ガス軟窒化の表記や特徴について

2020年4月20日




 

今日は「ガス軟窒化の表記や特徴について」のメモです。

窒化の中でも「ガス軟窒化」について少し調べたので、その内容をメモしておきます。

ガス軟窒化について

ガス軟窒化のJISについて

JIS:JIS B 6915

 

ガス軟窒化の特徴(箇条書き)

以下にガス軟窒化の特徴をメモしておきます。

特徴の引用

  • 表面に「高硬度・低摩擦係数の化合物層」を得る表面硬化処理
  • 疲労強度、耐食性、耐熱性を向上させる
  • 経済的な処理方法
  • 色は乳白色
  • 比較的低温で処理をするため歪みや寸法変化は小さい(ほぼ無い)
  • 小型、大型部品、形状に左右されない
  • ほとんどの鉄鋼材料に対して適用が容易
  • 深穴、スリット形状も容易に処理可能
  • 不純物、酸化膜等が付着することがなく綺麗な仕上がり
  • ガス窒化よりも処理時間が大幅に短い(2~5時間加熱保持)
  • 小ロットから量産まで容易に適用
  • 高温下で表面硬度が下がる事が無い

出典(順不同)

株式会社東研サーモテック朝日熱処理工業株式会社パーカーS・N工業株式会社湘南窒化工業

 

 

補足:ガス軟窒化はSN処理(エスナイト処理)・SNプロセスとも言う

エスナイト処理とは、ガスプロセスで鉄鋼材料の表面に硫化鉄と窒化鉄を形成させる表面改質処理で、浸硫窒化処理とも言う

 

 

ガス軟窒化の表記や指示の方法

  • ガス軟窒化 :HNC-G

 

補足:参考(その他処理の表記)

  • 軟窒化(プラズマ軟窒化:HNC-P 、 塩浴軟窒化:HNC-S)
  • 窒化(ガス窒化:HNT-G 、 プラズマ窒化:HNT-P)
  • 酸窒化(ガス酸窒化:HON-G 、 プラズマ酸窒化:HON-P)

 

 

ガス軟窒化を処理する設備の特徴

加工材料を「軟窒化性雰囲気」の中で加熱し軟窒化する設備

 

補足:参考(ガス窒化を処理する設備とは)

加工材料を「アンモニアガス」を主体とする雰囲気の中で加熱し窒化する設備

 

 

ガス軟窒化を処理する設備の温度のバラつきは?

ガス軟窒化を処理する設備は「JIS B 6901」で規定される±10℃(クラス4)で温度を保持出来る設備でなければならない。

 

 

窒化で使われるアンモニアって何?

ガス窒化やガス軟窒化で使われるアンモニアは無機化合物。常温常圧では無色の気体で、特有の強い刺激臭を持つが、化学工業では最も「基礎的な窒素源」としてきわめて重要とされている。

 

 

窒化するとどうなる?窒化の効果

一般的に最表面から、化合物層(白層)-拡散層-素材となり、全窒化深さを形成している。この化合物層は 耐摩耗性・耐かじり・耐焼き付き・摩擦係数の低減・耐食性を向上させる。

 

 

ガス軟窒化の寸法変化について

ガス軟窒化は処理温度も低温(530~600℃)で短時間処理の為に寸法変化が殆どない。

 

 

ガス軟窒化の処理厚のバラつきについて

ガス軟窒化によって出来る化合物(窒化物と炭化物)層は、金属表面に5μm~20μm。炉の大きさにより多少のバラつきはある。一般的に炉の扉側は薄い方向になるらしいが、炉の内部のバラつきよりも、ロット間でのばらつきのほうがあるかもしれないとのこと。層のばらつきは化合物層10~15μmい対して2.5μm程度と考えてよい

 

 

ガス軟窒化の処理厚さは変えられるのか

可能。要求に応じて対応してくれる場合がある。

 

 

ガス軟窒化はどれくらいの硬さを得られるのか

以下は目安です。材質により異なるので処理依頼メーカーに確認必要

  • SPCC、SS400、SUM系、S45C等:Hmv400以上
  • SCM材、SNC、SMCM材、NAK、プリハードン鋼:Hmv600以上
  • SACM645、SKD-11、DC、ダイス鋼系、SKH系、HAP、高速度鋼:Hmv800以上
  • SUS410、420、440:Hmv800以上

 

 

窒化して欲しくない場所がある場合はどうしたらよいか

図面で窒化不可の場所を「指示」することで薬剤やメッキ等のマスキングによる部分的な窒化防止が可能

 

 

窒化は圧力に弱いって言うけれど、表面硬度が高いのに弱いのはなぜか

窒化は表面に化合物層を作り固くするが、素材である中身が柔らかいので圧力による変形に弱いと考えればよい

 

 

窒化の程度を知りたい場合はどうすればよいか

窒化メーカーにお願いすると窒化された製品を測定してくれる。測定には断面を見る必要があるので検査依頼する製品は切断されてしまう。切断された製品は「銅板や樹脂」を窒化面に押し当てて固定、素材と一緒に研磨し、画像で化合物層・拡散層の深さを測定する。

※銅板や樹脂を利用する目的は見やすくするため。密着度を上げるためには樹脂が向いている。

 

以上です。

 

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