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ばね座金の用途は緩み止めと落下防止

2022年5月19日

 

今日は「ばね座金の用途は緩み止めと落下防止」についてのメモです。

 

メカ設計をしていると「バネ座金には緩み止め効果がない」という人と「緩み止めとして使えるよ」と話が別れます。

 

緩み止め否定派

引用:NBK(座金の役割って何?)より

ばね座金にはゆるみ止めの効果は、ほとんどないと考えているよ。 ばね座金の弾性力は、ねじを規定のトルクで締めつけた際の軸力と比較すると非常に小さく・・・中略・・・ねじがゆるんだ場合に、弾性力による摩擦で、ねじが簡単に脱落することを防止する意味はあるかもしれないね。

 

緩み止め肯定派

引用:宇都宮螺子(スプリングワッシャー(ばね座金))より

スプリングワッシャーを入れる目的は「緩み止め」と緩んだ時の「脱落防止」です。・・・中略・・・スプリングワッシャーを組んだねじが緩んでも、スプリングワッシャーの反発力によって押し付けられ摩擦力が増し、ねじやナットが外れにくくなるのが脱落防止効果です。

 

このように、緩み止め効果がほとんど無いという人もいれば、緩み止め効果があるという人もいますが、私は両方正解だと思います。

 

ばね座金を理由をもって適切に使用している人が少ないからこういった「ばね座金には緩み止め効果があるのか?」などの話題が上がるのかもしれません。 そもそもばね座金は締結後の緩み止め効果を求めるものではない んですが、私個人としては ばね座金って便利だよね って思っています。

 

文章の書き方にもよりますが、ばね座金には緩み止め効果がないっていう情報を見てしまうと 若手設計者さんがいかなる場合においても「ばね座金は意味がない」と判断してしまいそうです。 「落下防止って考え方によっては緩み止めと同じ意味じゃないの?」 って考える人もいますから、この記事では、緩み止め効果否定派と肯定派の意見を少しまとめて、ばね座金の用途をメモ しておきたいと思います。

 

ばね座金の用途は緩み止めと落下防止

ばね座金の用途は弾性力に注目

ばね座金の特徴を分かりやすく説明してくれているのが 平和発条株式会社 さんのHPです。

 

引用:平和発条株式会社(座金 スプリングワッシャー)より

1巻コイルの形状をした座金で、切り口部分が締め付けられ平らになる際のばね作用 により、ゆるみ止め効果を発揮 できます。

 

つまり、ばね座金の緩み果が発揮されるのは ばね座金が作用してからねじを締め切るまでと、締め切った所から緩んで作用範囲を越えるまで発揮 します。

 

ばね座金の用途は緩み止めと落下防止2

 

うーん、、、無駄に絵にしてしまった感がありますが、ばね座金はこの範囲において効果を発揮するので、冒頭で引用した否定派と肯定派が言いたいことは両方合っているということですね。

 

纏めると

  • ねじを締め切るまではばね座金の作用により押し付け効果がある。 締め切ってしまうとネジの軸力(押付け力)がばね座金の押付け力を超えてしまうのでばね座金が作用する力は小さく 締まりきったねじのゆるみ止めの効果は殆どない

 

  • ねじが緩んできた時は ばね座金の作用範囲内であればねじを押付ける効果があるので 一定のゆるみ止め効果(落下防止効果)を得ることが出来る。 但し、振動によるネジの緩みを止めることが出来るとは限らない

 

  • ねじが緩んでいる場合に押付け効果を発揮している ばね座金の押付け力は規格があるわけではなく保証できない

 

です。

 

 

ばね座金の用途

このように、効果を限定的に発生させるばね座金ですが、 ばね座金が入っていたらダメではない ので、どのように使うのか私の経験でメモしておきます。

 

 

①微調整する場所

ばね座金が有ると良い所の1つ目は 微調整するような場所 です。 ばね座金の弾性力は組立の際には便利です。 機械を作る場合、多くの場所で組立調整が発生します。

 

例えば、締結したい板が下側についていれば自重が掛かるのでねじを緩めた時に板が落ちてきてしまい調整しにくい場所や、 板が立っていて調整時にネジを緩めると倒れてスキマが出来てしまう所、部材を手で押さえつけながらねじを締め込むような場所 です。

 

上からねじを止める部分は、部材が自重で浮かない(動かない)のでばね座金は基本的に必要ないですが、前後・左右の調整をする部分(長穴で平座金を使う場所)にはあった方が良いとおもいます。(六角穴付きボルト・六角ボルト・その他ねじ 全般)

 

 

②締めづらいねじに使う

ねじを締め切りにくいねじにはばね座金が有効 だと思います。

 

例えば 十字穴付なべ小ねじ などです。

ばね座金の用途は緩み止めと落下防止3

 

我々設計者、組立技術者が使う機械用のねじは六角穴付きが多く、それらは ねじの締め付けをトルク管理しやすいのが特長ですが、十字穴付ボルトは締めづらい上にトルク管理も比較的難しい です。 締め付けトルクの管理が難しい所は軸力がバラつきねじのゆるみが発生しやすくなります。

 

樹脂カバーなどに使われる事が多い 十字穴付なべ小ねじ ですが、締め付けるねじがなめちゃうから、特にハンドトルク(組立者のさじ加減)で締め付ける場合比較的低いトルクで締めがちになる場所ですね。 また、締結対象が割れてしまう材質、またはタップ材が樹脂の場合などはばね座金があると良い と思います。 また、この十字穴付なべ小ねじにはばね座金組み込み型も売っているので、ばね座金の用途としては非常にマッチしていると思います。

 

 

③締結部材が膨らんだりするもの

例えば樹脂部材を締結する場合ですが、樹脂はものによって、水分を含んで膨らんだり、縮んだりします。 そんな場合でもばね座金の効果を得られやすいのではないかと思います。

 

水分に限らず、周辺の温度による膨張を繰り返すような場所、特に屋外など 環境が変わる過酷な条件の場所などです。 ねじのサイズが大きくなれば ばね座金も大きくなり、押付け効果は大きくなります。  締結対象と締結部品のバランスにもよりますが、ゆるんでしまう環境でも十分満足するばね座金のサイズであれば緩んできた時のカバー力も十分満足するはずですね。

 

 

最後に

私が機械設計を始めた頃、特に長穴調整の場所に平座金との組み合わせで使われている設計が多かった記憶があります。

 

当時は 流用するCADデータがあったので継続して使っていました。 色々学んできた今では 理解をもって長穴調整の場所には必要だと思っています が、はめあい部品やザグリ穴などの、締結対象がずれないものには必要ない です。

 

昔、航空宇宙関連の設計をしていた方が「ばね座は意味がないから要らない、使うな」と言っていました。 確かに、航空宇宙関連のように、ネジのメーカーを指定したり、振動試験などで締結部の評価をされるような設計では必要ないです が、もう少し緩い設計対象では ばね座金はまだまだ必要 だと私は思っています。

 

今後も、締結部の設計には十分配慮をして設計をしていきたいと思います。

 

以上です。

 

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