0から1を生む機械・構想設計の方法




 

今日は「0から1を生む機械・構想設計の方法」 についてのメモです。

 

まず先に、この記事における 構想設計の定義をメモしますが 「A(お客様)がB(設計者)にCという部品を生産する機械の新規設計を0からお願いする場合に、メカ設計者がするべき構想設計」 とします。

 

書籍やWebにある 構想設計 よりも具体的な作業内容です。

 

私は 構想設計もするし、構想設計を頼むこともあります。 機械設計というのは 設計に数ヶ月掛かるものもありますので、スタートラインである構想設計がとても重要になる わけですが、 経験を要する構想設計は基本的にマニュアルがありません から、各設計者が実務から学んできたノウハウの成果物だと私は思っています。

 

つまり、その設計者が育った環境によって大きく結果が変わります。 今では人材不足ということもあり、SNSなどで技術者を募集したり、声を掛けたりして設計を依頼することも増えていると推測しています。

 

しかし、そんなに簡単ではないのがこの業界の難しさですよね。 設計者だからといって何でも出来るわけではない です。

 

技術者が不足し、Webを通じて採用した外部設計者が、自分の思っていた成果物があがってこない理由はまさにこれで、どこか損をした発注者も多いハズです。 新規の取引なのに、極めて重要な仕事を頼むわけですから、ハズレた時のショックは大きいのです。

 

私が感じているのは、この 構想を正しく設計できる人って、ごく僅かなんじゃないか? という客観的に見ています。 

 

設計というのは やってなんぼ な訳ですが、実際に構想設計をするタイミングは年に数回、私のように複数人で設計をしていても0→1新規設計は年に10台前後です。 つまり、SNSなどによる人材の流動性があがっても、設計者の実力不足によって流動性が止まる現象も同時に起きています。

 

そこで今日は 構想設計に必要な成果物 を明確にして、設計者の全体レベルの底上げを目的とした 構想設計のやり方・概念 を、自分なりの言葉で表現してみようと思います。

 

また、ここでは主に生産設備における 構想設計の方法をメモします。

構想設計のやり方

では、一つずつ説明していきます。

 

構想設計の成果物はお客様が今欲しいもの、これから欲しい物全部

まず、始めに 構想設計の成果物に必要な一覧は無い ということをお伝えしておきます。 今回のような 構想を依頼してきた お客様が今欲しい物、これから欲しくなる物全部が必要な成果物 になります。

 

当たり前ですね。

 

とは言っても それを細かく聞くのは苦手だし、今聞くタイミングじゃないよなぁ、、、、 と言う方もいるので、もう少し具体的に書くと その成果物で何をするか 何が検討されるか 構想を設計した事で何が起きるか の対処を事前にアウトプットしたものが必要な成果物になるので、想定しながら構想設計に取り組むことが重要になります。

 

誤解を恐れずに言うと、構想設計で大切なのは、エンドユーザが欲しいものを優先するよりも、直接のお客様が欲しいものを準備する事 です。

 

 

例:3軸のアクチュエータを使ったチャック搬送装置を構想する場合

では、早速見出しの装置を構想する場合にどう進めていけば良いか参考までにメモします。 シチュエーションとしては、新規のお客様、もしくは新規のエンドユーザ、またはどちらも初めての機械を構想する場合で書いてみます。 そして構想設計に必要な情報(簡単な仕様書やイメージ図)はある程度受取済みとします。

 

主な項目は以下の通り。

 

  1. 全工程のタクト計算をする
  2. 実現するための仮レイアウトをする
  3. 重要なポイントだけ詳細に描く
  4. それらをモデルに表す
  5. やったことの全てを図面に入れる

 

です。 これを見て 1つでもさぼっている人はアウト です。 と言いますか、特に 1 と 5 をサボる設計者が多い(今となっては図面を書けない設計者もいる)のでしっかりと作業していきましょう。

 

①タクトの計算

全工程のタクトを計算する理由は お客様の要望が実現可能なのかを、初回に答えを出し、その後は最後まで監視するための資料 となります。

 

今回の場合、3軸チャック付き という要望はどこから出てきたものでしょうか。 私たちはその理由を知る必要性は高くありません。 まずは言われた通り、お客様のイメージを数値に置き換え、タクトを計算をしてみるのです。

 

※タクト計算のやり方が解らない人は こちら に記事があります

 

基本的に、時間あたりの目標生産数と、各作業工程の所要時間の2つがわかればタクトの仮計算は可能 です。

 

そして、タクト計算がされた計算シートには 全体の生産タクトから、加速度、移動距離、待ち時間、センサーに関わる時間など、全てがわかるシートだと、設計初期に与えた条件が妥当な数値かも答えあわせができますね。

 

