H形鋼(JIS G 3192)寸法・定尺・選定ガイド

 

ここでは 「H形鋼(JIS G 3192) についてサイズと断面二次モーメント及び定尺」 を補足と共にメモしています。

 

JIS G 3192 一般構造用H形鋼 サイズ・断面二次モーメント一覧

H形鋼の断面寸法図(H, B, t1, t2, r)

JIS G 3192 一般構造用H形鋼 サイズ・断面二次モーメント一覧
サイズ 断面二次モーメント
H×B
(mm)
t1
(mm)
t2
(mm)
r
(mm)
Ix Iy
cm4 mm4 cm4 mm4
広幅 H形鋼
100×100 6 8 8 378 3,780,000 134 1,340,000
125×125 6.5 9 8 839 8,390,000 293 2,930,000
150×150 7 10 8 1,620 16,200,000 563 5,630,000
175×175 7.5 11 13 2,900 29,000,000 984 9,840,000
200×200 8 12 13 4,720 47,200,000 1,600 16,000,000
250×250 9 14 13 10,700 107,000,000 3,650 36,500,000
300×300 10 15 13 20,200 202,000,000 6,750 67,500,000
350×350 12 19 13 39,800 398,000,000 13,600 136,000,000
400×400 13 21 22 66,600 666,000,000 22,400 224,000,000
中幅 H形鋼
148×100
(150×100)
6 9 8 1,000 10,000,000 150 1,500,000
198×99 4.5 7 8 1,540 15,400,000 113 1,130,000
200×150 6 9 8 2,630 26,300,000 507 5,070,000
250×175 7 11 13 6,040 60,400,000 984 9,840,000
300×200 8 12 13 11,100 111,000,000 1,600 16,000,000
350×250 9 14 13 21,200 212,000,000 3,650 36,500,000
400×300 10 16 13 37,900 379,000,000 7,200 72,000,000
450×300 11 18 13 54,700 547,000,000 8,110 81,100,000
500×300 11 18 13 68,900 689,000,000 8,110 81,100,000
細幅 H形鋼
100×50 5 7 8 187 1,870,000 14.8 148,000
125×60 6 8 8 409 4,090,000 29.1 291,000
150×75 5 7 8 666 6,660,000 49.5 495,000
175×90 5 8 8 1,210 12,100,000 97.5 975,000
200×100 5.5 8 8 1,810 18,100,000 134 1,340,000
250×125 6 9 8 3,960 39,600,000 294 2,940,000
300×150 6.5 9 13 7,210 72,100,000 508 5,080,000
350×175 7 11 13 13,500 135,000,000 984 9,840,000
400×200 8 13 13 23,500 235,000,000 1,740 17,400,000
450×200 9 14 13 32,900 329,000,000 1,870 18,700,000
500×200 10 16 13 46,800 468,000,000 2,140 21,400,000
588×300 12 20 13 118,000 1,180,000,000 9,020 90,200,000
600×200 11 17 13 77,600 776,000,000 2,280 22,800,000
700×300 13 24 13 201,000 2,010,000,000 10,800 108,000,000
800×300 14 26 13 292,000 2,920,000,000 11,700 117,000,000
900×300 16 28 13 411,000 4,110,000,000 12,600 126,000,000

機械設計者のためのH形鋼(JIS G 3192)選定ガイド

H形鋼は、少ない断面積(重量)で高い曲げ剛性を得られる非常に合理的な鋼材です。 正しく選定・使用するために、以下の4つのポイントを押さえてくと良いと思います。

 

1. 各部の名称と役割(なぜあの形なのか?)

H形鋼の断面は「H」の形をしていますが、それぞれの部位には明確な役割があります。

  • フランジ(Flange / 上下の平らな部分):主に「曲げモーメント」(部材を曲げようとする力)に抵抗します。 ここが厚いほど、曲げに対する強さが上がります。表では t2 と表記されます。
  • ウェブ(Web / 中央の縦の板):主に「せん断力」(部材をハサミで切るように働く力)に抵抗し、上下のフランジを繋ぎ止める役割を持ちます。表では t1 と表記されます。

 

 

2. 強軸と弱軸の概念(向きを間違えると致命傷)

H形鋼には「曲げに強い向き」と「弱い向き」が明確に存在 します。

  • 強軸(「エ」の向き):断面がカタカナの「エ」に見えるように配置する向き。上下のフランジが曲げの力にしっかり抵抗するため、非常に強いです。梁や架台は必ずこの向きで荷重を受けるように設計します。曲げの力に抵抗する「フランジ」が、断面の中心から最も遠い位置に配置されるため、効率よく踏ん張ることができます(これが断面二次モーメント Ix が大きい理由です)。
  • 弱軸(「H」の向き):断面が「H」に見えるように(ウェブが水平に寝るように)配置する向き。上からの荷重に対しては極端に曲がりやすくなります。

 

 

現場の設計ノウハウ:なぜ「H」の向きで使わないのか?

