コンベアのストッパーに掛かる衝撃値・衝撃力・負荷の計算

2020年11月25日

 

今日は「コンベアのストッパーに掛かる衝撃値・衝撃力・負荷の計算」についてのメモです。

 

コンベアでの水平搬送や、垂直落下してくるワークをストッパで止める場合は、掛かる負荷を把握しその値に安全率を加味して構造を設計します。 このストッパーに掛かる負荷をどのように計算したら良いか、今日は負荷計算の方法以下6つをメモしておきます。

 

コンベアのストッパーに掛かる衝撃値・衝撃力・負荷の計算

 

  • 水平搬送でワークがストッパーにぶつかる際の計算上衝撃値[G]
  • 水平搬送でワークがストッパーにぶつかる際の計算上衝撃力[N]
  • 水平搬送、常時駆動などでワークをストッパーに当て続ける場合の負荷[N]
  • 垂直落下でワークがストッパーにぶつかる際の計算上衝撃値[G]
  • 垂直落下でワークがストッパーにぶつかる際の計算上衝撃力[N]
  • ワーク荷重が垂直にストッパへ掛かっている場合の負荷[N]

 

これら計算を利用して最適なストッパー構造設計の参考にしてください。

 

コンベアのストッパーに掛かる負荷の計算

では早速、ストッパーに掛かる負荷の計算方法をメモしていきますが、先ほどの通りストッパーに掛かる負荷は大きく分けて6つありますので、まずは水平搬送の場合から順番にメモをしていきます。

 

水平搬送でワークがストッパーにぶつかる場合の計算

①ストッパーに当たる衝撃値[G]を求める

 

G1 衝撃値[G] = (V1-V2)/∆t/g

  • 搬送速度:V1 [m/s]
  • 停止後の速度:V2 [m/s]
  • 停止時間:∆t [s]
  • 重力加速度:g(9.8[m/s^2])

 

 

②ストッパーに当たる衝撃力[N]を求める

 

F1 衝撃力[N] =(m*n)*G1*9.8

  • 搬送質量:m[kg]
  • ワーク個数:n[個]
  • 衝撃値:G1[G]

 

 

③ストッパーに作用する横荷重を求める

この計算は、ストッパーに止められているワークがコンベアに押されている場合でストッパーに掛かっている負荷の計算です。 機械設計ではワークの切り出し状態ではコンベア回しっぱなしで一つずつ切り出していく事が多いので、これらも負荷も考慮する必要があります。

 

Fa 荷重[N] =μ*(m*n)*g

 

  • 搬送質量:m[kg]
  • ワーク個数:n[個]
  • 重力加速度:g(9.8[m/s^2])
  • ワークとコンベアとの摩擦係数:μ

 

摩擦係数について

摩擦係数に関しては、使用するコンベアのベルトやローラーによって違ってくるので、使用するメーカーの製品情報にてご確認ください。

 

 

 

ワークが垂直に落下・移動している場合

続いて、垂直落下のワークに対するストッパーの計算は以下の通りです。

 

①落下した時の落下速度を求める

 

V3 [m/s] =SQRT(2*g*h1) 

  • ワークの落下距離:h1[m]
  • 重力加速度:g(9.8[m/s^2])

 

 

②ストッパーに当たる衝撃値を求める

 

G2 落下衝撃値[G] = (V3-V2)/∆t/g

 

  • 自由落下の速度:V3 [m/s]
  • 停止後の速度:V2 [m/s]
  • 停止時間:∆t [s]
  • 重力加速度:g(9.8[m/s^2])

 

 

③ストッパーに当たる衝撃力を求める

 

F2 [N]  =(m*n)*G2*9.8

  • 搬送質量:m[kg]
  • ワーク個数:n[個]
  • 落下衝撃値:G2[G]

 

 

④ストッパーに作用する荷重を求める

垂直落下状態にあるワークを支えるには以下の計算式を利用します。

 

Fb [N] =m*n*g

 

  • 搬送質量:m[kg]
  • ワーク個数:n[個]
  • 重力加速度:g(9.8[m/s^2])

 

 

ストッパーについての補足

計算方法は以上です。 次に少しストッパーに関する補足をメモしておきます。

 

安全率について

私は ストッパーの利用は既にメーカーの方で評価されている購入品を基本的に利用します が、スペースの問題等で使えない場合は独自にストッパーを設計します。

 

その際は構造上の安全率をこちら(設計側)で決める必要があるのですが、その安全率は下記表を参考にして決めています。

コンベアのストッパーに掛かる衝撃値・衝撃力・負荷の計算1

コンベアのストッパーに掛かる衝撃値・衝撃力・負荷の計算2

 

参考記事:機械設計で利用する安全率の目安 より抜粋

 

あくまで参考です。 仮に、ストッパーとして使える購入品が使える場合、スペースがゆるされるならワンサイズ大きいもので行く会社さんも多い と思います。 

 

 

衝撃緩和と設計ついて

次に、衝撃緩和について補足します。 ワークが衝突する衝撃を緩和する方法として大きく分けて2つ候補があるかと思います。

 

  • 手前で減速させる
  • アブソーバ(ダンパー)を利用する

 

これらは環境に合わせて選択する部分ですが、ワークが軽い場合は、直接ストッパーに当てても大丈夫ですが、ワークが重い場合はその衝撃で壊れないように、手前で減速させたり、それでもストッパーへの衝撃か高い場合はアブソーバを使ったりして衝撃の緩和をしていきます。

 

ただ、アブソーバはへたってしまうため頻繁に当たる場所には不向き らしいです。 実際、SMCさんのカタログにおいて以下のような注意書きがカタログ内にあります。

 

部分引用(https://www.smcworld.com/assets/manual/ja-jp/files/RB-J.pdf

 

当社製品についての保証期間は、使用開始から  1 年以内、もしくは納入後 1.5 年以内、いずれか早期に到達する期間 です。また製品には、耐久回数、走行距離、交換部品などを定めているものがありますので、当社最寄りの営業拠点にご確認ください。

① 最高使用頻度
表示されている最高使用頻度を越える頻度で使用しない条件で設計してください。

⑤ サイズ選定
ショックアブソーバは、使用回数が進むにつれて、内部作動油の劣化および内部部品の磨耗などの理由によって最大吸収エネルギー量が低下 します。これを考慮して、吸収エネルギー量に対して20%~40%の余裕のあるサイズ選定を推奨 いたします。 注意) カタログ仕様範囲内における使用可能な作動回数(寿命回数)は以下を目安としてください。

  • 120 万回 RB0604,RB08□□
  • 200 万回 RB10□□~RB2725

寿命回数(適切な交換時期)は常温(20~25℃)時の値です。 温度条件などにより異なる場合がありますので、上記作動回数以内でも交換が必要になる場合があります。

 

 

つまり、コンベアなどの頻度が高い所でショックアブソーバを利用する場合は 頻度・総回数・雰囲気に注意が必要 です。(コンベアではなく例えばサーボ駆動のオーバーランメカストッパーなどの万が一用には使ってよいです)

 

また、こういったストッパーは 交換が容易な構造設計しておくのが良い かと思います。

 

 

計算書のダウンロード

ここでは、上記計算の計算エクセルをダウンロード頂けます。 自由にカスタマイズしてご利用下さい。

コンベアのストッパーに掛かる衝撃値・衝撃力・負荷の計算0

 

以上です。