機械設計の仕事内容 ~製造装置編~

2017年9月21日




 

今日は「機械設計の仕事内容~製造装置編~」についてのメモです。

 

  • 製造装置を作る機械設計の仕事内容
  • 機械設計士への入り口
  • 製造設備設計士を目指すなら、こんな事を意識すると良い

 

といった内容のお話をしようと思っています。

製造装置機械設計の仕事

製造装置機械設計の仕事内容について

この記事では、機械設計士について出来る限り解りやすい言葉で説明していきます。また、機械設計では製品を設計する場合と、それらを生産する上で必要になる装置を設計する場合で設計内容の違いがあります。ここでは後者である製造装置機械設計についてお話したいと思います。(製品開発の設計士の話はまたいつか)

 

 

この記事を書いた意図

今回、製造装置設計のお仕事全般について記事を書くわけですが、この記事を書いた理由は

 

  • 機械設計士が減ってきている
  • 機械設計士を知ってほしい

 

だから、機械設計士を目指してくれませんか?

 

という事です。

 

はっきり言って、今は技術内容・開発手法・生産手法が複雑化しているために、機械設計士は高度な能力を求められます。そして企業は即戦力を求めるためにとても入り口の狭い機械設計という職業は、今かなり危機的状況に入っていると思います。ですから、この記事を通じて機械設計士という職業をより深く知ってもらい、その中でも機械設計士を目指してくれる方が増えたらとても嬉しいです。

 

 

私の経歴を少し

この話をする前に、私の経歴を少し。

まず学歴ですが、農業高校出身から経済学を学べる文系の大学へ。そこからの機械設計の世界に入りました。機械設計職での経歴は、機械設計事務所、機械要素メーカー、自営業、機械要素メーカー、機械設計事務所仲間と立ち上げ(現在)ですね。2D設計から始まって今は3DCADを利用した設計業務を行なっています。(私はドラフターでの作業を知りません。)

 

 

設計の経験は、

2D設計

  • 自動車関連の大型部品特殊搬送
  • 一般的なコンベア設計・リフト関連
  • 機械要素設計

3D設計

  • 光学顕微鏡
  • 航空機の試験装置
  • 宇宙での研究装置
  • 精密部品搬送装置
  • 機械要素の設計

以上のように比較的一つのカテゴリに縛られず、この業界を広く見てきていると思います。そしてそれらを実際に設計したりしているので、知らないことが比較的無いところまで来ています。さらにその分野のスペシャリストを見てきているので仕事を見るだけで「出来る設計士」なのか「出来ない設計士」なのかの判断もそこそこ出来ます。

 

以上が私の簡単な経歴です。

 

 

製造装置機械設計の仕事は何をする?

では、本題に入っていこうと思います。

 

まず、機械設計士のお仕事はどんな仕事なのか?ということですが、機械設計のお仕事を簡単に説明すると「必要な物を現実に生み出すお仕事」です。お客様に言われた物(欲しいもの)を具現化したり、言われたように改造したりですね。

 

仕事に求められる結果はとてもシンプルですね。難しい表現をすれば「要求された機能や品質を、要求されたコストと納期を満足すること」です。では、機械設計士がその「無いものを生み出す」仕事で、実際に実務でどんなことをしているのか、いくつか並べてみようと思います。

 

 

製造設備の機械設計士が一般的に実務でしていることを簡単に書きます

打ち合わせ

お客様と装置などの仕様を決めるための作業をします。もしくは仕様をお客様から受け取ります。

 

見積り

仕事に着手する前にその作業がどれだけ時間が掛かるか設計の見積もりをします。この金額によって受注がきまります。

 

計画図~組立図

設計が始まったら、CADを利用して計画・承認・組立図などの絵を書き始めます。そこに利用する駆動機器や構造(強度)などの計算もします。必要であれば解析も行います。

 

DR(デザインレビュー)~承認

設計している装置を、お客様や関係者らとレビューします。 レビュー内容は製造設備の全体から詳細までの全てについてです。これらDRは設備の大きさや内容により複数回行われます。

 

部品図~検図~出図

「これで進めて良いですよ」と承認してもらった装置の組立図から構成する部品を部品図に起こしていきます。部品図作成作業は一般的に「バラし作業」なんて言い方もします。それが終われば図面の検図をします。検図とは「製図者以外の人が図面をチェック」することです。検図が終わると同時に、出図に関わる資料を揃えます(購入品リストや部品表などを作成します)

 

製作中は問い合わせ対応(各部品~組立)

設計士は出図を行った後も仕事があります。それが問い合わせ対応です。出図した部品図に対する質問や間違いの指摘、加工要望を聞いて図面改訂をするなどの作業です。部品図に対する対応をしながら組立の対応が始まります。組みつけ方、取り付かない問題が発生したり、それらの対処に追われます。

 

フィードバック、完成データ一式納品

無事組立が終わり、納品後には(もしくは同時に)追加工や図面訂正のフィードバック作業をします。そしてそれら完成した一式をお客様ご指定の納品形態で納品します。

 

以上、これが一般的な業務になります。もちろんこれを全て一人で行なうのは大変つらいです。これら一連の流れを一人で行なう設計士も非常に多いので、機械設計の仕事は繊細で気が休まるところがなくて大変な職業ですね。大項目でみれば簡単に見えますが、機械設計士は設計の品質を満足するための計算や、構造を考える時間に時間を費やし、適切な表現ができるように努力します。

