ベアリングの呼び番号と形式記号の読み方|初心者向けにシールの違いと軸受設計の勘所を徹底解説

搬送コンベアなどの回転軸を設計する際、図面に記入するベアリングの型番で「6204ZZ」と「6204-2RS」のどちらを指定すべきか迷った経験はないでしょうか。カタログに並ぶ英数字の記号は、一見複雑に見えますが、規則性を正しく把握すれば瞬時に防塵性・許容回転数・寸法を読み解くことができます。

結論から言えば、一般的な搬送コンベアの回転速度域(数十〜数百rpm)であればシールの接触抵抗による許容回転数低下は全く問題にならず、現場のチリや異物混入を防ぐ「両側接触ゴムシール形(2RS / DDU / LLU)」を選定するのが実務上の定石です。

本記事では、初心者エンジニアに向けてベアリングの呼び番号・形式記号の読み方、シール仕様の選定基準、回転数計算を解説した上で、現場で頻発する「軸の熱膨張による軸受破損トラブル」を防ぐ構造設計の勘所まで詳しく紹介します。

駆動軸ユニットの基本構造イメージ

まずは、今回想定するコンベア駆動軸周りのアセンブリ構成を確認します。軸径φ20mm、外径φ47mm、幅14mmの代表的な深溝玉軸受「6204」を用いた「固定・自由」構成の正面断面図です。

軸受1 (固定側) 軸受2 (自由側) コンベア駆動プーリ (φ100) 駆動入力軸

ベアリング呼び番号・形式記号の基礎知識

深溝玉軸受の型式は、主要寸法を表す「基本番号」と、シールド構造や精度・すきまを表す「補助記号」で構成されています。

型番記号の読み解き方(6204を例に)

「6204」という基本番号は以下の3つの要素に分解できます。

  • 「6」:軸受系列記号
    単列深溝玉軸受を示します。
  • 「2」:寸法系列記号
    直径系列「2」を示します(外径寸法の大きさグループ)。
  • 「04」:内径番号
    「04」以降は数値を5倍したものが内径(mm)になります。04 × 5 = 内径φ20mm。
    ※「00=φ10mm」「01=φ12mm」「02=φ15mm」「03=φ17mm」の4種類は例外の固定値となります。

補助記号(シールド・シール形式)の比較

補助記号は、軸受の防塵性・防水性と摩擦抵抗(許容回転数)のトレードオフを決定づける最重要ファクターです。

① 金属シールド形(両側シールド:ZZ または 2Z)

  • 構造:薄い鋼板を外輪に固定し、内輪シール面とは微小な隙間を保つ「非接触」構造。
  • 摩擦トルク:極めて小さい(開放形とほぼ同等)。
  • 防塵性:比較的良好だが、隙間があるため微細な粉塵や液体の侵入は防げない。
  • 許容回転数:高い(グリース潤滑時で約15000〜18000 rpm程度)。
  • 主な用途:一般産業機械、モータ内部、クリーンで乾燥した一般的な搬送ライン。

② ゴムシール接触形(両側接触ゴムシール:DDU または 2RS / LLU)

※メーカーにより呼称が異なり、NSKはDDU、NTNはLLU、JIS規格・海外メーカー等は2RSと表記されます。

  • 構造:合成ゴムのリップが内輪のシール溝に直接軽く接触している「接触」構造。
  • 摩擦トルク:リップ接触抵抗があるため、シールド形よりやや大きい。
  • 防塵・防水性:極めて優れる。外部からの粉塵や水滴の侵入を強力に防ぐ。
  • 許容回転数:接触摩擦による発熱があるため、ZZに比べて約50〜60%に低下(約9000〜11000 rpm程度)。
  • 主な用途:屋外、粉塵の舞う環境、水滴・切削油がかかる環境、食品・粉体搬送ライン。

③ ゴムシール非接触形(両側非接触ゴムシール:VV または 2RZ / LLB)

  • 構造:ゴム製だがリップが内輪と接触しない構造。
  • 特徴:ZZと同等の低トルク・高速性を持ちながら、ラビリンス効果によりZZよりわずかに防塵性が向上。

コンベア駆動軸における回転数とスペックの照合計算

実際の設計現場では、「ゴムシール接触形(2RS/DDU)を使うと許容回転数が落ちるが大丈夫か?」という懸念が生じます。実際の搬送コンベア条件から軸回転数を算出して照合します。

[仕様前提条件]

  • コンベア搬送速度: v = 30 m/min = 0.5 m/s
  • 駆動プーリ径: Dp = 100 mm = 0.1 m
  • プーリ周長: L = π * Dp = 3.1416 * 0.1 = 0.314 m

[軸回転数の算出]

回転数 N = v / L
N = 30 / 0.314 = 約95.5 rpm

[選定の判断]

