ボールねじの分類や転造と精密ボールねじの違い

2016年10月13日




今日は 「ボールねじの分類や転造と精密ボールねじの違い」 についてのメモです。

 

機械設計において「ボールねじ」という機械要素は頻繁に利用します。 今日はボールねじの分類や転造と精密ボールねじの違いを纏めました。 このメモはTHK様の資料と「JIS規格」の資料をお借りして業務で使い易くするために総合的に纏めなおしたものです。

ボールねじとは

ねじ軸、ナット、ボールなどから構成される機械要素部品のひとつで、ねじ軸及びナットがボールを介して作動する機械部品。直線運動を回転運動に変えたり、回転運動から直線運動に変換したりできる。

 

 

ボールねじを利用するメリット

ボールねじは台形ネジなどと比べて駆動に必要なトルクが1/3程度になるので、効率よく回転運動を直線運動に変えたり直線運動を回転運動に変えることも容易にできる。高速で高効率な動きをさせる場所に向いた機械要素になります。 しかしボールねじは効率が良いために停止状態を維持するには「保持動作」や「逆転防止」などの付帯要素が必要になります。

 

 

ボールねじの分類

ボールねじには大きく分けて4分類に分かれる。

  • 精密ボールねじで無予圧の物
  • 精密ボールねじで予圧している物
  • 転造ボールねじで無予圧の物
  • 転造ボールねじで予圧している物

 

転造ボールネねじと精密ボールねじの製造方法違い

転造ボールねじは、丸棒状の鋼材を回転させながら転造ダイスと呼ばれる工具により、ねじ溝を成形されたねじ軸を利用している。精密ボールねじは研削ボールねじとも呼ばれ、研削の言葉にあるように研削されたねじ軸を利用している。

 

 

転造ボールネねじと精密ボールねじの精度の違い(その1)

精密ボールねじは、転造ボールねじとは異なり、熱処理後の工程での精度出しができるので高精度から低精度までの制作における精度幅が広い。リード精度と呼ばれる「直線性と方向性や移動量誤差」をJIS規格に定められていて、それらで精度を判断し、選定する必要がある。

 

リード精度のJISに基づく説明

  • 実移動量: 任意のねじ軸回転角に対するナットの実際の軸方向移動量
  • 基準移動量:基準リードに従って任意の回転数回転したときの軸方向移動量
  • 代表移動量:実移動量の傾向を代表する直線
  • 代表移動量誤差:ナットの有効移動量又はねじ軸のねじ部有効長さに対応する代表移動量と基準移動量との差
  • 変動:任意のねじ部長さ300mmの変動
  • 変動/2π:ねじ軸の1回転内の変動よろめきとも呼ばれる

ボールねじメーカーによっては、基準移動量をあらかじめ「マイナス気味」であったり「プラス気味」に製作してもらうことができる その場合には基準移動量の「目標値」をご指示する必要がある。

 

転造ボールネねじと精密ボールねじの精度の違い(その2)

転造ボールねじは一対の転造ダイスに鋼材を押し当てねじ溝を成形し、工程的には「転造→熱処理」となり、目標精度は一般的にC7級、C8級、C10級になります。

 

精密ボールねじは研削ボールねじとも呼ばれ、転造ボールねじとは異なり熱処理後の工程での精度出しができるため高精度から低精度まで製作できます。
C0級、C1級、C2級、C3級、C4級、C5級、(C7級~C10級も可能だが一般的ではない)

 

※精度等級C0~C5は直線性と方向性で、C7~C10は300mmに対する移動量誤差で規定されている
(JIS:B1192)

 

転造ボールネねじと精密ボールねじの値段の違い

転造ボールねじ軸は転造後に、高周波焼入れ、または浸炭焼入れし、特殊表面研磨仕上げで製作されています。研削された精密ボールねじに比べ、転造ボールねじは低価格となります。

 

ボールねじにおける「予圧(よあつ)」とは何か

予圧されたボールねじは、バックラッシの低減又は剛性の増大を図るためにオーバサイズボールを組み込んだ予圧ナットを利用します。簡単に言えば、予圧はあらかじめ軸方向すきまをゼロにしているということです。
予圧ナットを利用することで軸方向すきまをゼロにし、さらに軸方向荷重に対しての変位量を小さく出来るので
高精度位置決めを行う場合には、予圧を与えるのが一般的となります。

 

※補足
ボールねじに予圧を与えるとナット部の剛性が増加する。

 

ボールねじで「ボールリテーナ」があるものとない物の違い

リテーナは保持する部品のことを指します。

 

ボールリテーナの最大の効果は大きく分けて3つあります。一つはボールリテーナによりボール同士の衝突音がなくなること、二つ目はボール同士の相互摩擦がなくなることでトルクが安定する(変動が少ない)、三つ目はボール同士の相互摩擦がないことから、内部グリスが保持されるためにメンテナンスフリーが可能となる事です。ボールリテーナは高速性や負荷耐久性を持たせたいときに採用します。

 

※メンテナンスフリー:長期間の給脂が不要

微揺動での利用は接触面に油膜が形成されにくいので耐フレッチング性に優れたグリスが有効
リテーナのないボールねじは一般的に走行距離100kmを目安に給脂する必要がある。
(使用条件や使用環境により給脂間隔を判断する)

 

以上です。

 

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ボールねじ
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