機械設計者が機械を組立てて解ったこと・感じたことのメモ

2017年6月20日




 

今日は「機械設計者が機械を組立てて解ったこと・感じたこと」についてのメモです。

 

現在はフリーランスとして機械設計の仕事をしている私ですが、現場に脚を運ぶ事も多く、自分の設計した機械を組み立てることがあります。 機械設計のイロハを教えているブログは多く存在しますが 「百聞は一見にしかず」で、実際に組立をしている設計者と組立を殆どしない設計者では設計の品質が変わってきます。

 

もちろん会社の組織上 組立を自由に経験できる設計者が少ないのも事実としてある中で、どのようにして品質を維持したまま組立が考慮できるか を考える必要があります。

 

この記事は 自分の設計したものを実際に組立る中で 初めて知ったこと・感じたこと・今後直していきたい所をメモしていて、設計が気をつけていれば組立の効率化が図れたり、組立の品質が上がる という内容です。

 

少し長い記事になりますが特に設計初心者の方は設計に織り込んでみてくださいね。

 

機械の組立てを考慮した設計

では早速ですが、以下にメモをしていきますが

 

組立をして初めて知った事

私が実際に組立をして初めて知った内容は以下の通りです。

 

組立の際は基本的に仮締めで放置をしない

まず、組立てをしてみて一番初めに驚いたのが 「仮締めはしないでね」という注意事項 でした。

 

僕個人の意見としては、組立途中にやり直しが発生してしまったり、組順間違えたりしたときに逆に手間になるのでは? と思ったんですが、実際にやってみると 仮締めという中途半端な部分を残しながら作業を進めることにとてもリスクを感じるようになりました。

 

組立作業も設計と同じで、そもそもやりなおしを考えている時点でNGですね。適当に組んではいけませんし、位置決めをどう行なってから組んでいくのかをしっかり考えないといけません。仮組状態で万が一放置してしまう場合はとてもリスクがあります。

 

 

組立てを引き継ぐときに進捗がわからないときがあった

大型機械であれば、物がついているまたは付いていないの程度であれば見れば解りますが、精密機械の場合「調整」という作業がかなり重要になってきます。

 

そして部品たちも細々しているのでちょっと部品不具合でその先が組み立てられないとか、1つの部品待ちの状態でほぼ組み込まれている状態とか、とにかく中途半端な組立てで止まってしまうことがあります。そのときに「組立の進捗」が解るものが欲しかった ですね。

 

組立て作業って、常にある仕事ではないことから、外注さんに頼んでいる会社はとても多いかと思います。 しかし、そことの連携を取るための連絡シートなるものがあればとてもよいのではないかと思いました。実際は連絡シートが無くても現物見れば解ることもありますが、意外と組立作業の中で時間が掛かっている(コストが掛かっている)のはこのチェック作業だったり、部品探しだったりします。これから連絡帳をうまく活用し、特に購入品納期の把握は組立者が一番に必要な情報だと思うので、直接担当者に声掛けして話すのも大切ですが、情報が常に見える連絡シートの活用が重要だと感じました。

 

 

組立を意識した設計で考慮していきたい事

私たち設計者が意識していくと良い内容は以下の通りです。

 

組付けミスをなくすように対称部品は面取りなどをつけると良い

この組付けミスをなくすために、 部分的にですが特に 量産品などで頻繁に間違えるようなややこしい部品は面取りなどを織り込み識別しやすくするという意味 です。

 

設計をしていく上で、共通部品を極力使いたいところでして、類似形状で微妙に違うものが多く存在したりしますよね。 対象に見える部品では、実は端面から0.5mm中心穴がずれているとか、そういった部品も設計上頻繁に出てしまうかと思います。そういった場合には、基準とする面(位置決め面)の面取りなどを織り込むと組立の人は迷わなくなり、極力取付けミスを少なくすることが出来ます。

 

 

購入品を確認し易いようにCADデータで購入品の型番が見えると良い

これは各社のルールがあるので簡単には実現できないかもしれませんが、いくらCADデータを利用して組立後のアッセンブリが見えたとしても、似たような別のシリンダなどをつけてしまっては意味がありません。 複雑な機械になればなるほど購入品も多くなってきますし、似たものを間違えてつけてしまうことが発生します。

できれば 購入品の型番がCADデータで見ることができればとても良い です。組立作業者は購入品の箱を開けるときに確実に型番を見ますので、その確認が取れれば迷いが無いと思います。

 

 

組立図に取付け寸法は必ず必要

この取付寸法ってものすごい重要だなと改めて感じました。

 

最近は組立て現場でも3Dモデルが見れるようにしてある所が多いかと思いますが、 設計者が組立図をサボると組み立て作業者はそのデータから寸法を拾っているのです。 確かに3DCADデータを見ればイメージは沸きますが、寸法を拾うのにデータみるのはとっても手間です。

 

例えば、シリンダのロッドなどのボルトで距離をセットするところでは、組立図に必ずセット寸法を入れるようにしてください。

 

また、ノックピンは飛び出し量が解るようにしてください、精密機械では大型機械と違いLMナットをノックピンの出量を稼ぎ、抜け防止のストッパーとして利用する場合があります。そんな時には特に必要です。

 

打ち込みすぎてしまい、後から「もうちょっと出しておかなければいけなかった・・・」なんて事を防ぐためです。現場に3Dモデルを利用して効率上がるはずが、作業時間ふえてる・・・・って感じですね。これ、注意したほうが良いです。

参考:組立図の書き方が解らない人はちょっと参考にしてみてください。

 

