あるいは外径の10パーセント以上のクリアランスを加算して必要な内幅を算出します。  内高についても、最も太い配線の外径に十分な余裕を持たせた寸法を満たすサイズをカタログから選び出します。

 

ケーブルに負担をかけない曲げ半径

前述の通り、部品がU字型に曲がって移動する際、内部の配線には継続的な曲げ応力が加わります。  この曲がる際の円弧の大きさを曲げ半径と呼びますが、この値が小さすぎると配線内部の銅線に過剰な引張と圧縮のストレスがかかり、金属疲労による早期断線を引き起こす最大の要因となります。

 

複数の種類の配線を同時に格納する場合、それぞれが持つ許容値の中で最も大きな数値を持つ配線を基準とします。  そして、基準値よりも大きな曲げ半径を持つ保護部品を選定することが、システム全体の寿命を確実に確保するための基本原則となります。  空間に制約がある場合でも、決して曲げ半径を妥協してはなりません。

 

メーカーが指定する許容曲げ半径の事例

配線を製造している各メーカーの仕様書には、可動環境下で使用する際の許容最小曲げ半径が必ず記載されています。  一例として、沖電線のロボットケーブルのテクニカルデータ(https://www.okidensen.co.jp/jp/prod/cable/robot/orf.html)を参考にすると、固定部配線ではケーブル外径の4倍以上とされているのに対し、可動部配線においてシールドなしの場合はケーブル外径の6倍以上、シールド付きの場合はケーブル外径の8倍以上といった数値が示されています。

選定の際は、必ず採用する配線メーカーの仕様書を直接確認してください。

 

 

混配線を防ぐ仕切板の論理的な活用

一つの空間内に太さや硬さが全く異なる配線を無造作に混在させることは、トラブルの温床となります。  例えば、太くて重量のある動力線と細い信号線をそのまま並べると、屈曲部において太い線が細い線の上に乗り上げ、重みと硬さで細い線の被覆を局所的に押しつぶしてしまいます。

 

このような異なる種類の配線同士の干渉を防ぐために、内部空間を物理的に分割する仕切板を積極的に活用します。  縦仕切板を使用すれば、空間を左右に独立した部屋として完全に分けることができ、配線同士が直接接触するのを確実に防ぐことができます。  以下の表に、混在させる配線の組み合わせと、効果的な対策を整理しました。

 

格納対象の組み合わせと条件 発生しうる力学的・電気的な問題点 推奨される仕切板の活用方法と対策
外径の大きく異なるケーブルの混在 細い線が太く重い線の下敷きになり、摩擦や圧力で被覆が局所摩耗する。ノイズ干渉の懸念もある。 セパレータで完全に部屋を分割する。細いケーブルが太く重いケーブルの下敷きになることを防ぎ、間隔を保つ。
重量のある動力線と軽量な通信信号線 片側に重量が偏ると稼働時にキャリアにねじれが生じる。 動力線をキャリアの両サイドに配置し左右の荷重バランスを均等にする。信号線は中央部に配置しノイズ干渉を防ぐ。
電気ケーブルと空圧・水圧ホースの混在 ホースは圧力がかかるたびに膨張・脈動を起こし、隣接する電気ケーブルを継続的に叩き摩耗させる。 必ずセパレータで厳密に隔離する。ホース側の空間には圧力による膨張を考慮して十分なクリアランスを確保する。
参考出典先:JMACS テクニカルガイド(https://www.jmacs-j.co.jp/documents/tech/kadoubu.pdf

 

 

内部スペースを最適化するケーブルの配置

内部のレイアウトを決定する際、最も理想的な状態は全ての配線が横一列に整然と並んでいる平置き状態です。  空間に余裕があるからといって配線を多段に積み重ねて配置することは厳重に禁止されています。

 

重なり合った配線は互いの重みで屈曲時の自然なスリップ運動が阻害され、張力が逃げ場を失って断線に至るからです。  配置のバランスにも気を配る必要があります。  重量のある配線を片側に偏らせて配置すると、保護部品全体にねじれの力が働き、片側のリンクだけが異常に摩耗する原因となります。

 

重い線は可能な限り両端に振り分けて左右の重量バランスを均等にし、軽い線は中央に配置するよう心がけます。  また、複数の配線をすっきりと束ねて整理したくなるかもしれませんが、屈曲部分においてインシュロックなどで結束することは絶対に避けてください。  結束されると長さの差を吸収するための滑りが完全に失われ、配線全体が螺旋状に変形するコルクスクリュー現象を引き起こし、致命的な損傷を招く結果となります。

