今日は「エアシリンダの使い方や設計における基本事項まとめ」のメモです。
時代の流れは、「エア」から「ロボ」へとシフトしつつにあるように感じていますが、まだまだエアシリンダの時代は続くと思います。そのため、今日は設計初心者の方に向けてエアシリンダの基本的な使い方と、実際にエアシリンダを使う際の注意をまとめてみました。ベテランの方々からしてみれば極当たり前の内容かと思いますが、どうぞご利用ください。
エアシリンダの使い方
エアシリンダの選定方法について
ここでは、機械設計初心者の皆様へ向け、エアシリンダの選定方法について纏めてみようと思います。
エアシリンダを扱う各メーカーのラインアップを見ると、ものすごい種類のエアシリンダがあることに気がつきます。エアシリンダといっても、押す・引く以外に挟むエアシリンダがあったりと、設計が楽しくなりますね。
今ではスライドテーブルタイプや、マグネット式のエアシリンダなど大変種類豊富でして、多くの方が選定に悩まれることかと思います。単純に必要推力や、ガイド機構の有無以上の選定項目があるのが現代のエアシリンダ事情だと思います。
ですので、エアシリンダ選定のコツを言ってしまうと、明らかに確定できるエアシリンダでない場合はメーカーに聞くのが一番良いです。
- どのように駆動させるのかを決定
- 仮でそれを満足できそうなエアシリンダを仮で選定
- その選定したエアシリンダについてメーカーの意見を聞く
色々経験してきた結果、この方法が一番良いです。カタログ上の情報は選定に必要な寸法や説明がありますが、メーカーが持っている情報が載りきっていないことがあるからです。それは値段であったり、納期であったり、過去トラブルのネタだったり、その製品の世代交代の時期の話題だったり色々です。ある程度、エアシリンダの機種が絞れているのであれば、確認がてらメーカーの意見を聞くのが良いことかと思います。
エアシリンダを使用する際のエア圧力について
エアシリンダを駆動するためのエアは、設置される工場内のエア圧力を考慮する必要があります。一般的に工場内エアは0.5~0.7MPa(N/mm2)で設定されていることが多いんですが、大型の工場になると工場はどんどんラインを増やしていったり、漏れていたり、現場でエアブローを増設してしまうこともあるために、エアシリンダを使った設計の場合は、0.3MPa(N/mm2)でも能力が足りるように設計します。・・・・いや、どちらかというと、0.3MPaで統一して設計します。エア圧が下がった時、高圧力で推力等を設計していた場合は推力が足りなくなるという場合があるためです。
逆に、私が設計駆け出しだった頃に選定した機器がオーバーサイズだったので、減圧弁を利用することもありましたがこの対処は良くないです。エアシリンダの動作圧力の上限は、基本的に工場内エアより高い所に設定されているため、高圧側動作は工場内のエアに依存し、それらは基本的にレギュレータで安定して0.3MPaは得られるのですが、能力が強すぎて止む終えず0.1MPaで利用しないといけなくなった時、今度はエアシリンダが動作不良を起こしてしまうのです。これはエアシリンダの最低動作圧力付近だから動作が安定しなかったのです。
なので、デリケートな場所でエアシリンダを使う場合は、最低動作圧力も確認することをしたほうが良いです。
動作に関する参考記事:エアシリンダを持ち上げ動作で使う場合の注意点
チューブ内径(シリンダ内径)は押し側と引き側ではシリンダ内部面積が違います
「これ、どうして押し側と引き側で力が違うんですか?」と、初心者の方から聞かれたことがあります。これは単純に押し側と引き側は、内部で力を受ける面積に違いがあるからです。また、各メーカーのカタログに「理論出力表」といった形で記載してありますが、シリンダ内径は同じでもロッドの径などが違うために推力に差が出ているということにも気がつくと思います、一般的な推力をここに記します。
エアシリンダのストロークについて
エアシリンダを押し付け動作で利用する場合、ストロークは最低5mm残しですべてを使い切らないようにすることが必要です。これは、押し側も引き側もストロークをすべて使いきらない事がポイントとなります。例えば100ストロークのエアシリンダを最大の100ストローク使ってしまった場合、内部の構造物がストッパーとなってしまい、力を出せないのです。また、エアシリンダは特注でストロークの任意寸法で製作できますが、基本は標準ストローク品を購入します。製品誤差や、設置条件において、誤差を考慮する必要があります。
【エアシリンダ初心者の為の参考】100ストロークで押し付けたい場合
- 100ストロークのシリンダでフルストローク使用=100以上は押せないし、力も出ない。→×
- 150ストロークのシリンダでストローク余らせて使用=残り50ストローク分押せる。→〇
そして、エアシリンダの動作を付属センサーで見ようとする場合、極微量のストロークではセンサーが感知したままということも想定されますので、極微量のストロークで利用する場合は、センサーの事も考慮したほうが良いかと思います。チャックなどのエアシリンダも、動作前と動作後の動きが微量過ぎるとセンサーの反応上手く取れないことがあるそうです。
エアシリンダの衝撃吸収について
エアシリンダの衝撃吸収は大きく分けて2種類あります。
- 外部でメカストッパーを設けたり、ショックアブソーバ等で衝撃を和らげる。
- エアシリンダ単体のストッパーを利用し、衝撃吸収を若干和らげる。
