図面検図のやり方・考え方・具体的なチェック項目

2024年1月5日




今日は 「図面検図のやり方・考え方・具体的なチェック項目」 についてのメモです。

 

組立図や部品図を書いた後に行う作業が検図です。 この検図作業の具体的なチェック項目は 各社様々、製図者ごと といった形で 特に決まったルールはない と思います。

 

その為、チェックシートで運用している会社さんもいれば、製図者まかせの検図で回している会社さんもいます。 検図も設計技術の一つで、 過去何百枚と図面を見てきた・書いてきた私が思うに、検図における 見逃してはいけない重要なポイントは大きく分けて以下の3項目 だと考えています。

 

  1. 検図は製図を振り返る作業
  2. 検図は適用規格に適合しているか確認する作業
  3. 検図はそれらが特定の状況に沿っているか確認する作業

 

です。 どれも基本中の基本だと思うんですが、検図は先ほども言ったとおり決まったルールがありません。

 

そして、この検図は 設計経験の浅い設計者、製図者に早い段階でマスターしてもらいたい実務の一つ となりますので、この記事ではそういった方たちが 自己検図が適切に行えるようになることを目的に検図で行う作業を順序でメモ してみようと思います。

検図のやり方

①製図を振り返る作業

まず先に取り掛かるのは図面内のあらゆる部分のチェックです。

 

※ここでは、表題のチェック、寸法の入れ忘れ、材料、材質、各種処理 等、基本チェックは省いて重要なポイントだけピックアップします。

 

 

①-1 レイアウトのチェック(必須)

まずは全体を広く見渡して 表示レイアウトが適切に選択されているかをチェックします。

 

  • 図枠の選択は適切か
  • 尺度の選択は適切か
  • 部品の向きは適切か(図枠をうまく利用しているか)

 

図枠と尺度の選択方法のポイントは

【引用】JISで推奨されている図面尺度と実用的な図面尺度

私の考えとして 文字は形状認識を邪魔するものだから文字の大きさとモデルのバランスでおおよそ図枠を決めても良い と思っていて、組立図は現尺(1:1)で表現するというのはものによっては難しいのですが、部品図に使用する尺度の目安第一候補は1:1で書ける図枠サイズ とし、A1~A4は問わない ですが 図枠内の部品占有率が70~80%程度が埋まるサイズの選択がベスト だ思います。

これです。

 

 

①-2 重要寸法・公差のチェック(必須)

次に、組立図やアセンブリと部品図を見比べて 重要な寸法、寸法公差、幾何公差が入っているかを先にチェック します。

 

 

①-3 購入品の取りつけチェック(必須)

次に、購入品のカタログに沿った入れ方をしているか確認します。 部品だけをみて寸法をいれると そこに取り付く購入品とのチェックになりません。

 

よく見かける製図ミスとして 購入品の位置決め方向と違った方向に公差をが入っていたりすることが挙げられ、 ここは断りがない限り購入品カタログと照らし合わせてチェックすることが必須です (部品図を作図する時その対象購入品のカタログ抜粋があると便利で、製図者と検図者のダブルチェックになる)

 

 

①-4 接触部品との兼ね合いをチェック(必須)

購入品が取り付くかを確認するように、隣り合う部品同士の寸法や公差を見比べながら確認 します。 機械部品ははめあいする部品があるので、お互いに公差がないと組めない自体を引き起こします。 つまり 検図は1枚単位でおわらせていくものではない ということです。

 

 

①-5 各寸法は測定できるかチェック(必須)

上記の項目で、各部品同士が正しく取り付くことがわかりますが、その寸法を測定できないことには保証ができません。

 

引用先:https://www.mitutoyo.co.jp/story/

 

ミツトヨさんの名言 「つくれるかどうかは、はかれるかどうかです。」 よいう言葉にもあるように、 ありがちな寸法記載ミスとして、組立時の基準寸法を部品図に転用して 測定不能(もしくは代替えしないと測れない)部品図をつくってしまう場合があります。

 

検図における寸法のチェックは 「寸法のあるなし」ではなく、必要な場所から出ているか、そしてそれが測定可能か確認する必要があります。 また、組立モデルと部品図を見比べることにより取付方法、方向によって公差が適切に入っているかの確認ができます。

 

この 検査が出来ることについては 別記事の 測定を意識した部品図書き方 でまとめていますのでご確認ください。

 

 

①-6 その他の寸法が入っているかチェック(必須)

ここでようやく その他の寸法が入っているか確認 します。

 

 

①-7 断面図は目的が明確になっているかチェック(必須)

次に、目的のない詳細図は不要という考えのもと 出されている断面は何を見せたいのか そもそも断面を起こす必要があったのか の見直しを掛けます。

 

 

①-8 貫通させるのかさせないのか任意なのか最後確認(重要)

出図後の問い合わせで多いのが「止まり穴は下穴貫通させて良いか」などの加工に関わる融通が利くか などです。

 

