こんにちは。機械設計者の寺野です。
今回は「ショックアブソーバのNG使用例」についてのメモです。
以前、私がNC旋盤の自動化設計を行っていた際に、加工室内に搭載していたローダーのショックアブソーバが頻繁に破損してしまう問題が発生しました。
手軽に衝撃エネルギーを吸収してくれるショックアブソーバですが、実は使用するにあたり多くの制限があります。 このメモでは、選定計算を終えた初心者の方や、ショックアブソーバが頻繁に破損してしまう方を対象に、上記の経験から学んだ主なNG使用例 を 介します。
ショックアブソーバ
1.ショックアブソーバの基本構造
まず始めに、ショックアブソーバの基本構造について確認します。
ショックアブソーバは大きく分けるとピストンロッドとシリンダーから構成されています。 シリンダー内にはオイルが封入されており、ピストンロッドが押し込まれると、オイルがピストン断面に空いている穴(オリフィス)より少しずつ抜けます。この 穴を抜ける際にオイルが起こす摩擦によって、エネルギーが吸収される仕組み になっています。
2.主な破損箇所と症状
破損しやすい箇所や症状はある程度決まっており、主な故障箇所は以下の2つ です。
- ロッドガイド → ピストンロッドの摺動(しゅうどう)不良
- オイルシール → オイル抜けによる油圧の低下
※摺動とは滑らせて動かすことです。
ロットガイドが破損すると、ピストンロッドが押し込まれたまま戻らなくなるなど、正常に動作しなくなります。一方、オイルシールが破損するとオイル抜けが起こり、衝撃を十分に吸収できなくなります。
3.NG使用例
それでは、 上記の状態になってしまう環境や使用例 を見ていきましょう。
NG① ロッドに垂直方向から加重が掛かる環境
ショックアブソーバは、ロッドが押し込まれることでエネルギーが吸収されるため、基本的には軸方向への衝撃しか受けることはできません。 垂直方向や斜め方向から衝撃を受けると、ロッドガイドやオイルシールに想定されていない負荷がかかり、破損します。
NG② 塵に暴露される環境
ロッドに 塵などの異物が付着した状態で動作させると、押し込まれた際にロッドガイドとの擦れの原因 となり、長期間続けるとロッドガイドやオイルシールが破損します。
塵に暴露される環境で使用する場合は、以下2点に注意して見直してみてください
- ロッドにジャバラがついている特殊品の採用
- ロッドの保護カバーの検討
NG③ 薬液に暴露される環境
オイルシールはゴムでできています。 薬液との相性によっては劣化しオイル漏れ を起こします。
薬液に暴露される環境で使用する場合は、以下の2点に注意して見直してみてください。
- 薬液に対してのオイルシール適合性をメーカーに確認
- ショックアブソーバ本体の下向き取り付け
NG④ 重量物や速い速度のワークの衝撃吸収
大きいエネルギーを持ったワークを止める際には、ショックアブソーバ自体の反力に注意が必要 です。
これが限界値を超えると、ワーク自体が損傷してしまう場合があります。 これに該当する場合は衝撃吸収ストロークの延長が必要 ですが 市販されている多くのショックアブソーバは、吸収できるエネルギーに対してストロークが決定されているため、都合の良いものを見つけるのは難しい です。 そのため現実的な対策としては速度、重量の見直しを行うことになります。
NG⑤ メンテナンスが容易に行えない構造
ショックアブソーバは消耗品 です。各メーカーの動作回数を確認してみてください。 ベストな環境で使用した場合でも、一定期間での交換が必要になります。そのため、交換を前提とした構造が必須 となります。
また、構造上の制限から、上記のNG環境や使用法をどうしても採用せざるを得ない場合も多々存在します。 その場合も メンテナンスが容易に行えれば、致命的な問題は避けることができます。
逆を言えば、メンテナンスが困難な構造は、復旧作業のためにダウンタイムとコストを掛ける必要があり、最終的には大きな問題に発展してしまうことが多い です。
4.まとめ
ここまで主なNG使用例を紹介してきましたが、該当する場合でも条件を絞れば対応可能な場合が多く存在します。 まずは検討中のメーカーに問い合わせてみましょう。思わぬ解決策や製品を紹介してくれることがあります。
以下に代表的なメーカーを挙げておきますので参考にしてください。
- コガネイ (https://official.koganei.co.jp/)
- SMC (https://www.smcworld.com/ja-jp/)
- 不二ラテックス (https://www.fujilatex.co.jp/)
- エニダイン (https://www.enidine.com/ja-JP/Home/)
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以上です。