強度区分とは
強度区分(きょうどくぶん)とは、主にボルトや小ねじなどの締結部品が持つ機械的性質(引張強さや降伏点など)を、規格化された数字や記号で表したものです。JIS(日本産業規格)やISO(国際標準化機構)によって規定されており、設計者が使用環境や受ける荷重に適したボルトを選定するための最も基本的な指標となります。
鋼製ボルトの頭部には「4.8」「8.8」「10.9」「12.9」といった数字が刻印されており、これらが強度区分を示しています。
強度区分(鋼製ボルト)の数値の意味と見方
炭素鋼および合金鋼のボルトにおける「点(ドット)」で区切られた2つの数字は、それぞれ引張強さと降伏点(または耐力)を表しています。
- 第1数値(点の前):公称引張強さの1/100を表します。例えば「10.9」の場合、10×100=1000 N/mm²(MPa)以上の最小引張強さを持つことを意味します。
- 第2数値(点の後):下降伏点または耐力と、公称引張強さとの比率(降伏比)の10倍を表します。「10.9」の場合、0.9(90%)を意味し、降伏点(耐力)は1000 N/mm² × 0.9 = 900 N/mm²となります。
一般的に「8.8」以上のボルトは「高強度ボルト(ハイテンションボルト)」と呼ばれ、熱処理(焼入れ・焼戻し)によって高い機械的強度が付与されています。
ステンレス鋼ボルトの強度区分
ステンレス製ボルトの場合は表記方法が異なり、「A2-70」のように「鋼種区分 - 強度区分」の形式で表されます。
- 鋼種区分:「A2」はオーステナイト系ステンレス(SUS304相当)、「A4」は耐食性に優れるモリブデン添加オーステナイト系(SUS316相当)を表します。
- 強度区分:数字は引張強さの数値を表し、「70」であれば最小引張強さ700 N/mm²を意味します(「50」なら冷間加工なしで500 N/mm²など)。
機械設計実務における選定のポイントと注意点
1. 相手材(めねじ側)の強度バランス
高強度ボルト(10.9や12.9など)を採用して高い初期締結力を得ようとする場合、めねじ側の母材がアルミニウム合金や鋳鉄などの軟質材であると、ボルトが破断する前にめねじ側のせん断破壊(ねじ山抜け)や座面の陥没が発生します。相手材の強度に応じて、十分なねじ込み長さを確保するか、ヘリサート(インサートめねじ)の適用を検討する必要があります。
2. 高強度ボルトにおける「遅れ破壊」リスク
強度区分10.9や12.9などの高硬度・高強度ボルトは、引張応力と腐食環境(水素の侵入)が重なることで、静的荷重下でも突然脆性破壊を起こす「遅れ破壊(水素脆化)」のリスクが高まります。特に電気亜鉛めっき処理などを施す場合はベーキング処理が必須となり、腐食環境下では強度区分をあえて8.8程度に抑えるなどの設計判断が求められます。
3. 適正な締付けトルクの管理
ボルトは強度区分ごとに締め付け可能な最大軸力が異なります。強度区分に適した適正締付トルクで管理しないと、トルク不足による疲労破壊(ボルトの緩みによる破断)や、オーバートルクによる塑性変形・破断を招きます。設計図面にはボルトの呼び径だけでなく、必ず強度区分と締付トルクの指定を明記することが重要です。