  • 接触ゴムシール形(DDU / 2RS)の許容回転数限界:約9500 rpm
  • 実際の回転数:約96 rpm
  • 回転数マージン:96 / 9500 = 約1%(許容値に対して圧倒的に低速)

搬送コンベアの速度域において、接触ゴムシールの回転数制限に引っかかることはまずありません。トルク損失もモータ容量から見れば微小です。段ボール粉やホコリが舞う現場環境では、異物混入による早期摩耗を防ぐため、迷わず防塵性の高い「接触ゴムシール形(DDU / 2RS)」を選定するのが実務の定石となります。

現場の最悪シナリオ:熱膨張による「両端軸受の突っ張り」と回避策

ベアリングの型番選定と並び、若手設計者が必ず知っておくべき現場の重大トラブルが「軸の熱膨張によるベアリングの焼損」です。

若手が見落としがちな最悪のシナリオ

コンベア駆動部で最も陥りやすい設計ミスが、「両側の軸受を両方とも段付きシャフトとハウジングでガチガチに軸方向拘束してしまう」構造です。

深溝玉軸受は主にラジアル荷重を受ける軸受であり、許容できるアキシアル方向の内部隙間(遊び)はわずか数ミクロン〜十数ミクロンしかありません。

夏場の室温上昇、モータや減速機からの伝熱、あるいは連続運転による自己発熱によって、長尺の鋼製シャフト(例えば長さ500mm〜1000mm)は軸方向に熱膨張します。もしシャフト両端のベアリング内輪・外輪がともにアキシアル方向に逃げ場のない状態で固定されていると、膨張したシャフトがベアリング内輪を外側へ強烈に押し広げます。

その結果、軸受内部の玉に巨大なスラスト荷重が常時加わり、異常発熱、軌道面の早期剥離、最終的には軸受の焼き付きロックやシャフト折損という最悪のライン停止事故に至ります。

熟練プロの具体的回避策と勘所

① 「固定側(Fixed)」と「自由側(Free)」の明確な役割分離

2個の軸受で軸を支持する場合、必ず片側を位置決め用の「固定側」、もう片側を伸び逃がし用の「自由側」として設計します。

  • 固定側(駆動入力側など):内輪はシャフト段差とサークリップ(止め輪)等で挟み込み、外輪もハウジングの段差とフタで完全に軸方向固定します。
  • 自由側(反駆動側):内輪はシャフトに固定(または軽い圧入)しますが、外輪とハウジングの間には「すきまばめ(H7公差に対し外径公差h6〜g6相当のガタ、またはハウジング側をすきま公差にする)」を設定し、外輪がアキシアル方向に数ミリ自由にスライドできるように逃げを設けます。

② 自由側のハウジング深さマージンと熱膨張量計算

自由側のハウジングは、ベアリング外輪の端面に対して必ず「0.5〜1.0mm以上の軸方向クリアランス(逃げ隙間)」を確保し、フタ等で締め込まない構造にします。

熱膨張量の計算目安は以下の通りです。

熱膨張量 ΔL = 線膨張係数 α * 軸長 L * 温度上昇 ΔT
(鋼の線膨張係数 α = 1.2 * 10^-5、軸長 L = 500mm、温度差 ΔT = 30℃ の場合: ΔL = 1.2 * 10^-5 * 500 * 30 = 0.18 mm)

このわずか0.18mmの伸びであっても、ベアリングのアキシアル内部隙間(数ミクロン)を遥かに超えているため、ハウジング内で吸収できなければ確実に破損します。

③ シャフトの段付き・Oリングの併用テクニック

粉塵や水分が懸念される環境では、ベアリング自体のシール(2RS)だけに頼らず、ハウジング外側にオイルシールを追加するか、軸受直前の段付きカラーにOリングを仕込んで軸伝いの浸入を二重で遮断する「多段防御」を施します。現場の保全性を飛躍的に高める実務テクニックです。

まとめ

ベアリング型番の読み解きと軸受構造設計の重要ポイントは以下の通りです。

  • 基本番号の「6」は単列深溝玉、「2」は外径系列、「04」は内径20mm(×5ルール)を表す。
  • 補助記号「ZZ」は非接触で低トルク・高速向け、「2RS / DDU / LLU」は接触式で高防塵・防水向け。
  • 低中速の搬送コンベアでは許容回転数の低下は問題にならず、接触ゴムシール形(2RS/DDU)の選定が定石。
  • 軸受支持は必ず「固定側」と「自由側」を設け、熱膨張によるアキシアル荷重の突っ張り・焼損を防止する。

図面に型番を1行記載するだけでも、周囲環境、回転速度、そして熱膨張を逃がす機械構造との整合性を考慮することが、信頼性の高い設計の第一歩となります。実機製作時には必ずプロトタイプでの回転確認と検証を行ってください。