機械部品の設計は 必要な板厚があって必要な穴、必要な深さがあれば十分であり、その加工方法はお任せすることがほとんどなので 加工を考慮した形状にしていない場合もあります。 加工者としては 裏からの加工が手間であったり、ツール交換が少なくなるような形状は避けたく、工程が増えれば増えるほどリスクも増えるので この検図段階で融通が利く形状であるかを確認してください。

 

例)中途半端な深さの物は 下穴貫通可 や タップ貫通可 という表記を利用する

 

 

①-9 設計者の意図と指定範囲などは大丈夫かチャック(必須)

これは主に 熱処理や表面処理、そしてその部分の精度 を意味します。 例えば 熱処理は部分的な処理が可能であり、 表面処理においても種類によってマスキングすることで部分的に処理を施さないことも可能です。

 

そして その部品の全てにその処理が必要かと言われればそうでもない部品も存在するはず です。 そう考えると 処理後の面粗さも範囲の指定対象に挙がってきます。

 

例えば段付きロッドのように回転軸として使う場合軸受けが当たる部分とそうでない部分は厳密にいうと面粗さが違ってて良いです。 逆に言えば製造側視点から見て そこ必要? 必要だとすると手間も増えるしコストも上がるんだけど・・・・ という考えをもって検図をすることが重要です。

 

設計者の意図を理解し、必要に応じて設計者に確認することも検図では大切で、その際にも 組立図やアセンブリと見比べながら 見ていなかった や そういう事もあるのを知らなかった とうのは 検図で避けるべき であると私は考えています。

 

 

①-10 勘違いしそうな場所にコメントを入れているかチェック(必須) 

製図や検図で重要なことは客観的に見る ということです。

 

製図者・検図者が解っていることは、他人から見て解ってくれるとは限りません。 手を抜いているつもりは無いけれど、説明不足になりがちになってしまうので、客観的にみて違和感のある場所、明確ではない場所にはコメントを入れるなどしてより簡単に理解できる表現になっているかチェックをします。

 

例)上流下流を付ける や 複数種類の穴が離れた場所に多数存在する場合(a穴)(b穴)などマーキングをする など。

 

出図後の問い合わせのほとんどはこういったコメントで回避できます。

 

 

②適用規格に適合しているか確認する

これは各業界の規格、エンドユーザ独自の規格に沿っているかを確認します。 主な項目としては 購入仕様書などの見直し です。

 

この項目で気にするのは 各部品の材質・表面処理・熱処理・塗装などの ルールと環境対応の仕様に適合しているか です。

 

例えば3DCADの場合、設計中にその仕様をプロパティに表示してそれが部品図に自動引用される形であれば、多少楽にはなりますが、丁寧にやってくれる保証はないので 検図時に最終チェック をします。

 

例)材質情報が部品図にあるが これで良いとは聞いていないから設計者本人に再度確認しよう → 〇

例)この材質にこの処理は上手く乗るのか? 設計者に再度確認しよう → 〇

 

 

③検図はそれらが特定の状況に沿っているか確認する(任意だけれど重要)

最後にその検図対象がどんな出図であるかを最後に見直しをします。

 

この図面は 正式出図 なのか 承認用確認図 なのかその図面に何の目的があるのか必要に応じて明記 します。 ただ出図するならそれらの明記は不要ですが、必要に応じて状態説明が抜けているようならいれましょう。

 

 

補足:検図をより効果的に行うために

検図を行うにあたり、当たり前だけれど効果的なやり方として ①過去の図面を見ながら行うこと と ②図面を俯瞰して見る があります。 過去の類似図面を見ることにより、図面内の表現などの矛盾点や最適表現を採用しやすくなり、印刷された図面を俯瞰して見ること や PDFチェックでも 全体をぼんやり見ること でミスに気付き易くなります

 

この部分は 出力チェックする人と出力チェックしない人の意見記事がありますので参考にしてみてください。
→ 
図面の検図では紙出力派が約8割・ペーパーレスはわずか2割

 

 

最後に

最後に 検図の順番をまとめます。

①製図を振り返る作業

①-1 レイアウトのチェック
①-2 重要寸法・公差のチェック
①-3 購入品の取りつけチェック
①-4 接触部品との兼ね合いをチェック
①-5 各寸法は測定できるかチェック
①-6 その他の寸法が入っているかチェック
①-7 断面図は目的が明確になっているかチェック
①-8 貫通させるのかさせないのか任意なのか最後確認
①-9 設計者の意図と指定範囲などは大丈夫かチャック
①-10 勘違いしそうな場所にコメントが入っているかチェック

 

②適用規格に適合しているか確認する
③検図はそれらが特定の状況に沿っているか確認する

 

そして検図の際は ①過去の図面を見ながら行う ②※図面を俯瞰して見る です。

 

私たちはこれからも図面を書く必要があるわけですが、検図も含めて設計という認識を持つ事が大切です。 そしてこの検図でチェックする項目は部品図作図の時に注意することのチェックになるので、検図が上手なら部品図も上手になるし、部品図が上手なら検図も上手になるとても関連性の高い作業です。

 

以上です。

 

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