今日は「ボルト・ねじの長さの決め方は基本的に1.5D~2Dねじ込める長さにする」という話をしたいと思います。
いきなりですがこれが結論で ボルト・ねじの長さは基本的に1.5D~2Dねじ込める長さで選定すれば良い です。
1.5D以上2D以下の参考例:M6を利用する場合
- 1.5×6(D)=9L以上で
- 2.0×6(D)=12L以下をねじ込み深さとする
「D」とは、直径です。1.5Dであれば「1.5×Mサイズ直径」になるので、例えばM6であれば「1.5×6(D)=9」となります。
この記事では、ねじ長さやねじ込み量を決めるために意識することを細かくメモ しておきますので、根拠が知りたい方、初心者の方は是非参考にしてみてください。
ねじ長さ
ねじの長さは タップねじ込み深さ(1.5D〜2D)+キリ穴側厚さ
①タップねじ込み深さ(1.5〜2D)
まず、ボルトの長さを決める際に一番最初に満足するべきポイントはタップねじ込み深さ・ねじのかみ合い長さになります。
機械設計に限らず、ねじを使って締結する場所で、大切なことはなんでしょうか?
それは、ねじを締めたときに発生する軸力で「物同士を押さえ付ける」のが目的ですから、その物の大きさや、掛かる負荷に対してネジのサイズを決めることが大切 です。そして、その必要な軸力を設計がどれだけ把握しているかどうかと言うことです。
上記のように、物同士を押さえつけるためにねじに軸力を発生させて締結しますが、タップへのねじ込み深さが確保されていないとその軸力を発生させることが出来ません。 基本的にねじ込み深さは、1.5D以上2D以下くらいの間で収まるように考えます。
【補足】ボルトのねじ込み深さが1.5D以下ではダメなのか?
ねじ込み深さ1.5D以下はダメではないですが出来るだけやめてください。 それ以上浅くすると、材質が弱い方のねじ山をダメにしてしまう危険が高まります。どうしても1.5D確保できない場合は、最低3種ナット(薄いナット)の厚さを最低限満足するようにしてください。
上記右側、青枠内の右の数値が各ボルトサイズの3種ナット高さ寸法です(M6なら3.6mm)
但し、上記3種ナットの厚さに出来るのは タップの母材が鉄系以上の強度を持つ場合 です。 例えばアルミのようにタップ側の強度が弱いものですと、タップのネジ山が締付けの際にダメになってしまうので注意が必要です。 (ネジがナメると言い、ねじ山が引っ張られ潰れてしまいます)
たまに、ネジが3山掛かっていれば良い という情報を見ますが、3種が大よそそれくらいになります。 ただ、3山という少ない山数で締結は出来ますが締結する際の締め込む力の制御が必要になります。 トルクレンチで締め付ける力を一定に保てば良いですが、ネジを締めるときに全員がトルクレンチで締められるわけではないです。 その為私は1.5D~2Dの締め込み量を推奨 します。
②キリ穴側の板厚
キリ穴側のネジ長さは、タップ側のねじ込み深さを1.5D~2D以内に収める前提で市販されているネジ長さ、キリ穴部材の必要厚さと見比べながら決めます。
【例】前記のタップねじ込み深さの継続
- 締結部材(キリ穴側部材)の品質的に板厚10mmは必要
- タップねじ込み深さ9mm+キリ穴側10mm=長さ19Lのネジが必要
- タップねじ込み深さ12mm+キリ穴側10mm=長さ22Lのネジが必要
市販されている、その周辺のねじ長さは18.20.22となっており、19Lが無いため20Lか22Lを採用する。
【補足】キリ穴側が設計上厚い場合はどうすれば良いか
ここが設計のセンスの分かれ目といいますか、考え方として重要なポイントなので丁寧に説明します。
例えば、キリ穴側の部品が厚い場合を考えてみます。こんな感じですね。
ここでは、分厚い部材の締結において3種類のとめ方があるのでそれらをモデルにしてみました。上記は右から
- そのままとめる(右)
- 座グリにする(中央)
- 座グリを深くしてネジを短くする(左)
という締結です。キリ穴側の部品が厚い場合は基本的に「3」の座グリを深くしてネジを短くするという方法を利用します。(初心者の方の選択では1番が多いです)「1」や「2」でもダメではありません。このように「3」を選択する理由は3つあります。
- 長いネジは手に入りにくい(あまり在庫していない場合が多い)
- 「1及び2」は板厚に依存するので適切なタップねじ込み深さを得にくい
- 「1及び2」は少しの力で動きやすい
「長いネジは手に入りにくい事と」「タップねじ込み深さを得にくい」という理由は理解できると思いますが、3つ目の「少しの力で動きやすい」という理由の説明をします。
例えばこのように部材への横荷重が掛かったときにどうなるかを考えてみます。ネジの長さは長ければ長いほど、横方向への力を受けた時に弱くなります。ただし、ここには指標がありませんので、設計しているものに対する設計士のセンスであると私は考えています。
【参考例】
私の場合は基本的に「Mサイズ×Mサイズ」を最大長さとして考えています。この方法が一番わかりやすく、教えやすいのもあります。
- M3×3=9L(10L)が利用する最大のねじ長さ
- M4×4=16L(16L)
- M5×5=25L(25L)
- M6×6=36L(35L)
- M8×8=64L(65L)
上記のようなルールをもって、規定以上より長いネジが必要な場合は座グリを追加するという考えで装置を設計すると解りやすいと思います。また、そのような指標を設けることで、組立でのメリット・手配関連のメリットも大きくなってきます。
【補足】インローのある部品は長くても良い
補足ですが、先ほどの分厚い部品は、部材が横荷重に対して動くことに対して弱いと言いましたが、部材同士がインローの場合は横荷重を部材が受けるため、ねじへの横荷重がありません。そのため、この場合は長いねじの入手性だけ考慮できれば長くても良いです。
【補足】タップ側の板厚とキリ穴側の板厚によってねじ込み深さ1.5D及び2.0Dが難しい場合は座グリ深さで調整
締結の全てが市販されているねじの規格長さで上手くいくとは限りません。 タップ側がどうしても薄くなってしまう場合はねじ込み深さが中途半端な深さになってしまウこともありますが、そんな場合は 座グリの深さでタップへのねじ込み量を適切に確保します。 締結の品質優先です。
最後に
締結が装置や治具の性能に大きく影響する場合もありますので、設計初心者の方は、ねじ長さもにも意識して設計してみてください。
また、今回の記事は私の個人的指標が多く載っています。これら指標はあくまで私のルールであり、一般的解釈でない部分もあるかもしれませんので、お勤めの会社でのルールに則って設計してください。
以上です。
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