【計算書付き】コンベア駆動のモータートルクの基本計算

2017年1月15日

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今日は「コンベア駆動のモータートルクの基本計算」についてのメモです。

 

コンベアで物体を水平搬送するときの計算を基本的な順番に沿ってまとめてみました。

コンベア駆動のモータートルクの基本計算_1

コンベアの計算・選定の現実

機械設計(特に生産設備)においてはコンベアを購入する場合が多いですが、コンベアの選定は少し難しさがあります。

 

  • ベルトの種類が多い
  • モーターの種類が多い

 

これらを組み合わせでコンベアを選んだりしますが、実際の所、多くの設計者が何を買ったらよいか解らない状態に陥っているんじゃないかな?と感じています。

 

実は僕、結構そのパターンなんですよね(ダメなヤツ)

 

コンベアの種類は多いし、コンベアの能力計算も大雑把な計算するメーカーもあれば、減速機の効率までを織り込んで精度の高い計算方法を教えてくれるメーカーさんもあります。

 

でも、その計算は設計途中での型式を確定するための確認計算であって、設計当初には不向きなんですよね。コンベア長も幅も搬送動作も設計の途中で変わることがあるのでその細かい部分を確定できないんです。

 

そのため、設計初期段階では、雑だけれど大きく外れない計算が必要になってきます。この記事及び計算シートで出来ることは、コンベアがどのメーカーに変わっても対応できる基本能力の計算となります。

 

コンベアの設計・検討方法

コンベアの設計・選定方法ですが、コンベアの目的は搬送であるので、モータートルク(もしくは容量)と搬送速度さえ間違わなければ基本的な能力を満足しているので、細かい部分は設計を進めながら最適な組み合わせにしていけば良いと思います。

 

まず、コンベアのモータートルクを計算するのに必要な初期情報は以下の通りです。

 

  • 搬送速度と駆動部外径
  • 減速比
  • 各部のおおよその重量
  • 概算のイナーシャ
  • 加速(減速時間)
  • 駆動別の摩擦係数
  • 安全率

 

 

それでは、簡単ですがそれらの解説をしていきます。

 

 

コンベアの搬送速度について

コンベアの搬送速度はおおよそ狙う速度があると思いますのでその値でかまいません。

 

駆動部の外径が必要な理由は「N[rpm]=搬送速度m/s*1000/(外径mm*3.14)*60」の計算式でその搬送速度における駆動部回転数が出ないとモーターの回転速度までたどり着けないためです。

 

 

コンベア駆動の減速比について

コンベアをモーターでまわす際、減速比を与えるのかも考える必要がありますが、減速比をいきなり決めるのは無理です。

 

設計するコンベアの動きに最適なモーター品種が決まっている場合は、そのモーターが持っている基本回転数や最高回転数を超えないように減速比を決めます。

 

【参考】

  • 汎用モータ50Hzの4P:1500r/min
  • 汎用モータ50Hzの6P:1000r/min
  • 汎用モータ60Hzの4P:1800r/min
  • 汎用モータ60Hzの6P:1200r/min
  • ステッピングモータ:想定のメーカー製品にて確認してください
  • サーボモーター:想定のメーカー製品にて確認してください

 

※ここでの計算書では汎用性を持たせるため、回転数から減速比を求めるのではなく、減速比を変更してモーターの回転数をチェックする計算書になっています。

 

 

各部のおおよその重量と概算のイナーシャについて

ここからはコンベア駆動のモーターに必要なトルク及び、トルクから変換して容量を求める条件になります。

 

搬送物の重量及び駆動部関連の重量を求め、イナーシャを算出します。そしてそのコンベア自体のイナーシャを、減速機(減速部)を経てモーターの軸に掛かるへイナーシャへ換算します。

 

 

コンベアの加速・減速時間について

コンベアを搬送速度到達まで加速したり、停止するまでの減速時間もモータートルクの計算に必要な要素です。簡単に言えば、モーターが最もトルクを必要とする場所はこの加速時になります。

 

 

駆動別の摩擦係数について

コンベアにおける駆動部の摩擦係数は一般的に0.1~0.2と言われています。この摩擦力はコンベアの駆動を邪魔します。これを負荷トルクに換算して、モーターの必要トルクに足す必要があります。

 

 

安全率について

上記までの情報でコンベアに必要なモータートルクを計算いたしますが、実際のコンベアは

 

  • テンションの掛かり具合
  • 予期せぬ摩擦が起きる
  • 減速機(減速部)の効率

 

などの要因により負荷トルクが増え、駆動トルクが余分に必要な場合が出てきます。
そのため、ここまでの計算は最低限必要な計算しかしていませんので安全率をかけて余裕をみた設計をするのが良いと思います。

 

コンベアのモータートルク計算方法と順番

いよいよここから、コンベアのモータートルクを計算していくわけですが、ここでは、出来るだけ意味が伝わりやすい言葉で要素を分けて計算します。(計算エクセルシートの内容です)

 

①到達回転速度を求める

N[rpm]=V*1000/(K*3.14)*60

②到達回転速度時のモーター回転速度を求める

Ns[rpm]=N*H

③コンベアが持つ慣性モーメントを求める

E[kg・m^2]=(1/4)*(((M2+M1)/2)+M3+M4)*(K/1000)^2

④モーター軸が受ける換算された慣性モーメントを求める

F[kg・m^2]=(1/H)^2*E

⑤コンベア駆動軸が受ける外部負荷トルクを求める

P[N・m]=(M3*9.8*μ)*(K/2/1000)

⑥モーター軸が受ける換算された外部負荷トルクを求める

P'[N・m]=P/H

⑦角速度を求める

ω角速度[rad/s]=(Ns/9.55)

⑧角加速度を求める

α角速度[rad/s^2]=ω/G

⑨加速時に必要なモータートルクを求める

トルクT1[N・m]=((F+D)/9.55)*(Ns/G)+P'

⑩加速時に必要なモータートルク(安全率加味)を求める

トルクT2[N・m]=T1*U

⑪等速時のモータートルクを求める

トルクT3[N・m]=((F+D)*ω)+P'

⑫等速時のモータートルク(安全率加味)を求める

トルクT4[N・m]=T3*U

⑬指定時間で停止する時の必要トルクを求める

トルクT5[N・m]=(((F+D)*Ns)/(9.55*B))-P'

⑭指定時間で停止する時の必要トルク(安全率加味)を求める

トルクT6[N・m]=T5*U

⑮加速時モータトルクから求めるモータ容量を求める

W[kW]=0.1047*Ns*T1/1000

⑯加速時モータトルクから求めるモータ容量(安全率加味)を求める

W[kW]=0.1047*Ns*T2/1000

 

以上の計算結果から、各メーカーのコンベアを購入するなり、コンベアを設計するなどしてみてください。

 

 

計算エクセルダウンロード

ここでは「コンベア駆動のモータートルクの基本計算の計算エクセル」をダウンロードいただけます。どうぞご利用ください。

 

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以上です。

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