今日は「部品検査ができる女性に検図をしてもらった結果」というエピソードを書いてみようと思います。
検図
検図の位置付け
私たち設計士のお仕事の中で、私が最も難しいと思っているのが検図の行程です。ある会社さんでは、検図を最も重要視し、時間をつかっています。しかし、メカエンジニアが不足する中で、多くの会社さんが疎かにしてしまっているのが検図の工程ではないかと思います。エンジニアが不足すると、検図が疎かになる。解らないでもないですが、それは間違っていると僕は思います。厳しい言い方になるかもしれませんが、
「うちの設計はミスばっかりしやがって」
「取りつかねぇじゃねぇか」
みたいな愚痴を聞くこともありますが、それは会社の意識の問題であって、設計者に全てを委ねているからそうなると思うんですよね。完璧な人間なんていませんから、どれだけ体系的にそれが起きないようにするのかが大切です。
ここで、以前書いた記事「検図をどう設計士育成に利用するか」を復習してみます。
上記の記事は、検図を育成に使うための意識を書いたものですが、検図により「気づく」「指摘する」という能力を身に付け、その気付きを自分の製図に活かしてほしい想いから書きました。今日、これから書く内容は、製図する上で意識したいポイントについてです。
部品検査できる人が検図をするとどうなるか
これ、とってもユニークなネタだと思うんですが、ご縁あって精密な切削部品を検査する技術・知識を持った方に図面を検図してもらったんですよね。一般的な測定器はもちろん、三次元測定器、画像測定器をバリバリ使いこなす女性です。半導体関連の部品、医療部品、航空宇宙部品、様々です。そんな彼女から私たちにくれた指摘は大変重要なものでした。
公差部分の有効深さ
設計図面では、頻繁に公差穴や面を利用します。私たちの図面をみて彼女はこんな問い合わせをしてきました。
「このH7、どこまであればいいですか?」
ですって。
それを聞いて気づいたのが、必要な所だけあればいいよね!それの記載があれば測定する人も悩まないよね! って事でした。これ、すごく重要だと思います。加工する人も、有効深さが明確だったら過剰に繊細な加工をしなくても済むのかも。と思ったんです。きっと、部品形状によっては、可能な有効深さもあると思うんですよね。
私たちが設計した機械の部品は、実はもっと効率化を図れるんです。加工者の悩みを減らしたり、問い合わせする時間を減らしたりって。ですので、「必要な精度は必要な分だけ」という意識で取り組みたいなと思いました。
測定する方法から見る
そして、こんな問い合わせもしてくれました。
「これって、どうやったら測れますか?どうやって測ったら良いですか?」
ですって。
これにも「( ゚д゚)ハッ!」とっしました。私たち設計者が求める、部品の姿勢をどう測定すれば良いか聞いてきたんです。情けないことに、そこまで考えていなかった部品なのでひどく反省しました。ある会社さんでは、加工の工程で精度を保証すると言われた事がありますが、よくよく考えてみたら「測定出来なきゃ意味ないな」と思いました。
そこで、一緒に考えてみたんですが、測定用にちょっとした治具が必要であるとわかったんです。
「これってコストアップじゃん」って思いました。
要するに、部品単体以外に部品が必要になるから、結果的に高いものになっちゃうんですよね。私たちがあまり重要視していない部品だったとしても、作る側、測定する側になって考えると、簡単な部品一つでも気を抜いちゃいけないな。と、おもいました。
設計士が気を付けたいポイントまとめ
最後に、今回学んだ事を簡単にまとめてみようと思います。これで、部品図面で注意する場所がまた一つ明確になりました。図面を製図する時に意識してみてください。
- 精度部分は範囲を指定した方が良い
- 自分で検査するならどんな方法か
結果、
- 作る人の気持ちに寄り添った図面になる
- それを検査する人が検査しやすい図面になる
と、いうことだと思います。
以上です。