今日は「機械設計において「設計ミス」が起きるポイントとその対策」というメモです。
先日、ツイッターのフォロワーさんから設計ミスに対してのご質問を頂きました。頂いたご質問は 「設計ミスを無くすために何をしていますか?」という内容 でした。
そこで、今日は私が設計ミスに関して考えている事・思っている事をメモしておこうと思います。 機械設計というお仕事は多くの分野に存在していますが、どの分野でも 設計ミスは同じ傾向にある と思いますので参考程度に受け取ってもらえればと思います。
具体的な設計ミスとそれら発生要因
設計ミスって、現場では笑いのネタとして、時には納期延長の言い訳として扱われます。 我々設計者はそういった現場に遭遇すると大変辛いものです。
まぁ、でもその設計作業をしていたのは自分ですし、ミスがあれば受け入れるしかないです。
実際は この重圧が設計士を強くしている といっても良いですが・・・。私が過去に起こした設計ミスを纏めるとこんな感じです。
①要求能力に対して満足していなかったミス
機械設計において 一番やってはいけない設計ミスは、その機械に求められる要求を満足していない設計ミス です。 その主な内容は以下の通りです。
- 機器パワーが足りなかった
- 機器同士が干渉してしまった
- 材質の選定を間違えた
- タクトオーバーしてしまった
などです。
機械化の主な目的は 人材不足を補う自動化 や 関わる作業者の省力化 なので、設計計算や仕様を決め途中でミスを起こすとこれらの結果につながります。
②作業上のミス
次は 機械完成前に対応がし易い(途中で設計ミスが解りやすい)設計ミス です。
- 発注を忘れてしまった
- 数量を間違えてしまった
- 寸法抜けの図面を書いてしまった
- 加工不可形状をモデリングしてしまった
- 締結が出来ない組付けだった
これらは初歩的なミスに分類され、設計者自身の技量や仕事の取り組み方で増えたり減ったりする部分ですね。
③ルール上のミス
最後は その機械を設計・製作する上でノウハウやルールに沿っていないミスです。
- 記載ルールに沿っていなかった
- 指定鋼材を使っていなかった
- 安全規格に沿っていなかった
説明が難しいので、上手く伝えられなかったらすみません。
例えば、設計した機械が完璧(コスト・能力・エンドユーザーの満足度など)だったものが100%とした場合、80~90%の完成度でも動きますし、使えないものではないんです。
例えば私が設計しているような 仕様決めから始まる新規設計する機械や機能を検証する試作的なものは 80~90%の完成をのものが多く、 逆に老舗機械メーカーなどのように長年同類の機械を設計製造しているメーカーでは、試作を超える80%~100%の領域をノウハウとして持っていたり、100%は当たり前の中で仕事をしているので、社内ルールを無視した設計は設計ミスとして扱われます。
設計ミスへの対処で最も重要なのは「楽をしない」という仕事に向き合う姿勢
一言で設計ミスと言っても、時と場合、そのミスを扱う人の発見時刻など・・・タイミングでそのミスの重さが変わります。
機械設計に限らず、製造業におけるミスへの対処として マニュアルやチェックシートに記載する事で抑制する という方法が当たり前と言うか、簡単に思いつく対処法ですね。 ですが私の個人的な考えとして 起きた設計ミスをルールを追加し抑制するやり方は好きじゃない です。
それで「設計ミスが減る」と思っているのは上司と関連層くらいですかね。
ルールを追加して抑制する例として、図面のチェックシートなどがそれに該当します。 チェックシートが完全ダメではないと思うんですが、設計ミスって表面的に見えない部分が多いから 設計後に表面を見渡すようなチェックシート作ったってダメ なんですよね。 設計ミスは表面化する前の段階で起きてる事なので、そこを潰す必要があります。
だから、起きた設計ミスに対する原因究明をして チェック項目増やすんじゃなくて 根本的にその起こらないよう工程で潰していく必要がありますね。
特に、私のような個人の設計者は 他に頼る所がありませんから、ミスが起きないような仕事を「仕組み」でカバーする必要 があります。
ここでいう仕組みというのは この見出しである 設計ミスへの対処で最も重要なのは「楽をしない」という仕事に向き合う姿勢 です。 そしてその代表が 設計審査と言われるDRですね。
先ほど分類した設計ミスでは以下の3項目を挙げました。
- 要求能力に対して満足していなかったミス
- 作業上のミス
- ルール上のミス
設計審査(DR)で防げる設計ミスは 要求能力に対する満足度 と ルール上のミス です。
設計ミスを減らすための 最終チェックシートを作ってセルフ的に設計者がチェックするのではなく、設計者以外のプロジェクトメンバー全員でDRを適切に行うことが必要です。
こんな事を書くと 管理者は嫌だと思うんですが、長年機械を設計してきて思うのはこれしかないです。 設計ミスをなくす為に DRで審査する内容をリストアップし、明確にする事が重要です。
管理者が行える設計ミスへの対処としては、作業上のミスを減らすための ツールの充実と作業環境の構築 です。 設計の仕事は集中力を要するので、 集中できる部屋や1人2役を行えるようなCADツールを準備するのも良いかと思います。 2DCADで設計ミスやカウントミスが起きるようなら3DCADを準備するのも有効です。
ただ、私みたいな 個人は仕事の仕方を変えるのは容易ですが、 大手の企業チームになると簡単にクリアできる問題にも時間が掛かってしまう傾向にあると思うので、社内の根回しなど難しい問題ですね。
最後に
ここまで設計ミスに対して思っていること書きましたが、ミスは起きるものです。 ですがその一度犯したミスを深く深くまで原因究明していけばちょっとした変化で解決するかもしれません。
クリック動作にしても、クリックする回数の多い方がミスを起こす確率があがるわけですし。
ですから、設計ミスを無くす為にチェック項目を増やすような事はやめて、工数が減るような「ツールの設定」であったり「サボらない」という当たり前の仕事が出来れば設計ミスは格段に減ると思います。あと、周りの人(上司やお客様)が設計者に任せっきりにしないというのも大切ですね。
以上です。
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