 

機械設計士の給料

機械設計士の給料は、平均的に少し高目であると思います。各会社さんでその給料レンジは違いますが、お仕事内容としてとても重要ですし、抱える負担もかなり大きいので給料がそこそこでないとやる気にも関わってきますね。会社側からしても設計者はとても大切です。ですからとてもやりがいのある職業ですよ。

 

私の周りには大手企業の設計士の方や、個人事業としての機械設計士が複数人います。平均で言えば余裕で収入1000万越えてます。例えば開発系の企業に勤める設計士は、その企業の「売るもの」や「サービス」に応じて年収が違います。ですから一般的に年収ランキングでランクインするほどの企業に務められれば安定して高収入です。

 

逆に、下請けとして製造装置の設計製作をする会社に勤めた場合や個人事業で設計をする場合、一時間あたり3DCAD仕事で3000~4000円、地方ですと、3DCADでも2300円~3000円位ですね。装置の設計費はそれら単価×時間になります。お客様(設計依頼主)にもよりますが、1物件の値段が決まっている場合もあります。要するに設計に掛かった時間だけ請求できる保証はありません。また、CADの利用は保守費用が年間20万程度掛かりますから、一般的な時給と比べると一瞬は「4000円か!高いな!」となりますけど、意外と運用コストがかかるので高いわけではありませんね。

 

機械設計士としての稼ぎ方も、仕事をしっかりできる人であれば、働き方も選択肢が増えます。会社のエンジニアとしてそのカテゴリーに特化した能力を磨くのもよし。設計事務所に所属して幅広く汎用技術を磨くのもよし。個人事業でやりたい仕事を適切に受注して稼ぐのもよし。

 

自分の将来に合わせて考えればと思います。

 

機械設計士への入り口

私の経歴を見ていただければ、正規ルートで機械設計の職についたわけではありません。正規ルートとは、工業系の学歴を積んでのメーカー就職です。正規のルートで、やはり設計士になろうとしたら工業系の学歴がないと厳しいですね。

 

ただ、正規ルートは「いきなり設計士を目指す」という前提です。段階を踏んで「いずれ設計士を目指す」としたら、話は変わってきます。特に今の機械設計士不足は非常に問題となっています。

 

ネット上には機械設計士として即戦力を求める広告をよく目にします。しかし、ローカルでは即戦力にならなくてもエンジニアを欲しがっています。私は、機械設計士になるには、段階を踏むことでもなれると思います。例えば設計を実務としなくても、設計に関わる時があるんですよね。

 

  • 加工系の仕事内容だったら製造技術
  • 生産管理の仕事内容だったら生産技術
  • 品質管理の仕事内容だったら生産技術や開発

 

みたいな感じです。

 

機械設計の仕事をしていなくても、機械設計の仕事はあらゆる所に関わっていますよね。関わりを深く持つことで知識が上がり、自然と機械設計の入り口に立っているのですよ。でもね、意外とそういう事に気づいている人も少ないです。ですから、考え方を変えると機械設計の仕事への入り方が沢山あることに気がつきます。

 

 

製造設備設計士を目指すなら、こんな事を意識すると良い

機械設計は、生産性を上げるための機械を設計したり、製造における部分的な改善に機械を設計します。生産ラインに関係ない開発製品の設計もします。

 

ですから幅がとても広いんです。もし機械設計士としてお仕事をしようと思ったら、

  • 何を作りたいのか
  • 何に携わりたいのか

以上2点がとても重要です。ただ、漠然と機械設計をしたいと考えているだけではだめです。何でもいいから、とにかく機械設計をしてみたいと言う方は、機械設計事務所が良いと思います。その中でいろんなジャンルの設計を経験していくうちに、やりたい設計が見つかるかもしれませんね。

 

機械設計士に必要なスキル

機械設計士に必要なスキルは何だと思いますか?僕は機械設計の世界にどっぷり浸かっている方だと思いますが、そんな僕が「機械設計士に必要なスキルは?」と聞かれたら

 

「ん、逆にあるの?」

 

と、なります。

 

スキルとは:引用ウィキペディア

教養や訓練を通して獲得した能力のことである。 日本語では技能と呼ばれることもある。 生まれ持った才能に技術をプラスして磨きあげたもの。

正直、その時に必要なスキルを身につければいいだけの話です。何でもすぐに設計できる機械設計士は見たことないです。完璧なエンジニアなんてなかなか居ませんよ。安心してくださいね。ですから、機械設計をするために必要なスキルは「これから身につけます」って感じですね。

 

但し、あなたが勤めたい会社さんから一定のスキルを求められている場合は「これから身につけます!」っていうのはダメですけどね。

 

機械設計という職業の未来

これからの機械設計の職業(仕事)はまだまだ必要です。今始まっていますが、圧倒的な機械設計士の人材不足が目に見えています。そしてIOT・スマート工場化などの工場改革を実務として行なうのは機械設計の仕事だと思っているので、今ものすごく求められていると思います。

 

そして今流行の「人工知能」の発達においても、機械設計という仕事は、なかなかAIと入れ替えずらい職業だと思っています。

 

 

その他の機械設計の細かい仕事内容は「機械設計メモ」に綴っています。

ここに書ききれない機械設計の細かい仕事内容はこの機械設計メモを読みあさってみてください。もう少し機械設計のリアルなところが見れるかと思います。

 

以上です。

 

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