今日は「初めて特許図面を書くに当たって調べた事・わかった事」についてのメモです。 先日、特許図面の作成依頼を請けました。 無事に初回の納品は終わったのですが、特許図面作成という少し特殊な作業は私にとって良い刺激となりました。
そもそも特許の深い部分をよく解っていない私でしたが、お客様からは3Dモデルデータがあると聞いていたので受注に至りました。 元々、特許図面というのは3Dモデルを利用しているようで3Dで表現しづらい2D要素もありつつ手書き感もある特殊なイメージ をもっていたんです。
私が普段している機械設計の仕事では多くのモデルを作り・モデル編集・図面化しているので、不安はありましたがまずはチャレンジしてみようと思ったんですよね。(プレッシャーは凄かったですが・・・・汗)
そこで、今日は私が特許図面作成にあたり学んだ事・調べた事・解った事の中で 図面作成に関する入り口部分のメモ を残そうと思います。
参考になるか解りませんが、初めて特許図面というキーワードに触れた方が気になるポイントをメインにメモしていますので是非参考にしてみてください
特許図面について
まず先に 特許に必要となる図面について概要をメモします。
特許図面を簡潔に言うと 発明の理解が容易に出来る図面 ですが、私が今回作成したのが 明細用 と 意匠用 です。 この2つの概要は以下の通り
- 明細書用
発明の内容を明瞭に第三者に公開、特許権として主張すべき技術的範囲を明らかにする権利書
⇒ 明細書に書かれる内容と一致する詳細な図面(断面・部分詳細など書きました) - 意匠用
形状や画像の保護 ⇒ 形状がわかる図(概観の6面分書きました)
このようになります。
特許図面には描画ルールがある
さて、特許に関わる図面を描くにあたってのメモをしますが、描画ルールがあるのでどんなルールか先に確認してみます。
特許図面の描画に対しては以下の通り
- 原則として製図法に従って書く(JIS B 0001:2019)
- 黒色で着色不可
- 切断面には平行斜線を引き、異切断面を表す切断面は方向を変える(それができないときは、平行線の間隔を変える)
- 図中のある箇所の切断面を他の図に描くときは、一点鎖線で切断面の個所を示し、その一点鎖線の両端に符号を付け、かつ、矢印で切断面を描くべき方向を示す。
- 凹凸の部分を表すには、断面図又は斜視図を用い、特に陰影を付ける必要があるときは、約0.2mmの実線で描く。
- 中心線は特に必要ない場合は引かない。
- 実線0.4mm、引出線及び点線・鎖線は0.2mm。
- アラビア数字を用いて(大きさは約5mm平方)他の線と明確に区別することができる引込線を引いて付ける。
- 同一の部分が2以上の図中にあるときは、同一の符号を用いる。
これら内容は、機械図面を書いたことがない人にしてみれば「なんのこっちゃ」という内容ですが、私たち設計者にとってはいたって普通の描画ルールとなり違和感は特にありません。
ですから、特許図面はJISに則った機械製図方法で大丈夫 ですね。 製図方法に詳しくなくて製図方法を本で見たい方は私も持っているこの本がオススメです。(JISにもとづく 標準製図法)
また、作図したもののサイズにも「図は横170mm、縦255mm以内に収まるように作図する」規定があり、A4サイズの用紙に丁度収まる大きさ です。 製図法に則るといっても、機械図面も同じで最低限のルールを守りつつ、描画する内容によって複雑さが増す場合などは少しの編集も許容されそうですね。そもそも解りづらい図面は図面ではないですので。
自分で特許図面を書こうとしたらどうしたら良いのか
では次に「自分で書いてよいのか、自分で特許図面を書こうとしたらどうしたらよいか、自分で描いたらどんな問題が起きるのか」に触れてみます。
自分で描いて良いのか
結論自分で描いて良いです。
自分で描こうとしたらどうしたらよいか
自分で描こうとした場合、描画ソフトが必要になってきますが、この描画に対する準備が大きな壁 となりそうです。 私は日常で使っているソリッドワークスという3DCADを利用しましたが、特許図面専門の業者さんでは各種2DCAD、3DCAD、Adobeイラストレーターなどを駆使して描画 しているようです。
自分で描いたらどんな問題が起きるのか
「ソフトを駆使する」という意味ですが、初めて特許図面を描く人がソフトの壁に当たると、次に図面内で表現するための描画スキルで壁に当たります。
描画スキルの壁とは「断面図」だったり、明細に合わせた「部分詳細」の表現力です。
例えば私が行った作業ですが、3DCADモデルを受け取りそれを図面化しました。 図面化にあたり複雑すぎる部分はモデルを直接修正して簡素化(見やすくした)し、更には正接線を手動で消す作業も行いました。
つまり、図面化する元データがあっても一筋縄ではいかず、描画ソフトの扱いが出来ないと表現したい事が表現できなくて詰んでしまう可能性が高い です。 更に、特許の内容によってばらつきはあるかと思いますが、細かい表現と外観など最低でもA4で5~8枚、意匠図面は6面分は必要になると思います。
自分で特許図面を書けない場合はどうしたら良いのか
自分で特許図面を書けない場合は、特許図面を書ける所に依頼することで解決すると思います。
調べてみると、特許図面に特化した会社さんがあるので、2DCADデータもしくは3DCADデータがあれば問題なく特許図面化してくれると思います。 コストは掛かりますが、データが無くても大丈夫なはず です。
こういった会社さんが特化しているであろう部分は修正・対応力だと思います。 特許図面に限らず図面とは相手に伝える手段なので、伝わり難い図面では意味が無く、お客様が持つ様々なCAD形式に対応し、特許図面として適切な表現方法、そして特許図面として見やすく作ってくれると思います。
機械図面もそうですが、特許図面もノウハウの蓄積によって出来栄えや完成までのスピードが早くなる と思います。
特許図面作成のコストですが、機械設計の世界もそうですが、図面作成をやったことがない人からすると思ったよりも高くなるかもしれません。
図面とは出来上がるとシンプルですがそこまでに持っていくには先ほど書いた細かい作業があります。 また、描いたら終わりでは無く検図という作業もありますので。
この記事はどこかのスポンサードを受けている記事では無いので特定の企業様の名前は出すことは出来ませんが、調べてみるとどこの事務所さんもノウハウ、テクニックをお持ちのようなので、依頼主さんの希望にあった図面は描いてもらえると思います。
最後に
今回特許図面の依頼を頂いた事で新しい学びが出来た事を感謝しています。 CADデータを有効に使え、モデル編集・図面を書けるという意味では、フリーランスの私たちの出来る新しい分野、スキルを生かしたお仕事の一つなのかも知れない と感じました。
今後もこういったお仕事にもチャレンジしていければと考えています。
以上です。
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