今日は、中実軸とベアリング内径における「ベアリングの圧入力と引き抜き力の基本計算」についてのメモです。前回は「中空軸とベアリング内径」の圧入計算を記事にしましたが、今回は軸が中実の場合だとどうなるのか計算してみたいと思います。
圧入計算
中実軸は中空軸より圧入力が必要になる
軸にベアリングを圧入する場合、中空軸よりも中実軸に圧入するほうが圧入力が大きく必要になります。
これは、中空軸より中実軸のほうが「力の逃げ場がないから」といったイメージ通りの解釈でよいと思います。特に前回でも少し触れましたが「適切な冶具」ようするに真っ直ぐ圧入できる冶具ではほぼ計算値程度の違いであるといえますが、適切な冶具でなかった場合は計算値よりはるかに違ってくる可能性がありますのでご注意いただければと思います。
中実軸を内径に圧入する際の圧入力と引き抜き力
この計算書も前回の続き、NTNさんの「転がり軸受けハンドブック」とNSKさんの「テクニカルレポート」を元に作成しています。
計算に必要な項目
d 径〔軸or内輪〕(mm)
Smax 設計しめしろ最大(mm)
Smin 設計しめしろ最小(mm)
G しめ代の減少量(μm)
D 軸受けの外径(mm)
B 軸受けの幅 (mm)
E 弾性係数(MPa)
P 軸ポアソン数
μ1 摩擦係数
μ2 摩擦係数
圧入力と引き抜き力の計算
- 想定される中間値の有効しめしろを求める
S''[mm]=(((Smax-Smin)/2)+Smin)-(G/1000)
- 内輪軌道径(平均溝径)を求める(一般式採用)
D1[mm]=1.05*(((4*d)+D)/5)
- 軸径と内輪軌道径の比を求める
k[-]=d/D1
- 中実軸の場合のはめあい面圧を求める
Pm[N/mm^2]=(S''/d)*(1/((((P-1)/(P*E))-((3.33-1)/(3.33*208000)))+(2/(208000*(1-k^2)))))
- 内輪内径はめあい面の円周方向最大応力を求める
τmax[N/mm^2]=Pm*((1+k^2)/(1-k^2))
- 内輪と軸を入する際に必要な力を求める
K[N]=μ1*Pm*3.14*d*B
- 内輪から軸を引き抜く際に必要な力を求める
H[N]=μ2*Pm*3.14*d*B
計算エクセルのダウンロード
ここでは「中実軸とベアリング内径の圧入計算」のエクセルシートをダウンロードできます。どうぞご利用ください。
【圧入力・引抜力の計算書】中実軸とベアリング内径の場合_180510