タクト計算は、一般的な速度で無理なく成り立つ工程を作るのが一番安全な機械作りにつながります。 例えば、チャック後の持ち上げはゆっくり持ち上げるなどの計画を数値化しておくと良いでしょう。

動作チャート_201023

 

そして一度、進捗の連絡として これで先に進めていく予定である との報告や、お客様に確認して欲しいのか を明確に連絡し、根本的な成り立ちを確認するべきでしょう。 

 

②実現可能なレイアウトをする

次のステップは、タクト計算を元に お客様が希望しているアクチュエータメーカーで機種を選定し、レイアウトをします。

 

この時に意識するのは 場所をとる物であり、尚且つお客様の求める精度に対応するものです。

 

タクト計算で実現可能な数値が出ていても、レイアウトをしてみるとタクト計算をやり直す必要も出てくる ので、基本的にはここのレイアウトが最後までいくので慎重に答え出しをする必要があります。

 

 

補足 レイアウトしてタクトを計算し直す理由とは?

アクチュエータを選定する上で、負荷の掛かり具合(負荷の掛かる位置など)が変わることでアクチュエータサイズを変える必要が出てきます。 タクトが厳しければモーメントに強いアクチュエータでパワー搬送する必要がありますが、タクトに余裕がある場合や、コストメリットが高い場合は控えめな駆動にすることもできますし、その折り合いをつけるために計算し直す事が必要になります。

 

 

主役となるのは

  • 全体の基準位置(設定原点)
  • 各工程の基準(線、面、ピッチ)
  • 各工程のワーク(向きや高さが明確なもの)
  • 主要アクチュエータ(ガイド機構、ケーブルベアを含む)
  • 架台(部材が明確なもの)
  • ガード(部材が明確で尚且つインターロックが明確なもの)
  • オペレーターと操作パネル(イメージ)

などです。

 

この時点で 一気に確認事項が多くなります ね。 私の場合は新規のお客様では 程度がわからない こともあるので、 急がなくても良いが一時回答が欲しい項目 として確認するようにしています。

 

 

③重要なポイントだけ詳細を検討する

次に重要なポイントだけ詳細に検討をします。

 

タクト計算も満足、レイアウトもそこそこ出来ているから行けると思うのはまだ早い です。 それらを実現させるためのポイントが、部分的に詳細な設計をする という事 です。

 

基本的には対象ワークをどう扱うか を明確にするということが重要で、ワークに接触する部分の材質、チャック前後の隙間、押し付け代など、重要な部分は明確にします。 その次に、位置決めやメンテナンスを意識した設計です。

 

工具が入る入らないよりも、組立が楽か、メンテナンスで交換しやすいか、設計ミスが起きたときにユニット単位で交換しすぐに対応出きる設計かが、この時点では重要 で、さらにこだわる工具が入る入らないは詳細設計で起こしていきます。

 

 

④それらをモデルに表す

ここまでの項目を見て、これを読んだ方が 何を感じたのか気になる所 ですが、この時点で、その機械の大半が見えているんですよね。 ただ、詳細設計となる前には様々なレビューを乗り越えないといけないし、予定外の要素を込みで設計していくので単純作業にも時間が掛かるんですよね。

 

つまり、構想設計というのはこれらの完成を想像させる事が出来ればモデリングは不要 で、重要部分はモデリングするが簡易的な形状にとどめておく。 という完成度になります。

 

 

⑤やったことの全てを図面に入れる

最後が図面を作る作業です。 図面化をする理由は、上記までの想像させる モデルが作られた根拠を見える化し、補足を補い次のステップに行くための資料として図面が必要 だからです。

 

上記までの内容を、モデルを回しながら全て説明できますか? 正しく伝えられますか? 不安材料を先に伝えなくて大丈夫ですか? 断言できますが、モデル単体情報や、アセンブリ情報だけでは見えない関連性は図面で見せるのが一番です。 そのため、不十分でも構いません、不備があっても無いよりはマシですから、是非、俯瞰的にみることができる図面化までやりましょう。

 

少し余談になりますが、世の中から図面が消える動きがありますが、図面と一緒に消えていく大切なもの(図面が無くなる事で効率が落ちる部分)もある ので、私の設計グループでは図面をものすごく大切にしています。

 

 

最後に。 目標は一筆書きの一発合格。

構想設計についてまとめますが、 構想設計というのはやることが非常に多い作業なので 経験は必須 だと思います。 私たち設計者は、このような依頼が来た場合、一筆書きの一発合格を目指していくべき試験だという気持ちで取り組むべき でしょう。

 

最後に、これはあくまでも私個人の考えであり、設計するカテゴリーで多少成果物に差はあるものの、基本となる考えをメモしました。

 

以上です。

 

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