【用語解説】脱ガスとは?機械設計での使い方と実務の注意点

脱ガス(Degassing / Outgassing)とは

脱ガスとは、金属材料や樹脂、液体中、あるいは真空機器の構成部品の内部・表面に含まれる気体(ガス成分)を外部へ除去・放出させるプロセスのことです。英語では気体を取り除く行為を「Degassing」、材料から自然に放出される気体やその現象を「Outgassing(アウトガス)」と呼び分けられることもあります。

機械設計において、材料内部の残留ガスや成形時に巻き込まれる気体は、強度低下、気泡(ボイドや巣)による外観・気密性の不良、さらには真空環境での圧力上昇や光学機器・電子部品の汚染など、重大な不具合の要因となります。そのため、適切な脱ガス処理の適用やガスが抜けやすい構造設計が極めて重要です。

脱ガスが重要視される主な分野と目的

1. 鋳造・金属積層造形(3Dプリンター)・溶接

溶融金属中には水素や酸素、窒素などのガスが溶け込んでいます。凝固時にこれらが残留すると、ブローホールやピンホール、引け巣などの内部欠陥を生じさせ、機械的強度や耐圧性を著しく損ないます。溶湯処理での脱ガス剤添加や真空脱ガス、金型設計における適切なガスベント(ガス抜き)配置が不可欠です。

2. メッキ・表面処理(水素脆化対策)

高張力鋼やバネ用鋼などに酸洗いや電気メッキ処理を施すと、金属内部に水素原子が侵入します。この残留水素が原因で遅れ破壊を引き起こす現象を「水素脆化(水素脆性)」と呼びます。これを防ぐため、メッキ処理直後に約200℃前後で加熱して水素を追い出す「ベーキング処理(水素脱ガス処理)」が図面指示として必須になります。

3. 真空装置・半導体製造装置

高真空や超高真空チャンバー内に配置される部品は、大気圧下で吸着した水分や材料内部に含まれる揮発成分が少しずつガスとなって放出(アウトガス)されます。これにより目標真空度への到達が遅れたり、ウエハや光学系を汚染したりします。事前ベーキングや電解研磨による表面平滑化が脱ガス対策として行われます。

4. 樹脂成形・注型・接着封止

エポキシ樹脂のポッティングやウレタン注型、射出成形では、混合時の気泡巻き込みや揮発分が原因で絶縁破壊やクラックが発生します。真空脱泡機による脱ガスや成形金型のベント設計が品質を左右します。

機械設計における実務上の注意点

  • 図面への明確な後処理指示:メッキ後の水素脆化ベーキングや、真空部品のベーキング処理は、加工指示欄や注記に温度・保持時間を具体的に明記します(例:メッキ後4時間以内に200℃×4時間加熱処理など)。
  • ガスポケットを排除する構造設計:真空チャンバー内や接着接合面において、止まり穴(タップ穴)の底や合わせ面に密閉された空間ができると、内部の空気が抜けにくく「仮想リーク」の原因になります。通気穴付きボルトの採用やガス抜き溝の設置が必要です。
  • 低アウトガス材料の選定:真空や高温環境下で使用するシール材・樹脂材には、フッ素ゴム(FKM)や特殊エラストマー、電解研磨されたステンレス(SUS316Lなど)を選定し、ガス放出源そのものを最小化します。