モーター 発熱 冷却構造|密閉筐体で防塵性を維持し熱問題を解決する伝導放熱アプローチ

2026年9月2日

はじめに:密閉空間におけるモーター発熱の課題

自動機やFA設備の設計において、防塵・防滴(IP規格)を確保するために制御部やアクチュエータ部を密閉構造にするケースは多くあります。しかし、密閉空間内にサーボモーターを配置すると、空気の対流による放熱が期待できず、連続稼働に伴う熱の蓄積によってサーマルアラームが頻発するというトラブルに直面しがちです。

 

本記事では、ファン追加によるコスト・スペース増を回避し、構造のシンプルさを保ったまま熱対策を実現する「伝導放熱」を軸とした設計ノウハウを解説します。

ケーススタディ:密閉筐体でのモーター過熱トラブル

現場で発生した問題

  • 状況:防塵性を維持するため通気孔のない密閉筐体内にACサーボモーターを設置。
  • 現象:連続運転時にモーター表面温度が許容値を超え、頻繁にサーマルアラームが発報してラインが停止。
  • 設計の迷い:ファン+ダクトによる強制空冷を追加するか、熱伝導シートやヒートシンクによる自然放熱で対応するか。

 

サーボモーターの放熱メカニズムとカタログ仕様の前提

キーエンス、三菱電機、パナソニック等の一般的なACサーボモーターのカタログに記載されている連続定格トルクは、「規定サイズのアルミ放熱板(ヒートシンク)に締結された状態」を前提に定義されています。

 

密閉空間では周囲空気の対流熱伝達率が極めて低減するため、モーター内部で発生した熱(主に銅損・鉄損)の約7〜8割は、取付フランジ面を経由した熱伝導によって逃がす設計が基本原則となります。ファンやダクトの追加は部品点数とメンテナンス工数を増やす「足し算の設計」となるため、まずは構造そのもので逃がす「引き算の設計」を優先して検討します。

 

 

実務設計の勘所:熱伝導ルートの最適化と発熱抑制

1. 伝導パスの最適化(接触熱抵抗の極小化と外壁放熱)

密閉筐体内部で発生した熱を外気へ効率よく逃がすためには、モーターフランジから筐体外壁までの熱抵抗ルートを最小限に抑える必要があります。

 

  • ブラケット材料の選定:モーター取付ブラケットには、熱伝導率の高いアルミ合金(A5052:熱伝導率 約138 W/(m・K) など)の一体構造を採用します。
  • 接触面の熱抵抗低減:金属同士の接触面には微小な凹凸による空気層が存在し、断熱層となります。接触面に熱伝導シートやサーマルグリス(熱伝導ペースト)を塗布・挟み込むことで接触熱抵抗を大幅に低減できます。
  • 筐体フレームへの直接伝導:ブラケットから密閉筐体の外壁(外部に露出している金属フレーム)へ熱が連続して伝わる構造を構築することで、内部の気流に頼らず外気への放熱が可能になります。

 

2. 動作パターンの見直しによる銅損の低減

放熱対策と並行して、発熱源そのものを抑えるアプローチも実務上非常に効果的です。

 

モーターの発熱要因の大半を占める銅損(コイル発熱)は、電流の2乗に比例し、加速・減速トルクの2乗に強く依存します。タクトタイムに数パーセントの余裕がある場合、加減速時間(時定数)をわずかに伸ばして加減速Gを緩和するだけで、加減速時のピーク電流が抑制され、サイクル全体の発熱量を大幅に低減できます。

 

 

3. 実機(プロトタイプ)での温度測定検証

理論計算や熱流体解析(CAE)は有効な目安となりますが、実際の設備では接触面の締め付けトルクばらつきや周囲環境温度の影響を強く受けます。

 

試作段階において、熱電対やサーマルシール(示温材)をモーターフランジ付近、ブラケット、筐体外壁に貼り付け、連続定格運転時の飽和温度を実測検証することが確実な品質保証につながります。

 

 

まとめ

密閉環境下におけるサーボモーターの発熱対策は、ファンによる強制空冷に安易に頼るのではなく、取付フランジ面から筐体外壁への熱伝導ルートを強固に構築することが王道です。材料選定、接触熱抵抗の低減、加減速パターンの見直しを組み合わせることで、防塵性を完全に維持したまま、省スペースかつ低コストで安定した稼働を実現できます。

 

以上です。