ベアリングの許容回転速度や最高回転数の考え方

2016年11月20日

ベアリングの許容回転速度や最高回転数の考え方」についてのメモです。

ベアリングの許容回転速度とは

ベアリングの許容回転速度の考え方

sutulo / Pixabay

ベアリングの「許容回転速度」とは、限度以上の発熱を生じさせない運転可能な限界回転速度のことです。ベアリング内部で発生する摩擦熱によって温度が上昇すると焼きつき等の損傷が発生するので、ベアリングは安定した運転を続けることができなくなるため制限を設けています。

 

 

ベアリングの許容回転速度はあくまで目安

ベアリングの許容回転速度はカタログの寸法表に「目安値」として載っていますし、ベアリングの「発熱量」についても計算式が載っているので検討はしやすいのですが、ベアリングに掛かるモーメント荷重や取付の誤差、内部すきま過小であったり予圧が過大になってしまうことで、異常発熱を起こします。またメンテナンス不足による潤滑剤の過多・不足も発熱の原因となります。

 

そして、許容回転速度は「適切な内部すきまのベアリングが正しく取り付けられていること」と「潤滑剤を使用し、適切に補給及び交換が行われている」こと、「通常の使用条件で通常の運転温度であること」が前提条件となります。

 

 

発熱量を求める計算式:Q=0.105×(10^-6)×M×n

Q:発生する熱量 kW

M:摩擦モーメント N・mm

n:軸受の回転速度 min−1

 

摩擦モーメントを求める(一般的な)計算式:M =μPd/2

M = 摩擦モーメント Nmm

μ =ベアリングの摩擦係数

P = 動等価荷重 N

d = ベアリング内径 mm

 

動等価荷重とは何か

軸受にラジアル荷重とアキシアル荷重の両方が同時に働く時、実際の荷重ではなく、それらと同じ寿命を与えるような軸受の中心に作用す仮想荷重を動等価荷重といいます。ラジアル軸受では純ラジアル荷重、スラスト軸受では純アキシアル荷重で表し、それらをそれぞれ「動等価ラジアル荷重及び動等価アキシアル荷重」と呼ばれています。

 

 

動等価ラジアル荷重を求める計算式:Pr=XFr+YFa

Pr:動等価ラジアル荷重 N

Fr:ラジアル荷重 N

Fa:アキシアル荷重 N

X :ラジアル荷重係数

Y :アキシアル荷重係数

 

動等価アキシアル荷重を求める計算式:Pa=Fa+1.2Fr

Pa:動等価アキシアル荷重 N

Fa:アキシアル荷重 N

Fr:ラジアル荷重 N

※Fr/Fa≦0.55となることが必要となる。

 

 

ベアリングの摩擦係数について

ベアリングの摩擦係数は、複数のベアリングメーカーより調べた結果を総合し記載しています。ここにあるベアリングの摩擦係数は一般的に用いられる摩擦係数であり、ベアリングの状態により変動しますのでご了承ください。

 

  • 深溝玉軸受:0.0015
  • アンギュラ(単列):0.002
  • アンギュラ(複列):0.0025
  • 自動調心玉:0.001
  • 円筒ころ(保持器付):0.001
  • 円筒ころ(総ころ型):0.002
  • 針状ころ軸受:0.003
  • 円すいころ軸受:0.0025
  • 自動調心ころ軸受:0.0025
  • スラスト玉軸受:0.0015
  • スラストころ軸受:0.003

 

 

高速回転用途に適しているベアリングは?

一般的に高速用途に適しているとされるベアリングの種類は、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受とされています。その一般的に許容回転数の高いベアリング中でも、寸法や精度、保持器の種類、荷重、潤滑条件、冷却条件によって異なります。「高速回転」というのはどこから高速なのかはそれぞれ認識が違うと思いますので、利用する装置や製品において各ベアリングの許容回転速度を把握した上でマージンを持って設計するようにします。使用しているベアリングの許容回転速度を実用回転速度が超えてしまう。もしくは超えてしまいそうな場合は、強制循環給油、ジェット給油、噴霧給油法を採用するなどの配慮が必要です。

 

 

ベアリングの回転速度をあげたい場合(その1)

時に駆動源の回転速度を上げることが可能でも、回転保持のベアリングが振動を起こしそれ以上回転速度を上げるのは危険なときがあります。そのときはベアリングを予圧することで解決する場合があります。予圧によって転動体と軌道面との接触点で常に弾性圧縮力を受けているので軸等の固有振動数が高くなり高速回転に対応させることができます。

 

この回転数はベアリングの許容回転速度とは考え方が違うのでご注意ください。ベアリングの許容回転速度は負荷(予圧など)が大きいと落ちてしまうが、ベアリングが組み込まれるユニット自体の許容回転数をあげたい場合はベアリングに「予圧」を与える場合がある。ということです。

 

 

ベアリングの回転速度をあげたい場合(その2)

使用しているベアリングの実回転速度をもう少しあげたい場合は、摩擦を低減できる潤滑方法を採用することで摩擦抵抗を減らし高回転向きの仕様となります。

 

 

ベアリングの回転速度をあげたい場合(その3)

使用しているベアリングの許容回転速度をもう少しあげたい場合は、ハウジングなどの熱を逃がす何らかの冷却装置を利用することで許容回転速度をあげることが可能となります。