強度の問題だけでなく、「H」の向きで寝かせて使うと、水平になったウェブ部分が溝になり、雨水、ホコリ、機械の油などが溜まり放題になります。  これはサビや腐食の最大要因となるため、強度・メンテナンスの両面から「エ」の向きで使うのが設計の基本中の基本となります。

 

 

 断面二次モーメント(I) と 断面係数(Z) の違い

カタログや表に必ず載っているこの2つの数値は、目的によって使い分けます。

  • 断面二次モーメント(I): 「変形のしにくさ(たわみ)」部材がどれだけ「たわまないか」を示します。機械設計では強度が足りていても「たわむと精度が出ない」ことが多いため、剛性設計において最重要のパラメータです。(単位:cm4 など)
  • 断面係数(Z): 「壊れにくさ(応力)」部材がどれだけ「折れないか・降伏しないか」を示します。強度計算(応力計算)で使用します。※今回の表には載せていませんが、I を断面の端までの距離で割った値です。

 

 

3. 広幅・中幅・細幅シリーズの使い分け

JISのH形鋼は、フランジ幅(B)とウェブ高さ(H)の比率によって3つのシリーズに大別されます。

  • 広幅(H ≒ B):高さと幅がほぼ同じ寸法(例:200×200)。弱軸方向の強度が比較的確保されているため、「柱」として使うのに適しています。
  • 中幅(H > B):広幅と細幅の中間(例:300×200)。梁としても柱としても使いやすいバランス型です。
  • 細幅(H ≫ B):幅に対して高さが2倍程度あるもの(例:200×100)。曲げモーメントが強く働く「梁(横架材)」として使うのが最も効率的(重量あたりの強度が最高)です。

 

 

4. 機械設計者が陥りやすい「3つの落とし穴」

  1. 呼称寸法と実寸法が違うことがある:「150×100のH鋼」と呼んでいても、実際のJIS寸法は「148×100」です。これを知らずに150mmのスペースにきっちり組み込む設計をすると、隙間が空いたり寸法が合わなくなったりします。必ずカタログの「実寸法」でモデリング・設計してください。
  2. フィレット「r」の干渉:ウェブとフランジの接合部には、強度を上げるためになだらかなアール(表の r 寸法)がついています。直角にカットされた補強板(ガセットプレート)や他の部品をウェブの根元まで密着させようとすると、この r に干渉して浮いてしまいます。相手側の部品の角を落とす(C面取り・R逃がし)設計を忘れないようにしましょう。
  3. 横座屈(よこざくつ)の罠:梁として強軸方向に正しく使っていても、長くて細いH形鋼に大きな荷重をかけると、ある限界点で「急に弱軸方向(横)にグニャッと逃げるように曲がる」現象が起きます。 これを横座屈と呼びます。スパン(支持点間の距離)が長い場合は、途中に横ブレ止めの梁を入れるなどの対策が必要です。

 

 

H形鋼 一般的な定尺(長さ)一覧

H形鋼の定尺(長さ)と標準的な長さ例を示す図

H形鋼 一般的な市中定尺(長さ)一覧
定尺 (m) 備考・流通の目安
5.5 m 小型・中型サイズで広く流通
6.0 m 最も一般的な定尺の一つ(トラック運搬が容易)
6.5 m 一部サイズで流通あり
7.0 m 一般的な定尺
7.5 m 一部サイズで流通あり
8.0 m 一般的な定尺
8.5 m 一部サイズで流通あり
9.0 m 一般的な定尺
9.5 m 一部サイズで流通あり
10.0 m 大型サイズ含め、広く流通
11.0 m 一般的な定尺(大型トラックで運搬)
12.0 m 最も長い部類の標準定尺(これ以上は特注やトレーラー輸送)

※上記は一般的な市中品の長さです。サイズ(断面寸法)や鋼材問屋の在庫状況によっては、特定の長さしか扱っていない場合があります。
※小ロットの場合は、問屋にて希望の長さに切断(バンドソー切断など)して納品されるのが一般的です。

 

設計の際、「たわみや強度がクリアできればOK」というわけではなく、作りやすさ(コストと運搬)も考慮する必要があります。以下のポイントを記事の補足にすると、より実務的な内容になります。

  1. 歩留まり(端材ロス)を意識する :鋼材は通常、定尺で購入して必要な長さに切断します。 例えば、長さ「3.2m」の梁が2本必要な場合、合計6.4mになります。
    • もし「6.0m」の定尺しか在庫がない場合、6.0mを2本買う必要があり、大量の切れ端(端材)が無駄になります。
    • 「7.0m」の定尺があれば、1本買って切り出せるためコストが抑えられます。 このように、設計段階で「どの定尺からどう切り出すか(板取り)」を少し意識すると、コスト削減に繋がります。
  2. トラックの運搬限界(陸送の壁) :長い架台を設計する場合、分割せずに1本の長いH鋼で通した方が強度は出ますが、運送に制限がかかります。
    • 4tトラックで運びやすい長さは 約6m まで。
    • 10t(大型)トラックで運べるのは 約10m〜12m まで。 現場への搬入経路やエレベーターのサイズによっては、「強度は1本モノが良いが、運べないので2分割して現場でボルト接合する」といった設計判断が必要になります。

以上です。

 

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