鋼材のたわみ計算方法とエクセル(フリーソフト)

2017年11月15日




今日は 「鋼材のたわみ計算方法とエクセル(フリーソフト)」 についてのメモです。この記事では鋼材の支持方法に対して荷重を加えるとどれだけたわむのかを計算するシートをシェアしています。

 

また、機械設計における鋼材のたわみ計算をどのタイミングで行なうのか、どういう判断をするべきなのかを僕なりに纏めてみようと思いますので、構想設計をする初心者の方は一読してみてください。お役に立てるかと思います。

鋼材のたわみ計算

鋼材のたわみ計算を行なうタイミングについて

機械設計のカテゴリにもよりますが生産設備などでは比較的大きな設備になりますので、それらを支える門型をしたフレームや、装置の基礎となるベースフレームなどはたわみ計算をします。

 

たわみ計算をする理由は単純で、グラグラするような機械は疲労がたまりやすく折れてしまったり、溶接部への負荷が大きくなり破断してしまうことも起こってしまいます。よくあるのが、鋼材のたわみ計算をしていないために出来上がった機械のフレームが色々載せていったら弱すぎて大きくたわんでいるという結末・・・。こんなことにならないように、安全を見た鋼材を機械に使用します。

 

実際の機械設計では、このたわみ計算はいたるところに必要で、その多くはとても複雑な計算を用いる必要があります。今では3DCADのモデルを利用し従来の手計算よりより正確なたわみ計算が可能になっていますね。しかし、3D設計におけるたわみ計算の問題がいくつかありますが、第一にモデルがないとたわみ計算できないということです。

 

当たり前と言えば当たり前ですが、これが大きな時間のロスを生んでしまいます。モデルが出来上がって来る頃は比較的終盤ですよね。ですからここで強度が足りなかったりするととても大きなロスになります。ですから、機械を設計するときの鋼材たわみ計算は出来るだけ初期に「検討」する必要があります。流れを言えば

  • 強度メンバーを初期の段階でたわみ計算をし使用鋼材を選定する
  • 設計中盤でおおよその負荷が見えてきた時点で再度確認する
  • 設計終盤で3Dモデルで構造を詳細に解析して問題が無いことを確認する。

という流れになると思います。

 

たわみの計算結果を見て考え方ること・考え方

機械設計において特に初心者から設計を任されるようになってくると今まで気にしていなかった問題に直面します。

 

「ここの鋼材ってどうしたらいいの?」

 

 

今までは過去の実績から悩むことなく選んできた鋼材ですが、いざ新しい装置になると過去の実績はあくまで参考ですし、そもそも今まで使ってきた鋼材がどんな経緯で使われてきたのかの根拠すらわかっていないことに気づきます。

私としてはここからが設計の入り口に立ったという所でしょうか。この問題を乗り越えてたわみ計算及びその結果に対しての対応を覚えれば、たわみ計算は面倒ではありますが、その計算を初期にしていることで後半の手戻りが少なくなり、たわみ計算が出来ることに大きなメリットを感じると思います。

本題ですが、鋼材のたわみ計算で大切なこと

  • 評価できる結果を残すこと
  • あくまで計算上の話だと理解すること
  • たわみ計算の結果で対策案も練っておくこと

ですね。例えば角パイプを渡してその中央に物を吊るとします。そのたわみを計算するためには以下の情報が必要になってきます。

  • その構造(方もち?両端固定?など)
  • 評価する距離
  • 使う鋼材の縦弾性係数
  • 負荷が掛かる方向の形状でわかる断面二次モーメント
  • 掛かる負荷

です。計算式は記事最後に記述するのと、エクセルシートにもしていますのでそちらを確認してみてください。上記の情報を基にたわみ計算をしたとして、出てくる答えは

  • たわみ=0.5mm

みたいな答えです。これ、この「0.5mm」をどう評価するかというのが設計士の難しいところでもありますね。場合によっては0.5mmたわんでもよい場合もあります。もし、この0.5mmのたわみがNG判定だとしたら、どう対処するのか。

