今日は切削加工における「切削温度とは何か。切削温度を下げるために出来る事まとめ」についてのメモです。最近は加工専用機の設計をする事が増えてきた事もあり、以前より気になっていた切削温度について勉強しました。
結果として、切削温度への対応は大変難しい課題がある事や、切削温度を正確に把握することが難しいことが理解できました。
今日はその内容について切削温度のポイントとなる部分をメモしておきます。
切削温度
切削温度とは何か
切削温度とは、切削加工時に 塑性変形(そせいへんけい)や摩擦現象によって工具及び被削材が持つ切削熱の温度です。
引用:塑性変形とは(材料力学の基礎)
塑性変形(そせいへんけい)とは、外力を取り除いても残る変形です。 降伏点を超える外力が作用するとき生じる変形。
せまい意味だと 工具すくい面と切りくずとの接触面(摩擦面)の温度 で、この切削温度に影響のある要素は沢山ある中で、以下2点が大きいと上昇する傾向にあるそうです。
- 切削抵抗が大きいと切削温度が上がる
- 被削材の材料強度が高いと切削温度が上がる
この切削温度上昇によって刃先も高温になり工具強度も一般的に低下しますが、これら切削温度は外部へ排出される切りくずと一緒に出て行く ため、そのバランスによって切削温度の上昇する早さや上昇温度が決まる事となります。
逆に、切削温度が上がり難い傾向が見られるのは
- 熱伝導効率の良い材料は熱が排出されやすい
- 切りくずの持つ「熱容量」が大きければ熱が切りくずにより持ち出される
という事になります。
つまり、工具や被削材の熱伝導率が低い場合はすくい面の温度は上昇しやすくなるという事です。難削材はこの熱伝導率が低く、硬さもあることから切削温度が上がる傾向にあるそうです。
引用:熱伝導率とは(Wikipedia)
熱伝導率とは、温度の勾配により生じる伝熱のうち、熱伝導による熱の移動のしやすさを規定する物理量である。 熱伝導度や熱伝導係数とも呼ばれる。
切削温度の影響
刃物や被削材に対して
切削温度が高いことで刃物に影響があります。具体的には
- 工具寿命が短くなってしまう(磨耗の促進)
- 熱膨張が大きくなる(精度への影響)
- 焼けの発生(仕上げ面の品質低下)
また、例えばエンドミル材料として使われる高速度工具鋼「粉末HSS」のように、安価で加工性もよく、複雑な形状の工具も比較的容易に製作できるというメリットがありますが切削温度が 製作時の焼戻し温度の550℃を超えるような領域では使用することができない などの制限もあるそうです。(OSGテクニカルデータより)
切削速度に対して
基本的に切削速度は切削力のに影響するので加工能率からみると切削速度は速い方が良いとされますが、
切削速度の上昇=切削温度上昇 となるので、工具刃先が高温となります。
つまり、工具は高温時の硬さを保つ事が必要なので、切削温度の限界も工具ごとに変わり、切削温度によっても切削速度に制限が掛かるとされています。
切削温度を下げるために出来る具体的な対策
切削温度を下げるために出来る具体的な対策は以下の通りです。
- 鋭い工具へ交換する(切削抵抗を下げる)
- 潤滑を適切に行なう(切削油を変更する)
- 潤滑の供給方法を変更する(高圧化・潤滑剤温度調整)
※切削油の冷却は特にシャンク等の工具を外部から冷やすことへ効果が大きい
切削部(切削点)の冷却にはあまり効果は無い - 切削抵抗の少なく、熱伝導率の高い快削材料を利用する
- 切りくずを上手に排出する
などです。
補足:切削油の効果と必要な理由
切削油の作用は以下の通りです。
引用:OSG
- 潤滑作用…工具寿命の延長、摩擦の減少、面粗さ・切削条件の向上、切削動力の軽減
- 冷却作用…寿命の延長、切削温度の低下、仕上げ精度の向上
- 洗浄作用…切りくずの除去、表面粗さ、仕上げ精度の向上
- 防錆作用…機械、工作物の腐食防止
- 切削油剤は大別すると、水溶性切削油剤と不水溶性切削油剤があります。
切削油の目的は基本的に潤滑作用 ですが、潤滑作用は特に低速切削(333mm/s以下)において効果が期待できるそうです。
閉塞空間で切りくずが発声するドリル加工は、切りくず同士の抵抗があるのでそれらを除去する切削油の効果が非常に大きくなり、切削油は上昇する切削熱を除去し、切れ刃の温度を下げ、切りくずと工具との摩擦を減らし加熱された切りくずを有効に除去する効果があります。
すべてにおいて有効とは限りませんが、切削油を工具の刃先に届かせることが「切削温度」を下げるのに重要とのことです。
最後に
今回学んだサイト・資料は以下の通りです。(大変参考になりました)
また、当ブログでは切削抵抗についてのメモがあります。切削抵抗を下げる事で切削温度を下げる事にもつながります。宜しければご確認ください。
以上です。