【エアシリンダのタクトタイム計算】複数動作におけるセンシング余裕時間の見積もりと短縮の勘所

 

複数のエアシリンダを順番に動作させる工程の設計において、タクトタイムの算出方法に迷っていませんか?

 

たとえば「3つのシリンダを順に動かす場合、それぞれの動作時間が0.5秒なら、合計1.5秒のタクトタイムで計画する」といった理論上の足し算だけで設計を進めると、現場での立ち上げ時に確実にタクトオーバーで苦しむことになります。

 

本記事では、複数エアシリンダのタクトタイムにおける具体的な計算手順と選定の勘所をケーススタディとして解説します。S-TECの設計思想に基づき、実務ですぐに使える実践的なノウハウをお届けします。

複数エアシリンダのタクトタイム計算プロセス

なぜ動作時間の単純合算ではダメなのか?

エアシリンダをインターロックを取りながら順番に動かす場合、純粋なストローク時間(動作時間)だけでなく、各動作の前後に必ず「センシング・余裕時間」を見込んでおく必要があります。一般的に、1動作あたり0.2〜0.5秒程度の余裕時間を見込むのが実務のセオリーです。

 

 

センシング・余裕時間の内訳

余裕時間には、主に以下の3つの物理的・制御的要因が含まれます。

  • オートスイッチの検出とチャタリング防止(0.05〜0.1秒) シリンダが端点に到達してオートスイッチがONしても、メカのバウンドによるチャタリングを防ぐ必要があります。PLC側で0.05〜0.1秒程度のオンディレイタイマーを入れるのが確実です。
  • 電磁弁の応答遅れとエアの充填遅れ(0.05〜0.1秒) PLCから出力信号が出てから電磁弁のスプールが切り替わり、配管を通ってシリンダ室内の圧力が立ち上がるまでに、0.05〜0.1秒前後のタイムラグ(むだ時間)が発生します。
  • ワークの挙動安定待ち(0.1〜0.2秒) ワークをクランプしたり押し当てたりした直後は、慣性による揺れやたわみが発生します。これらが収まるのを待つ「落ち着き時間」として、0.1〜0.2秒ほどが必要です。

 

ケーススタディ:現実的なタクトタイムの試算

「動作時間がそれぞれ0.5秒のエアシリンダを3つ順番に動かす」というケースで、現実的なタクトタイムを試算します。

1. 標準的な余裕時間(0.3秒)を見込む場合

  • 1シリンダあたりの所要時間:0.5秒 + 0.3秒 = 0.8秒
  • 3シリンダ合計のタクトタイム:0.8秒 × 3 = 約2.4秒

2. 限界まで詰めた最小余裕時間(0.2秒)の場合

  • (0.5秒 + 0.2秒) × 3 = 2.1秒

3. 安全側に余裕(0.5秒)を持たせる場合

  • (0.5秒 + 0.5秒) × 3 = 3.0秒

結論として、このケースの基本計画としては2.1秒〜2.5秒程度を見込んでおくのが安全な設計と言えます。

 

 

プロの設計者が教える実務設計の勘所

設計上、どうしても要求タクト(この例では1.5秒など)に近づけなければならない場面は多々あります。その際、単純にシリンダの速度を上げるだけでは周辺機構にダメージを与え、かえってチョコ停の原因になります。以下のポイントで設計を最適化してください。

  • 動作のオーバーラップ(並行動作)による時間短縮 前工程のシリンダが完全に戻りきるのを待つ必要はありません。干渉領域を抜けた位置(中間センサの活用など)で、次のシリンダを起動できないか動作シーケンスを見直します。
  • スピードアップ時の衝撃対策と加速度(G)管理 スピコンを開けてシリンダ速度を上げる場合、急停止による衝撃でワークがズレたり、設備全体が振動したりする罠があります。一般的に、搬送物の加速度は0.2G〜0.5G程度(精密部品や不安定なワークなら0.1G以下)に抑えるのが目安です。高速化が必須の場合は、クッション付きシリンダやショックアブソーバの追加を必ずセットで設計に組み込んでください。

 

まとめ

複数シリンダのタクト計画では、理論上の動作時間に加えて、電気的・空圧的・機械的な遅れを考慮した余裕時間の見積もりが不可欠です。

  • 各動作に0.2〜0.5秒の余裕時間を足して計算する。
  • タクト短縮は「速度アップ」だけでなく「動作のオーバーラップ」も検討する。
  • 高速化する場合は、加速度管理と衝撃吸収メカニズムをセットにする。

実際のタクトタイムは、配管長、継手の絞り、エア供給圧力の変動、負荷の慣性など、現場の環境要素に大きく左右されます。机上計算はあくまで理論上の目安として捉え、装置の設計段階では適度なマージンを持たせた上で、必ず実機(プロトタイプ)での動作検証を行って最終タクトを確定させましょう。

 

以上です。