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累進・直列・並列寸法の違い・入れ方・使い分け

2019年8月16日

今日は、機械図面における「累進・直列・並列寸法の違い・入れ方・使い分け」についてのメモです。 寸法の入れ方は各社・扱う部品に応じてそれぞれですが、

 

  • 各寸法の違いや一般的な表記ルールを学びたい方
  • 各寸法をどのように使い分けるべきか気になっている方
  • 設計、製図初心者の方

 

に向けた記事として、寸法の種類と使い分けを説明します。

 

この記事を初めて書いたのが 2019年 ですが、今この記事に追記しているのが 2023年(今)です。 この数年で 図面レス という言葉が流行って、実際に3Dモデルから部品が発注できるサービスも出てきました。  しかし、図面レスという流れが一旦減速し、図面は完全になくすことはできない という考えを持つ技術者もいます。 私も 図面は無くせないだろう、そしてこのスキルがこれからの時代設計者として差別化される部分だろう と考えている一人です。

 

ではいきます。

寸法の種類(直列・並列・累進)と特徴

機械部品の寸法の入れ方は大きく分けて3つあります。(参照:JIS Z 8317-1:製図-寸法及び公差の記入方法-第1部:一般原則)

 

  • 直進寸法
  • 並列寸法
  • 累進寸法

 

です。これら寸法全て 部品の基準から寸法をいれる のですが記載のルールに違いがあります。

 

 

直列寸法記入法とその使い方

直列寸法は文字通り同一直線上に寸法を記載する方法です。

直列寸法記入法

特徴としては個々の寸法に与えられる寸法公差が累積することです。

 

直列寸法記入法のポイント

穴と穴など、指示箇所からの相対位置を公差範囲内で要求する場合に利用します。

 

 

 

並列寸法記入法とその使い方

並列寸法は、寸法を入れる部品に基準・基準面を設け、その基準から並列にそれぞれの寸法を記載する方法です。

並列寸法記入法

特徴として個々の独立した寸法にそれぞれの寸法公差が適用されます。

 

並列寸法記入法のポイント

基準面からの絶対位置を公差範囲内で要求する場合に利用します。

 

 

 

累進寸法記入法とその使い方

累進寸法は並列寸法を同一直線上に記載する方法です。

累進寸法記入法

特徴として並列寸法のように個々の独立した寸法にそれぞれの寸法公差を適用しながら寸法の省スペース化が可能となります。

 

累進寸法記入法のポイント

基準面からの絶対位置を公差範囲内で要求する場合に利用します。

 

 

 

補足:ここでいう公差について

ここでいう公差とは、特に記載しない一般公差と、一般公差ではない入力する公差両方を示します。(一般公差はJISB0405)

長さに対する許容差

上記を見ると、距離が長くなればなるほど寸法の入れ方によって狙った穴の位置から大きくずれる事が理解できるかと思います。

 

 

 

どういった形で各寸法を使い分けるのか(参考事例)

さて、ここから多くの方が気にする場所「どういった形で使い分けるのか」について少し触れてみます。

 

私が複数社の図面を拝見している感覚ですと

 

  •  製缶加工品や板金部品は直列寸法+並列寸法の織り交ざった図面が多い
  • 機械切削加工品は直列寸法+並列寸法が織り交ざる図面と、累進寸法+並列寸法が織り交ざる図面が半々くらい

 

です。

 

製缶品や板金を扱う図面では累進は不向きだと思いますので「直列+並列」という組み合わせが無難です。

 

例_直列と並列寸法

 

 

そして次に、少し難しい機械切削加工品です。

 

単純な形状であれば「直列+並列」で全く問題ありませんが、複雑な部品では出来る限り部品の形状を見やすくしたいので寸法スペースが少ない累進寸法を利用する事が多いです。しかし、累進寸法は基準からの各寸法にそれぞれの寸法公差が適用されるので、公差穴間などの公差は別途直列もしくは並列寸法が必要になります。

 

例えば、累進寸法で入れている所に穴間公差を適用する場合は以下のようになります。

例_累進寸法と並列寸法

 

このような記入方法です。

 

累進寸法はとても便利ではありますが、外形位置と穴位置を一列に入れてしまうと見辛くなってしまうので、累進寸法で統一する場合は穴・面などの属性で分けるとよいと思います。(精密機器の部品ではこの入れ方をしているのをよく見かけます)

 

 

私個人としては・・・・

私個人としては、累進も使いますが基本的には製缶部品、切削加工品で寸法の入れ方を分けていません。

 

  • 外形寸法や穴寸法において、関係の深い場合は直列寸法
  • 外形寸法や穴寸法において、関連の無い場所は並列寸法で段を変える

 

といったような形が一番わかりやすいかもしれません。(製図者のセンスだと思います)

 

 

最後に

今回は書く寸法の基本的な使い分けを記事にしましたが、寸法を入れるということは意外と難しいです。 寸法が表現したい形状を邪魔しないように入れることも重要でしょう。また、加工者や検査で図面を見た方向から一番わかりやすい場所に寸法を入れることも重要です。

 

別記事となりますが「切削部品の設計に活かすべき。加工マイスターに教わった切削加工を考慮した部品の在り方」という記事で

  • 穴のピッチは累進・外形の寸法は直列・並列が見やすい
  • 測りやすい寸法が図面に記載されていると有難い

という内容に触れていますので、宜しければそちらもご確認ください。

 

以上です。

 

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