 

寿命を延ばすためのケーブルベア選定方法

ケーブルの張力を緩和し断線を防ぐ対策

可動部において最もダメージが蓄積しやすいのは、配線がコネクタに接続されている根元の部分です。  硬いコネクタの部品と柔らかい配線の被覆の境界部分には、振動や屈曲による応力が極端に集中しやすくなります。

 

この応力集中を緩和するために、接続部には熱収縮チューブや専用のスリーブを被せて、剛性の変化をなだらかにして物理的なサポートを行う対策が極めて有効です。  また、固定部における配線の長さ調整にも細心の注意を払う必要があります。  両端で配線を固定する際、短く張り詰めた状態にしてしまうと、保護部品が最大ストロークまで伸びきった時に配線そのものが張力を負担することになり、即座に内部の芯線が引きちぎられてしまいます。  逆に長すぎる状態に設定すると、内部で配線が波打つように蛇行し、保護部品の内壁と激しく摩擦を起こしてしまいます。

 

短すぎず長すぎない自然な余裕を持たせ、屈曲時に配線がわずかに前後に動ける自由度を確保することが、長寿命化を実現するためのポイントとなります。

 

耐環境性を考慮した保護設計

設備がどのような環境要因にさらされるかを予測し、それに耐えうる防御策を講じることも設計者の役割です。  工場内では、目に見えない微小な粉塵から、切削加工で生じる鋭利な金属片まで、様々な異物が飛散している可能性があります。

 

これらが内部に侵入すると、配線の被覆を削り取るヤスリのような働きをしてしまいます。  このような悪環境では、密閉構造を持ったクローズド形の部品を選定し、外部からの侵入を物理的にシャットアウトします。  ただし、密閉されることで内部に熱がこもりやすくなるという新たな課題が発生します。

 

大電流を流す動力線を格納する場合は、周囲温度の上昇に伴う許容電流の低下を考慮して、配線の導体断面積をワンランク太いものに変更するなどの熱対策を同時に検討します。  一方、クリーンルーム内での製造工程は、部品自身から発生するわずかな塵埃すら許されません。  この場合は、摺動部を持たないリンクレス構造や低摩耗素材を用いた低発塵タイプの製品を指定し、空間のクリーン度を高く維持する設計が求められます。

 

 

トラブルを防ぐためのメンテナンス要件

長期間の継続的な稼働を前提とする設備では、日々の目視点検や定期的な部品交換がいかに容易であるかが、ライフサイクルコストに直結します。  摩耗状態を適切に管理するためには、メーカーが指定するリンクの許容摩耗量や、フリースパン部のたわみ限界値を取扱説明書に明記し、運用側の保守基準を明確にしておくことが推奨されます。

 

破損時の同時交換の絶対原則

運用において現場で徹底すべき大原則があります。  それは、保護部品本体のリンクが破損したり亀裂が入ったりした場合、内部に格納されている配線も一切の例外なく新品に交換するという厳しいルールです。

 

本体が破損に至る過程、あるいは軌道を逸脱した瞬間に、内部の配線には想定を遥かに超える過剰な引張応力や曲げ応力が加わっています。  外見上は被覆に全く傷がなくても、内部の極細の銅線には目に見えない致命的な金属疲労が蓄積している可能性が極めて高いためです。  コストを惜しんで本体のみを交換しても、直後に配線の断線トラブルが再発し、結果的に設備を二度止めることになってしまいます。

 

 

稼働条件から導き出す高精度な寿命計算

最終的な設計仕様を決定する前に、想定した部品が設備の要求寿命を確実に満たすかどうかを論理的に検証するプロセスを踏みます。  設備の最高移動速度や最大加速度、一日の稼働時間、そして年間の稼働日数といったパラメーターを整理し、期待される総走行距離や屈曲回数を算出します。

 

現在、椿本チエインやTHKといった多くの主要メーカーは、自社のウェブサイト上でこれらの稼働条件を入力するだけで、等価荷重や寿命補正係数を自動で計算し、期待寿命をシミュレーションできる高度な技術計算ツールを提供しています。  例えば、 椿本チエインのケーブルベヤ自動選定ツール などを活用することで、経験や勘に頼らない、工学的な根拠のある部品選びが可能となります。

 