  • 板厚を厚くする
  • 鋼材のサイズをあげる

この判断を設計初期にしておくのです。計算上で「やった!板厚変えたら0.5mmのたわみが0.1mmになったぞ!」というのは微妙な評価ですね。なぜ微妙かと言うと、板厚もそこまで永遠厚く出来るワケではないですし、そもそもその構造が良いのか?という疑問が出てきます。あとその0.5mmという微量のたわみに心奪われたら良い設計が出来ません。

 

私がまずラフな構造を構想し、このように0.5mmのたわみが起こると計算結果でわかった場合、板厚での対処は最後の最後にとっておきます。そのときにまず考えることは、その強度をあげるために上位の鋼材には何があってどんなデメリットがあるのか、形状を変えたらどれだけたわみに変化が起きるのか。 ということです。 機械の設計って初期の計画から余計なものがついたり、次の工事で大型の重量物を支える必要が出てくるかもしれません。

 

要するに、後で応用の利く設計をするのが良いのです。出来るだけ「後で楽できるように」設計します。狭スペースでの設計では特に様々な鋼材を計算し、そこに省スペースな形状でたわみを満足するベストな鋼材を適用します。

 

 

初心者は気づかない自重でのたわみ

CAD設計では鋼材は真っ直ぐ描かれます。なんとなく曲がらない印象を持ちますが、鋼材は自分の重さでたわみを起こします

これはCADだけ眺めていると気づかない部分で、特に初心者の方はイメージが付きづらい部分かもしれませんね。どんなに堅い棒でも、強靭な鋼材でも、長くなればなるほど自分の重さでたわんでしまいます。イメージしてくださいね。

 

 

簡易たわみの計算式

たわみ計算に必要な情報は以下の通りです。

  • F 荷重(kg)
  • L 距離(mm)
  • E 縦弾性係数(kg/mm2)※縦弾性係数はヤング係数(率)とも呼ばれ、材料・材質による固さを表す値
  • I 断面二次モーメント(mm4)※断面二次モーメントは物の形状による固さを表す値
  • N 使用本数(本)

 

片持ち・固定・集中荷重のたわみ計算

=(1*F*POWER(L,3))/(3*E*I*N)

 

 

片持ち・固定・均等荷重のたわみ計算

=(1*F*POWER(L,3))/(8*E*I*N)

 

 

両端・固定・集中荷重のたわみ計算

=(1*F*POWER(L,3))/(192*E*I*N)

 

 

両端・固定・均等荷重のたわみ計算

=(1*F*POWER(L,3))/(384*E*I*N)

 

 

両端・固・支・集中荷重のたわみ計算

=(1*F*POWER(L,3))/(48*E*I*N)*SQRT(1/5)

 

 

両端・固・支・均等荷重のたわみ計算

=(1*F*POWER(L,3))/(185*E*I*N)

 

 

両端・支持・均等荷重のたわみ計算

=(5*F*POWER(L,3))/(384*E*I*N)

 

 

両端・支持・集中荷重のたわみ計算

=(1*F*POWER(L,3))/(48*E*I*N)

 

鋼材のたわみ計算エクセル(フリーソフト)のダウンロード

ここでは事前評価を最速で行なうために、たわみ計算のエクセルシートを作り直しましたのでUPしておきます。

使用鋼材の形状における断面二次モーメントはCADで計算して入れてみてください。2枚目以降のシートは参考資料でデータを載せています。現在のリストは以下の通り。(今後別の鋼材も追記していく予定です。)

 

  • 角パイプの断面二次モーメント
  • ミスミアルミフレーム(HFS・HFSL・NFS・NFSL)
  • H鋼
  • 溝形鋼(チャンネル)
  • I形鋼

 

どうぞご利用ください。

 

※他サイトではありますがより詳細にたわみ計算をするサイトもありますので探してみてください。

 

以上です。

 

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