面圧(めんあつ)とは
面圧とは、2つの物体が接触している面に垂直に作用する単位面積あたりの力(接触圧力)のことです。国際単位系(SI)ではパスカル[Pa]またはメガパスカル[MPa]、工学単位系では[N/mm²]や[kgf/cm²]で表されます。実務上は「1 N/mm² = 1 MPa」として扱うのが一般的です。
機械設計において、面圧の検証は部品の変形、摩耗、焼き付き、陥没(へたり)を防ぐために欠かせない極めて重要な強度評価項目です。
面圧の計算方法
面圧の基本的な計算式は以下の通りです。
P = F / A
- P:面圧[MPa](または[N/mm²])
- F:接触面に垂直に作用する荷重[N]
- A:接触面積[mm²]
ヘルツの接触面圧(曲面接触の場合)
平面同士の接触であれば上記の見かけの面積で計算できますが、ベアリングの転動体と軌道面、あるいは歯車の噛み合い部のように「点接触」または「線接触」となる部位では、接触部が局所的に弾性変形して微小な接触面が形成されます。この局所的な最大面圧を求める計算には「ヘルツの接触応力(Hertzian contact stress)公式」を用います。
「応力」「圧力」との違い
面圧、応力、圧力はいずれも単位が同じ[MPa]であるため混同されやすい概念ですが、機械工学上は明確に区別されます。
- 面圧(Contact Pressure):固体同士が接触する「境界面」に発生する単位面積あたりの圧縮力。主に部品表面の損傷やへたりを議論する際に用います。
- 応力(Stress):外力を受けた物体の「内部」に生じる抵抗力(引張応力、圧縮応力、せん断応力など)。部品全体の破損や塑性変形を議論する際に用います。
- 圧力(Pressure):流体(気体・液体)が接触面を押す単位面積あたりの均一な力。
機械設計における許容面圧の選定と重要部位
設計時は、発生する面圧が相手材の「許容面圧(許容接触応力)」以下に収まるように設計します。許容面圧を超えると、早期摩耗やかじり、塑性変形などのトラブルが発生します。特に以下の部位で面圧検討が必須です。
- ボルト・ナットの座面:締結力によって座面が相手部材にめり込む「座面陥没」を防ぐため、母材(特にアルミ合金や樹脂)の許容面圧を確認します。
- 軸受・ブッシュ(すべり軸受):軸とブッシュの投影面積から面圧を算出し、許容値(PV値)の範囲内に収めます。
- キーおよびキー溝:トルク伝達時にキー側面にかかる面圧を評価し、キー溝の塑性変形を防ぎます。
- 歯車(ギヤ)の歯面:ピッチ点付近のヘルツ面圧を算出し、ピッチング(疲労剥離)を防止します。
現場の実務における注意点とトラブル対策
1. 面粗さと「真実接触面積」の影響
図面上の接触面積(見かけの接触面積)が広くても、微視的に見れば表面の凸凹同士が点接触している状態(真実接触面積)です。加工面の面粗さが粗い場合、局所的なピーク面圧が材料の降伏点を超え、初期摩耗やかじり(スカッフィング)を引き起こします。摺動部では適切な表面粗さ(Ra、Rz)の指定と、なじみ運転の考慮が必要です。
2. 片当たり(偏荷重)の発生リスク
設計計算上は均一な面圧分布を想定していても、加工公差、組み付け誤差、軸のたわみなどによって「片当たり」が生じることが多々あります。局所的に過大な面圧が加わると早期破損につながるため、クラウニング加工(端部の逃がし)を施す、当たり調整用のシムを設ける、自動調心機構を採用するなどの対策が実務では重要です。
3. 相手材硬度と潤滑状態
許容面圧は材料の硬度に強く依存します。高面圧環境下では、相手材の硬度を高める熱処理(高周波焼入れ、浸炭焼入れなど)や表面処理(無電解ニッケルめっき、DLCコーティング)を検討します。また、潤滑油が面圧によって押し出されて油膜切れを起こさないよう、適切な粘度の潤滑剤や極圧添加剤(EP添加剤)入りの油種を選定してください。