また、このノックピンの扱いで組立が苦労する事の一つに 打ち込んだピンがぬけない というのがありますので、ノックピンを使うところでφ5以下の抜き用タップが付いていない場合は後ろから押出せるように貫通にしておいたり、押出し用の穴があると良いです。

 

 

組立者がLMガイドを取り付ける場合の基準面をわかるように

装置内でLMガイドなどのリニアガイドを取り付ける場合、レールの位置決めに対してナットの位置決めができるように設計してください。 私が組んだ機械ではレールを取り付けるとナットの位置決めができないものなどがありました。

 

LMガイドには基準となる面(削ってきれいになっている場所)があります。カタログを見て適切な位置決めをする必要があります。

 

 

運搬が安全に出来るか意識する

設計者が意外と忘れる項目の一つに機械の納品・運搬時にどうするか と言うのがあります。

 

部品の組立で重たい部品を吊って取り付けられるようにタップをつけるなど、そこまでは意識できるんですが 出来上がった機械を納品・運搬するときを意識できると良いです。フォークが入る場所を確保してあっても、フレームの下にボルトが飛び出していたりする場合などがあって、それが運搬に悪影響です。

 

 

平行ピンの圧入は、簡単にぬけてしまうものがあった。

ずっと前から気になっていましたし、私自身が別の仕事でピン圧入する工程を担当していたときにもそうでしたが、一般的に公表されている締め代に対する圧入の品質で、特に軽圧入などではスキマが生まれてしまいます。そうなった場合、組立では圧入で固定することが難しいので、どうしようもないから傷つけて接着剤を塗布するしかないとベテラン組立者の方に教えてもらいました。でも・・・違和感が取れませんでした。

参考記事:ノックピン・平行ピンの使い方と穴公差などの参考設計方法

 

 

使用するねじは組立図に入れたほうが良いと思う

「組立図の部品表にボルトを入れない」というルールがある会社さんも有るかと思いますが、ここは出来るだけネジまで部品表に入れたほうが良いです。

 

すこしショックだったのが、組立者は意外とボルト長さを見ていなかったことです。

 

自分も組立をやってみてわかりましたが、あまり見ません・・・というか、ネジの長さ指定がない場合、データからボルトのL寸を拾って探して取り付けるが、短いことがわかって少し長いのに入れ替える。という作業が結構ありました。(つまり信じられているようで信じられていない時もあるようです)

 

まだ適切なネジサイズにしてもらえれば良いですが、ネジが奥のプレートに当たって止まっているのを「締結できた」と勘違いする事もまれにあって、量産品では気づかれることが初回や試作・オリジナルマシンですと気づかれずに最後の方まで行きます。

 

締結しているつもりが出来ていないっというのは大変危険なので、私たち設計者は組立図の部品表にちゃんとネジまで手配しておくことが理想だと思います。

 

 

 

少しでも特殊なネジや部品は購入品で手配する

これって凄く重要だと私は思いますが、 機械を設計組立している工場では頻繁に使うネジ類は在庫していますが、特殊な長さのネジが常にあるとは限りません。 設計者としては ネジが在庫されていると思い込むと現場でものが無かったときのロスが大きくなります。

 

こういった少し特殊な部品は購入品で手配しておくとトラブルが少なくなります。

 

 

 

把握できる組立名称や部品名称が現場混乱を防ぐ

機械が複雑になればなるほどサブユニットが増え、さらに配管図も圧縮エアと吸引で分かれてきたり・・・とにかく図面が増えてしまいます。

 

設計者は「プレート」と書いても使う場所は把握できていますが、組立(資材も)ら見ると「(どこの)プレート?」となります。 機械というのは各部品を購入し、仕分け、組立場所に搬送、組立 という流れですが、 どこのユニットのどこの部品か解る名称 に考慮できると良いです。

 

 

 

配管図は原点で書くことを統一する

配管図は「デフォルト状態」つまり動作前で統一して書いておくことが重要です。そしてさらに重要だとかんじたのが、図面に「本図の配管及び機器の位置は原点位置とする」などという注記があると大変良いと思います。

 

それはなぜかというと、シリンダが出てる出ていないの絵ってすごく重要ですが、たまに間違えているやつがあると組立者は混乱してしまうんですが、そのときに「本図の配管及び機器の位置は原点位置とする」という注記があれば図面が間違えているとかの把握をしてもらいやすくなります。

 

何も考えない組立者がいた場合、そのまま組まれてはいきなりぶつけてしまうことになりますので「この図面は原点のつもりで書いてます」という注記は付けておきましょう。

 

 

組み付ける順番に左右されない設計が良い

この、組付ける順番に左右されない構造・ユニット構成がとても重要 です。

 

機械はある程度のユニットで構成されているんですが、組立では そのユニットごとに別の場所で組み立てて最後アセンブリするのが理想 なんです。  例えばAユニットとBユニット別々に組んでから最後組み合わせられれば良いところ、ボルトが中途半端に別ユニットに重なっていると締め付けられません。

 

Aユニットを途中まで組んでからBユニットを噛ませて、Aユニットの残りを組み込む・・・・こうなると組立効率が悪くなります。 また、これは後にメンテナンスなどで分解する場合にも同じ事が言えます。Aユニットだけ取り外したいのにBユニットまで取り外さなくてはいけない状況は辛いです。

 

 

最後に

私は実際に組立てをして変わったには もっと思いやりを持って設計しようと思うようになったことです。  思いやりとは「考慮」だと思っていて、色々なことに対応できている考慮した設計を今後どんどん織り込んでいきたいと思いました。

 

また、この記事は都度追加していく予定です。

 

以上です。

 

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