ラバークッション……ピストンとカバーの金属当たりを避けるウレタンラバーがある。
エアクッション………ストロークの最後で端排気側圧力を圧縮させ反発力を利用する方法。
※押し付け動作に使う場合にエアシリンダストロークのすべてを使わない場合が多いのでシリンダ自身が持つ衝撃吸収機構は機能しない場合があります。
電磁弁・配管図(エア回路図)までが機械設計側の仕事です
一般的に、電磁弁・配管図(エア回路図)までが機械設計側の仕事です。配管図(エア回路図)に関しては原点統一で書くのが基本です。
参考:「精密機械の組立てをして解ったこと・感じたこと」内の見出し「配管図は原点で書くことを統一する」
エアシリンダを使う際の注意点
横荷重が掛かる事のリスクと対策
エアシリンダは、ストロークが長くなればなるほど「横荷重」に要注意する必要があります。ストロークが短い時もそうですが、エアシリンダのストロークが長くなると、ピストンロッドに横荷重がかかる場合は横荷重が許容値内であるか使用エアシリンダのカタログで確認する必要があります。横荷重が掛かる事で、ピストンロッドの曲がり、長期利用によるエア漏れ、ピストンロッドの座屈が起きてしまいます。
横荷重が掛かる場合で、「ガイド付きエアシリンダ」等のガイド機能を持っていないエアシリンダを利用する場合は「ガイド機構」を設けるようにしないといけません。メーカーカタログの値を参考にしつつも、使用される環境下を想像し設計してください。必ずといってよいほどガイドが必要になるかと思います。
エアシリンダを利用した装置での事故・不良防止について
ここでは、エアシリンダを使うの当たって、事故や動作不良防止について少し纏めてみたいと思います。
- 単動シリンダは極力使用してはいけない
動作不良が多いと聞く。
- 2段ストロークタイプも極力使用しないほうが良い
個人的意見ですが、それなら2本のエアシリンダを利用したほうがわかりやすいです。
- 推力を邪魔する「摺動部の引っ掛かり」には注意すること。
エアシリンダの使用上で摺動面の引っ掛かりが発生することがあります。それはシリンダ内部ではなく、金属同士の引っ掛かりです。エアシリンダは自身が動いている際は圧力は低下しますが、引っ掛かりにより摺動が止まった場合圧力が上昇し引っ掛かりが外れた際に衝撃的な動作をします。レギュレータ等で設定してあると思うので、それ以上の圧力になる事は無いと思いますが気を付けないと危険です。人も危険ですが、装置にも悪影響なので「摺動部」には十分注意しましょう。
- エアシリンダで昇降駆動する時は上昇下降でエアの使い方を注意する。
特に下降側のスピード調整や「低圧」を入れる場合、難しいので下降を考慮する場合はエアによるコントロールは難しいと考えたほうが良い(あくまで事故を想定した場合)
- 駆動スイッチ。保護カバーやセンサを使用しないなら両手で押す仕組みにする。
現場を経験しないと意外と危険な所が解りません。シリンダを作業員の任意スイッチで駆動して何か作業を行う場合、片手でスイッチを押すのは危険です。両手もしくは作業エリアに人が入っても駆動しないようにエリアセンサを設けるなどで対応しましょう。
- エアシリンダにプレス用の重量物をつりさげている場合落下に注意
エアシリンダは昇降アクチュエータとして利用することが多いと思いますが注意したいのが動力源の工場エアの故障の可能性を考慮してください。動力源に故障が発生しても、作業員または装置に損害を引 起こさない対策を施しないといけません。具体的に言えば、停電等により圧力が低下し、推力が減少しワークが外れたり、負荷が掛かっている場合に落下したりします。エアで戻り側をコントロールしている場合そのような事故になるので、対策として、その日の作業終わりにはストッパーを設置して帰るなどの考慮が必要です。(落下防止の引っ張りバネでもOKです)
- エアシリンダの同期はできないと考える
エアシリンダは単体誤差などがありますし、初期的に同一速度に設定しても各環境においてもそれが維持されないため、2個以上のシリンダを利用した同期押し付け作動などは上手くいきません。
- エアシリンダのピストンロッドは特に物をぶつけたりくわえたりして傷や打痕をつけてはいけない。
確実にエア漏れする。また動作不良の原因となります。
エアシリンダを利用した装置での保守について
エアシリンダを使う装置での保守保全のために基本的に考慮するとよい項目を纏めます。
- 工場内エアからの配管は1グルーブごとにエアコンビネーション(最低フィルタ付き)を設けること。
※特に電磁弁を利用する場合は考慮する。
- エアの配管は「管径大→小→エアシリンダ」となるように設計する。
※配管が「管径小→大→小→エアシリンダ」などのようになると、圧力損失等の問題が出てくる。
- 使用するエアシリンダはメーカーを統一すること。
- 現場としては計器類を集中させる方が良いので、取付位置を極力集中すること。
- 現場としてはエアホースや配管に色分けや表示があると良いので考慮したい
※故障取替えなどによる復旧がすぐ出来るようになります。
エアシリンダのエア圧力に対する推力について
エアシリンダの推力につきましては、別記事にて詳しく簡単にご紹介しています。そちらもご利用ください。→「エアシリンダのエア圧力に対する推力表と推力の計算式」
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以上です。