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【設計目線】エアシリンダ故障現象と故障させない設計方法メモ

2024年2月4日

今日は 「設計目線で見たエアシリンダ故障現象と故障させない設計方法メモ」 についてです。

 

※この記事は

  • エアシリンダが壊れた原因を模索している人
  • 一定の場所でエアシリンダが頻繁に故障するので設計変更を検討している人

に向けて記事を書いています。

 

エアシリンダは、供給するエアの量が適切で、きれいな空気、適切な給油、そして シリンダ内部構造がコジることなく動作している場合のみ適切に動作 します。 そしてエアシリンダの寿命は、使用条件、負荷、環境、メンテナンスの頻度など多くの要因に依存しますので具体的な寿命を一概に述べることは難しいですが、一般的にエアシリンダは数年から数十年の範囲で使用されます。

 

エアシリンダの寿命は 設計次第で決まるといって過言ではありません。

 

実際、何か不具合が出たときには ①供給エアの確認 ②流量調節機器の確認 ③エアシリンダ単体の確認 の3つが必要になり、中でも頻繁に動くエアシリンダ単体の故障が多くみられるかと思います。

 

エアシリンダ単体の問題で起きる現象 は大きく分けて 2の現象(出力の低下・ロッドスティックなどの動作不良) で確認が取れる んですが、 この記事では エアシリンダ単体の不具合から考えられる故障原因と出来るだけ故障させない設計方法メモ しておきます。

 

設計初心者の方はもちろん、扱いに慣れている設計者でも見落としがちになるポイントをメモしていますので、長期運転が可能な機械設計の為に是非参考にしてださい。

① エアシリンダ単体の故障現象と故障内容

先にも書きましたが、エアシリンダ単体が起因で起きるの故障現象は2つで、出力不足とロッドスティックになります。

 

  • 出力不足:押す力が無く、エア漏れしている
  • ロッドスティック:シリンダロッドが途中で止まってしまう、急に動き出す

 

となりますが、それらの説明をしていきます。

 

 

①-1 出力不足:押す力が無く、エア漏れしている

出力不足が考えられる場合のチェックフローとして エアシリンダ単体の状態を把握する前に

 

  1. 供給側の圧力が設定値で問題がないか
  2. 接続継手が正しく接続されているか

 

を先に確認してください。 上記2項目に問題がなく、単純に出力が不足している(不足してきた)場合は シリンダ内部のパッキンの劣化・変形などによるエア漏れ が考えられます。

 

エアシリンダにはパッキン位置が2ヶ所あり、

  • ピストンロッド部からのエア漏れ(ロッドパッキンのエア漏れ)
  • ピストンロッド部以外からのエア漏れ(ピストンパッキンのエア漏れ)

この2点からのエア漏れが考えられ、どちらかのエアが漏れても 出力の低下が現象として現れます。

 

 

①-1-1 パッキン故障は2種類(劣化と摩耗)

パッキンの故障が起きる原因は、単純な劣化と摩耗になります。

 

パッキンの劣化判断が難しいのが実際ですが、経年劣化よりもシリンダ内部の給油状態に大きく影響を受けることがほとんど なので、内部の給油が切れた状態でパッキンが擦れ、摩耗した状態を劣化を勘違いする方も多いです。 そして、ここの判断は以下3パターンに絞られると考えています。

 

  1. 無給油タイプのエアシリンダに初期に封入してあるグリスが切れてパッキンが摩耗した(メカ的な異常がない場合寿命と思われる)
  2. 給油タイプのエアシリンダへの給油が不十分でパッキンが摩耗した(※ルブリケータの油量確認する)
  3. 無給油タイプのエアシリンダへ給油していて初期に封入して合ったグリスが飛ばされパッキンが摩耗した(エア回路見直し)

 

です。

 

ルブリケータとは

ルブリケータとは エア回路(管路)に設置する給油構造を持った給油用の機器。 無給油タイプのエアシリンダには初期グリスが封入してあるのでルブリケータは不要ですが、給油タイプには必要な機器 のため、エアシリンダの種類によって回路を使い分ける必要があります。

 

この時注意してほしいのは、無給油タイプのエアシリンダにルブリケータで給油をすると元々充填してあるグリスが取れ劣化を進めることになってしまう事 です。

 

 

 

①-1-2 グリス切れの応急処置

グリスが今回のパッキン故障(エア漏れ)に大きく影響していると判断された場合は、機械組立技術者さんが情報提供している 吸排気ポートからシールへのグリス塗布(延命処置)を試してみるのも良いと思います。

 

 

 

①-2 「シリンダロッドが途中で止まってしまう、急に動き出す」は偏荷重の影響が大きい

油やグリス飛びではないのにパッキンからのエア漏れが起きる場合は、パッキンに物理的負荷が掛かっているかもしれません。

 

 

①-2-1 ロッド先端はフローティングになっているか確認

エアシリンダの駆動は 圧縮エアをピストンパッキンとロッドパッキンで密閉し、そのパッキンにガイドされて中のピストンが動きます。その為、エアシリンダのロッドに少しでも横方向の力が加わっているだけで、パッキンに応力が掛かり早期に摩耗します。

 

まずはロッドに対してどのような負荷が想定されるか再度確認 をしましょう。

 

