ここでは「トグルクランプの使い方と設計で利用する時のポイント」をメモしています。
設計者がトグルクランプを使うにあたっての前提知識、設計上知っておくべき内容をまとめています。
トグルクランプについて
トグルクランプの用途
トグルクランプは、レバー機構(リンク機構)を利用して「対象物」を主に手動で確実に固定する可動型の工具です。
エア源の無い環境、電気を使えない環境において多く利用されるんですが、トグルクランプはコンパクトなのに強力なクランプ力を発揮するので 金属加工でのワーククランプ、加工時の安全確保クランプ、溶接治具、組立補助工具として有効です。
ちなみに、トグルクランプの「トグル(toggle)」とは、リンク機構(レバー機構)を利用して動きを伝達し、少ない力で大きな固定力を発揮する仕組みを指します。
トグルクランプの特徴(箇条書き)
トグルクランプの特徴は以下を理解しておけば良いです。
- 少ない力レバーを倒すと大きな固定力を発揮できる。
- 一定の角度を超えると「デッドポイント(死点)」に達し、外部からの力が加わっても簡単に外れない。
- 手動で素早く固定・解除が可能
特徴として特に利用される目的の一つは上記にある「外部からの力が加わっても簡単に(ほぼ)外れない」という特徴です。 但し、リンク機構ですので精密機器と違ってガタがあることを忘れてはいけません。
トグルクランプの動き
トグルクランプの動きは ミスミ公式チャンネル にある動画が把握しやすいです。
トグルクランプの種類
トグルクランプの種類には以下があります。
- 水平ハンドルタイプ:ハンドルが水平に動くタイプで、省スペース設計
- 垂直ハンドルタイプ:ハンドルが垂直に動き、より強い固定力を発揮
- プルアクション(引き型):ワークを引っ張る形で固定(例:型締めなど)
- プッシュアクション(押し型):押し込む力で固定(例:位置決め時)
具体的な形状は イマオさんのトグルクランプ もしくは ナベヤさんのトグルクランプ または ミスミさんで「トグルクランプ」で検索。
設計のポイント
トグルクランプの選定方法
トグルクランプを選定する際の選定順序は以下となります。
- 適切なクランプ力(保持力)で選定する
- 作業上適切なクランプが出来る形状を選ぶ(縦型・水平・押し付けなど)
- 使用環境で材質を選ぶ(スチール製=一般的、ステンレス製=湿気や薬品を扱う環境向け など)
- 操作しやすいハンドル形状:グリップの握りやすさや操作性を確認。
- ストロークやクランプの開き角度の確認をする(ワークをスムーズにセット・取り外しできるか)
- 固定できるワークの厚さや高さに合っているか確認する
トグルクランプの選定も、他の設計と同じで、用途・クランプ力・ワークサイズ・取付方法・材質・安全性を考慮することが必要になってきます。
締め付け力の考え方
トグルクランプの締め付け部は、一般的にはゴムの付いた位置調整が可能なボルトが付属していて、この位置が
- 本体に近い=締め付け力が大きい
- 本体から遠い=締め付け力が低い
- 押さえ位置がクランプに近い(ボルト突き出しが短い)=締め付け力が大きい
- 押さえ位置がクランプより遠い(ボルト突き出しが長い)=締め付け力が小さい
となっていて、カタログの締め付け力は最大値が記載されています。 詳しくは 角田株式会社さんの「トグルクランプハンドブック」 が参考になりますので是非ご確認を。
締め付け以外での利用について
トグルクランプは ワークに接触してからさらにハンドルを押し込んデットポイントを越えた所で押し付ける ので ワークに無負荷接触した状態からねじを長くする=押し込むように調整すると締め付け力は増し、ねじを短くすると押し付け力は弱くなり、接触しなければ押し付け力は発揮しません。
つまりこの 数ミリのハンドル角度でロックするかしないかが変わる んですが、例えばそのデットポイントを越えた状態(リンクがロックしている状態)だとワーク側から押し戻そうとしても基本的には戻りません。 それを利用して押し付けずに当てているだけのトグルクランプ利用もたまに見かけますが、落下を伴う場所でのそのような利用は危険ですのでしてはいけません。(そもそもクランプ出来ていないのでワークが固定されていない上にハンドル側も容易に戻ってしまうため)
トグルクランプの先端形状について
トグルクランプの押しつけ部は位置調整が出来、尚且つ分解も出来る為先端を付属品ではなく協議の上オリジナルで製作して使う場合もあります。 一般艇にゴム付のねじが付属されていますが、これも先端がゴムであると 締め付け力はカタログ値の半分が目安 となります。
トグルクランプの周辺設計
トグルクランプは機能としてコンパクトな割に高出力(高いクランプ力)を発揮するので、設計上コンパクトに出来るけれど、作業上は小さめの印象を与えることがあります。 それによってクランプ作業がし辛く、現場としてはイマイチになることも考えられるので、クランプ力だけを意識をせずに、作業もしやすいサイズに変える(ハンドルの延長など)ことも視野に入れて周辺スペースは取っておくと良いです。
使用・運用上の注意点
以下、私の経験上の設計の段階で織り込める事故防止などがあれば適用すると良いと思っている項目です。
- 指を挟まないように注意:クランプを操作する際、ハンドルや可動部分に指を挟まむ危険性がある
- ワークの安定性を確認:固定する前にワーク(加工物)がしっかり設置されているか確認する必要がある。
- 適正な力で締める:過度な力で締め付けるとワークやクランプ自体を損傷する恐れがある。
- 負荷のかかる方向を考慮する:加工時の振動や力の方向を考えて適切なクランプ位置を決める。
- 固定部の締め付けを定期的に確認:ボルトやネジが緩んでいないかチェックし、必要に応じて締め直しが必要。
- クランプの可動範囲を確保する:ハンドルやバーが障害物に当たらないように配置する。
- クランプの最大保持力を超えない:過負荷をかけると変形や破損の原因になる。
- 定期的に清掃する:ホコリや切削くずが溜まると動作が悪くなるため、清掃を行う。
- 長期間使用しない場合は保管方法に注意:湿気の少ない場所で保管し、錆びないようにする。
トグルクランプの類似品
最後に、トグルクランプの機能「コンパクト・手動(工具レス)・強力クランプ」で類似する工具をメモしておきます。 下記3社のアイテム把握しておくと良いです。 設計に応じて最適なものを選定してください。
- イマオコーポレーション:ワンタッチクランプ
- ナベヤ:レバークランプ
- カクタ:バリクランプ(溶接型式トグルクランプ)、デュアルクランプ
- BESSEY(ベッセイ):トグルクランプ(厚さ調整が必要なくすばやく簡単に締め付け)
以上です。