今日は「試作図面と量産図面の違い」についてのメモです。
皆さんもご経験があるように、新規部品図を出図した後には、加工側から何件か問い合わせがあるかと思います。 私もこれまで何枚もの図面を出図してきましたが、出図後に問い合わせを受けることが未だにあります。
最近、私への問い合わせ内容は、ある傾向があることに気づきました ので、今日はそれら問い合わせ内容から解った試作・単発部品図と量産部品図の在り方について私が今後意識していきたい事をメモしておきます。
試作図面・量産図面
まず始めに
製造するモノによって図面の内容が違うため、この記事では部品の特性を切削品(製缶加工品含め)の試作と量産品に分け、その二つに対してどう狙った図面を書いていくかを話していきたいと思っています。
試作図面
まず先に、試作やリピートを予定しない単発部品の図面について僕の解る範囲でまとめてみます。
試作図面の特徴
試作・単発部品の特徴を箇条書きにすると大体イメージはこんな感じです。
- その部品をどこが作ってくれるか設計側が知らない
- 初めての形状なので、図面の精度が出るかお互いに解らない
- 寸法公差などの優先順位を加工側が知らない
- 出来るだけ手持ちのツールで加工側は加工したい
- お互いにあまりお金を掛けたくない
試作図面で受ける問い合わせ
以上の特徴から、よく問い合わせがある二点を深堀します。
①初めての形状なので、図面の精度が出るかお互いに解らない
この部分が「加工を知らない設計士の書く図面はダメ」と言われる部分です。 出図された図面は、設計士の中で材料の手配から加工(工程)の順番、使用ツール、全て完結・精度が出せる形状にしておく必要があります。 それが出図されていないといけませんが、ここのミスマッチが起きると問い合わせが来ます。
加工側「ここの精度が出るかわからない」
設計士「どんな加工方法ですか?」
加工側「これこれこうで・・・・」
設計士「そうですか・・・僕はこんな風に考えてたんですが」
加工側「それだと、あれがあーでこーで・・厳しいんだよね」
設計士「そうですか・・・大変なんですね・・どうしようかな・・・」
みたいな感じになります。
②寸法公差などの優先順位を加工側が知らない
②の話しは①の続きです。精度が出せるか解らないけど、その中でも優先順位をつけて出来るだけ完成品に近づける作業です。
加工側「どこが一番重要?」
設計士「あそこが一番で、ここが二番です」
加工側「わかった、二番目は狙い値でお願い」
設計士「わかりました、いつもすみません」
こんな感じですね。こんな打ち合わせをすることで一旦解決する場合があります。
試作図面の在り方
ということは、試作・単発図面の部品設計で決めた公差が100%満足出来ない可能性が非常に高い です。それは加工側の色々をこちらが考慮できていない場合が多いからです。
しかし、その考慮出来ていない部分は、打ち合わせをすることで解決するのであらかじめ打ち合わせする事を意識した図面にしておくのがベスト かと。 つまり
- 寸法: 特に今まで通り
- 角・隅・ヌスミ部のあまり重要ではない所: ◯◯以上や、◯◯以下、もしくは任意を利用する
- 公差: 多少ずれても良い部分は「狙い値」と追加記載する
- 注記: 部品の特徴、能力(品質)を記載する
- 斜視図: 公差箇所の多い部品は取りついたアセンブリを斜視図に入れておく
という事だと思います。
量産図面
量産図面の在り方は、試作が終わった時のフィードバックが反映されている必要があります。
量産品の特徴
- 作り方はお互いに知っている(ハズ)
- 試作結果を考慮して図面・形状が修正済みである(ハズ)
- 図面に対する不明点がない(ハズ)
- 量産に向けた必要ツール・ジグが準備してある
量産品の図面の在り方
これらの内容を考慮すると、 量産図面は試作図面で許容していた部分にフィードバックを織り込み、今度は安定させるために細かい部分までの指定をしていくことになります。 (ここで初めて皆さんが書いている通常の図面になるということですね)
試作のフィードバックがしっかりされている図面は、お互いにとって良い図面になると思います。
もう一歩踏み込んだ図面とするならば、今後のマシン変更などによる若干のズレを許容できる図面内容だと素晴らしいですね。それも量産する場所と事前に打ち合わせできれば最高ですね。ミスっても良い部分の明記です。
私は過去に加工メーカーに勤めていましたが、その時に 大丈夫だと思うけど図面には大丈夫って書いてないから問い合わせてみる という事がよくあったように思います。 結局は図面からちょっと外れてたらだめだったりするんですよね。傷も目安みたいなものありましたけど、場所によっては良いワケですしね。
ここが色々を苦しめてるんだよな・・・・といつも思っていました。
最後に
今日は図面の在り方を試作・単発図面と量産図面の2つの見方からメモを残しました。
正直、私たち設計士(製図者)が色々な問題の発端でもあるので、少しでもよい図面を作っていく努力と、より一層コミュニケーションを取りながら図面を書いていきたい所です。
以上です。
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