また、エアシリンダの周辺機器で フローティング機能を持ったアイテムが売られています。 そのフローティングジョイントは、エアシリンダの取り付け誤差を吸収し、シリンダのピストンロッドと装置の連結部分における不必要な力を軽減するための部品となります。

 

フローティングジョイントはある程度の取り付け誤差を吸収できますが、取り付け誤差の許容範囲を超える場合は、シリンダ本体の正確な取り付け位置の調整が必要となり、一体型やセパレートタイプなどフローティングの製品によって特有の要件がありますので、取扱説明書やメーカーの指示に従って正しく取り付けているかを確認する必要があります。

 

フローティングジョイントが入っている=シリンダ取付は適当で良い は間違いで、  シリンダ取付は直線的になるよう配慮して設計したが、ごくわずかな誤差を吸収するためにフローティングジョイントを入れた。 これが使い方として正しいです。

 

 

①-2-2 異物や曲がり等でロッドに傷がついていないか確認

その他、ピストンロッド部に異物が付着し、パッキンが摩耗してエア漏れが生じることもあります。 エアシリンダのロッドは傷が有ってはいけないものですが、組立作業中の傷、機械の干渉、メンテナンスミス、設置環境によって傷がつくことがあります。

 

 

② エアシリンダを使った設計で故障を最低限にするために出来ること

これまで話してきた故障内容から、エアシリンダの故障を避けるために出来ること は以下の通りです。

 

  • ロッドに駆動方向以外の負荷が極力掛からないように設計する(パッキンに負荷を掛けない)
  • フローティングを壊さない構造にする(フリーティングジョイントを入れた=安全 ではない)
  • 初期から高耐久品を利用することを検討する

 

です。

 

 

②-1 ロッドに駆動方向以外の負荷が極力掛からないように設計する

今ではガイド付きエアシリンダの種類も多く、昔のように別でガイドを構築する機会も減りました。 しかし、大切な感覚として いくらガイド付きでもガタがある というのを忘れてはいけないと思います。

 

ガイド付きシリンダの場合、負荷モーメントによってロッドが曲げられる力がガイド部品に加わり、それがいずれ摩耗してガタが大きくなり、その大きいガタがいずれシールを偏摩耗させることに繋がります。 ですから、設計者としては ガイド付きシリンダでもそこに大きく負荷が依存する場合は別のガイドを設けるという手段は長寿命を考えたら必要な判断 だと思います。

 

これは私の個人的な思考ですが ガイド付きエアシリンダを使うと楽な場所 では

 

  • 横荷重が想定より大きかったらどうしよう?(別ガイドで設計すれば後で変更が利くからそうしよう)
  • 横荷重を考えると、押し付けたい力は大して必要ないのにガイド付きシリンダのサイズが大きくなってしまうなぁ(別ガイドで設計すれば機能を分けられるからそうしよう)

など、ガイド付きだから楽 という事で個別の問題(課題)を浅く考えるのが良くないです。 押す機能が必要なら押すことに集中できる構造にする、ガイドさせたいならガイドに特化した構造を採用する などの切り分けがとても重要 です。

 

 

②-2 フローティングを壊さない構造にする

次にフローティング機構についてです。 フローティングは先に話した通り、正しい使い方をします。

 

そして、フローティングを入れる場合の注意点として エンドユーザー側で触れないように配慮する という事も重要です。  エンドユーザー側で触る必要がない場合は基本的に触らないのですが、 微調整を有するものはその調整部を触られてしまう可能性 があります。 問題となるのはその時に調整してはいけない部分(機械提供側では知っているがユーザーは知らない)を調整してしまい、固着させてしまう事でロッドがパッキンに強烈な負荷を与え故障を起こします。

 

フローティング機構には大きく分けて2種類(一体型・セパレートタイプ)がありますが 中でも一体型フローティングは要注意です。 このような可能性がある場所は フローティングは調整できないセパレートタイプを使い、別途調整機構を設けるなどの配慮があると良い と思います。

 

この 設計はマニアックな対応ではありますが大切な考え です。

 

 

②-4 初期から高耐久品を利用することを検討する

お客様によっては初期の段階(仕様書の段階)から指定を受けて利用することがありますが、高耐久機器HPシリーズ(CKDさん) は選定当初から導入すべきアイテムかもしれません。

 

このアイテムは

  • パッキン・グリスの最適化:耐摩耗性パッキンと高頻度対応のグリースを採用し安定稼働を実現している。
  • 摺動部の最適化:これにより従来比4倍以上、2千万回以上の耐久性を実現している(通常エアシリンダは500万回程度が寿命とのこと)

です。

 

また、上記までの 設計が適切に出来ている機械に高耐久品を使う事でより寿命を延ばすことが可能 になると思います。

 

 

②-5 万が一に備え故障の予兆が解るようにしておく

故障を最低限にする という目的とはズレますが、故障してから交換では遅い という事もありますので、個人的なオススメとして エア漏れを検知する流量計 を回路のどこかに設置すると良いと思います。 今はクランプオン(配管・チューブ)に直接後付け出来るものがあって便利です。

 

 

最後に

エアシリンダのメンテナンスやトラブルシューティングに関しては、具体的な問題や状況に応じて、メーカーにアドバイスを直接求めるのが最も確実な方法ですが、普通に考えても経験的にもエアシリンダの寿命を早期に迎える理由はこちらの不適切な設計や使用方法が原因となっていることが多い(苦笑) です。

 

以上です。

 

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