ベアリングの固定側・自由側の決め方と配置|ロングシャフトの熱膨張トラブルを防ぐ設計基準

高温環境下で使用される長尺シャフトの軸受設計において、運転時の熱膨張対策は避けて通れない重要課題です。特に全長が1mを超えるような搬送用ロングシャフト(例:約1500mm)を深溝玉軸受で両端支持する場合、「駆動側(プーリ側)と従動側のどちらをアキシアル拘束の固定側にするべきか」「ベルト張力によるラジアル荷重の影響はどう考慮すべきか」という配置の判断に迷う設計者は少なくありません。

結論から申し上げますと、このような構成では「駆動側(プーリ側)」を固定側とし、「従動側」を自由側に設定するのが鉄則です。

本記事では、熱伸び量の基礎的な計算手順から固定側・自由側の明確な役割分担、そして現場で頻発する重大トラブルの回避策まで論理的に解説します。

固定側・自由側の選定基準と熱伸び量の計算プロセス

熱膨張量の計算(目安)

まず、運転時の温度上昇によってシャフトがどの程度軸方向に伸長するのかを定量的に把握します。

前提として、一般的な炭素鋼シャフト(線膨張係数 1.2 * 10^-5 /℃)、温度上昇を50℃(室温20℃から70℃への上昇)と仮定して試算します。

【計算式】
ΔL = α * L * ΔT

  • α:線膨張係数(1.2 * 10^-5 /℃)
  • L:軸長(1500 mm)
  • ΔT:温度変化(50 ℃)

【熱伸び量】
ΔL = (1.2 * 10^-5) * 1500 * 50 = 0.9 mm

全長1500mmの炭素鋼シャフトにおいて、50℃の温度上昇が生じると約1mm(0.9mm)軸方向に伸びます。もし両端の軸受を完全に拘束して軸方向の逃げを設けていない場合、この熱膨張によって軸受内部に過大なスラスト荷重が加わり、早期破損を招きます。

固定側/自由側の役割分担

熱膨張を吸収しつつ安定した回転を維持するため、以下の役割分担を行います。

  • 駆動側(固定側):プーリからの強いベルト張力(ラジアル荷重)を受ける側です。内外輪ともに軸の段差、ハウジング肩、止め輪などで軸方向(アキシアル方向)を完全に拘束します。もしここを「すきまばめ」にして逃がそうとすると、強いベルト張力によって外輪がハウジング内で傾き、軸受の偏摩耗や異音の原因となります。
  • 従動側(自由側):内輪は軸にしっかり固定(圧入または止め輪拘束)し、外輪とハウジングの間をすきまばめ(公差域クラスH7など)にして軸方向にスライドできるクリアランス(逃げ代)を設けます。これにより、シャフトが熱伸びを起こした際に従動側の外輪がハウジング内を滑って伸びを逃がします。

以下の構成イメージ(正面図・1:1の実寸比率、単位mm)を設計のベースラインとして確認してください。

駆動プーリ 固定側 自由側(逃げ) 熱伸び代

現場の最悪のシナリオ:自由側外輪の「抱きつき(固着)」による軸受圧壊

教科書通りの「従動側の外輪をすきまばめにして逃がす」という設計を行っても、実運用環境では思わぬトラブルが発生することがあります。若手設計者が最も警戒すべきリスクが、自由側外輪の「抱きつき(固着)」による軸受圧壊です。

固着が発生するメカニズム

深溝玉軸受の外輪をハウジング内で軸方向に滑らせる構造では、以下の要因が重なると外輪がハウジングにスティック(固着)します。

  1. 運転時の軸とハウジング、軸受内外輪の温度差によって、嵌め合いすきまが減少する。
  2. 従動側にかかるラジアル荷重や回転振動によって微小なフレッティング摩耗が発生し、外輪とハウジング内周面が引っかかる。

この結果、熱膨張の逃げ場が完全に失われ、約1mm伸びようとするシャフトの熱応力によって軸受内部に巨大なアキシアル突っ張り力が作用します。深溝玉軸受の軌道面が押し潰され、短期間で異常発熱、剥離、最終的には早期焼き付きへと至るのが現場における最悪のシナリオです。

トラブルを根本排除する2つのプロの回避策

1. 円筒ころ軸受(NU形)への置換

最も信頼性が高く恒久的な対策は、自由側の軸受を「深溝玉軸受」から「円筒ころ軸受(つばなしNU形)」に変更することです。

NU形円筒ころ軸受は、外輪につばがあり内輪につばがない(またはその逆の)構造を持っています。軸受内部の「軌道輪ところの間」でアキシアル変位を完全に逃がすことができるため、外輪をハウジング内で物理的にスライドさせる必要がありません。外輪も内輪もしっかりと固定(しまりばめ)できるため、外輪の傾きや抱きつきリスクを原理的に排除することが可能です。

2. C3すきま(ラジアル内部すきま大)の選定

コストや取り付けスペースの制約により、どうしても自由側も深溝玉軸受のまま設計を進める必要がある場合は、必ず「C3すきま(普通すきまより大きい内部すきま)」を指定してください。

高温環境下ではシャフト(内輪)の温度がハウジング(外輪)よりも高くなりやすく、内部すきまが狭まる方向に作用します。あらかじめC3すきまを選定しておくことで、温度上昇時にも軸受内部に適正なすきまを残し、突っ張りによる過大な予圧付加と焼き付きを抑制できます。

まとめ

長尺シャフトの軸受配置と熱膨張対策における重要ポイントは以下の通りです。

  • 配置の原則:ベルト張力等のラジアル荷重を受ける「駆動側(プーリ側)」を固定側とし、「従動側」を自由側にする。
  • 熱伸びの把握:全長1500mm・50℃上昇で約0.9mmの伸びが発生するため、逃げ代の確保が不可欠。
  • 固着トラブルの防止:外輪のスライド構造に頼る深溝玉軸受は抱きつきリスクがあるため、根本対策として「円筒ころ軸受(NU形)」の採用、または「C3すきま」の適用を検討する。

実際の装置条件や周囲温度分布によって熱影響は変化します。理論値による設計検討を行った上で、必ず実機プロトタイプによる温度上昇試験および熱伸び追従性の検証を実施してください。