もし計算結果が設備の要求寿命を下回る場合は、部品のサイズを大きくして許容荷重を高めたり、動作速度のパラメーターを調整したりといった設計の最適化を図り、目標とする耐久性を確保していきます。

 

注意点を押さえたケーブルベア選定方法

JIS規格が定める機械安全基準の適用

日本国内で稼働する設備を設計する場合、日本工業規格に基づく機械の安全基準を満たしていることが大前提となります。  特に電気装置の安全性を取り決めた規格の中では、可動部における配線の物理的な保護や、適切な曲げ半径の維持、さらには端子部への張力緩和に関する項目が厳格に規定されています。

 

これらの基準を満たすために、配線を剥き出しのまま空中で引き回すような無防備な設計は避け、適切な保護筐体で覆うことが強く要求されます。  選定した保護部品が、周囲の作業者への安全性を確保しつつ、配線自体を確実に保持できる堅牢な構造であるかを検証し、規格の精神に則った安全な設備システムを構築することが求められます。

 

輸出時に必須となるCEマーキング対応

開発した自動機やロボットシステムを欧州市場へ輸出する、あるいはグローバルな安全基準を求める大手顧客に納入する場合、CEマーキングへの適合は避けて通れない法的要件となります。  設備全体として機械指令や低電圧指令といった厳しい要求を満たすために、使用する全ての構成部品の安全性が問われることになります。  装置の内部に組み込まれて一体として機能する配線や保護部品であれば、それらは装置全体の適合性評価の中で包括的に審査されます。

 

しかし、部品を調達する段階で、各メーカーから提供される技術資料や適合宣言書を確実に収集し、設計の正当性を証明できる技術文書を整えておくことが、スムーズな通関と輸出を実現するための必須条件となります。

 

欧州向けに注意すべきRoHS指令の罠

環境規制であるRoHS指令についても、法務的な深い理解を持っておく必要があります。  電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限するこの指令において、設計者が陥りやすい法的解釈の落とし穴が存在します。

 

前述の通り、設備内部の配線として組み込まれた状態で出荷される場合は、設備全体の指令適合の一部として扱われます。  しかし、将来的に設備のメンテナンス用交換部品として、専用コネクタ加工済みの配線アセンブリなどを単独で欧州の顧客に販売・輸出する場合は状況が全く異なります。

 

この単独で市場に投入されるケースにおいては、配線アセンブリ自体が独立した電気・電子機器とみなされ、部品単体としてのRoHS指令への適合と、それに伴うCEマーキングの貼付が個別に義務付けられるのです。  したがって、将来の保守部品としての提供形態までを見越して、最初から単体で規格対応が証明されている部材を選んでおくという先見的な判断が必要となります。

 

確実なケーブルベア選定方法のまとめ

この記事で解説した実務で役立つ重要なポイントや選定の結論を以下にまとめます。

 

  • 用語の違いを理解し公式図面では一般名称であるケーブルキャリアを正しく使用する
  • 椿本チエインやイグスやTHKなど各メーカーの得意な技術領域を把握し比較検討する
  • 周囲の粉塵や熱などの耐環境性を考慮して軽量な樹脂製か堅牢な金属製かを見極める
  • 密閉環境が必要な場合はクローズド形を選び内部の熱対策を併せて行う
  • ストローク長から算出した重量がカタログのフリースパン許容範囲内にあるか確認する
  • 長距離移動で滑り動作が生じる場合は専用の摩耗対策とガイドレールを必ず併用する
  • 計算式を用いて固定端の位置から無駄のない正確なリンク数を割り出し長さを最適化する
  • 内部空間の収納率は安全マージンを取り通常は60パーセント以下に抑えるよう設計する
  • 全ての配線の中で最も要求される曲げ半径が大きなものを基準に部品のサイズを決める
  • 外径が異なる線や脈動するエアホースが混在する場合は仕切板で部屋を論理的に分割する
  • 内部の配線は重ねずに平置きとしインシュロックでの結束は断線を招くため絶対に避ける
  • コネクタの根元はスリーブで保護し稼働時の張力を逃がす十分な余裕を持たせる
  • 本体の一部が破損した際は深刻な断線を防ぐため内部配線も同時に新品へ交換する
  • 各社のウェブサイトにある寿命計算ツールを活用し設備の要求寿命と照らし合わせる
  • 欧州へ保守部品を単体輸出する際は個別のCEマーキングやRoHS指令対応に注意する

 

That's it.