今日は 「重量物を搬送するローラーコンベアの選定基礎知識」 についてのメモです。
様々な場所に利用されるローラーコンベアですが、重たいワークを搬送したい場合に選ぶローラーコンベアの選定で、前もって知っておくと選定や設計がスムーズにいく事があるので、今日はそのポイントをメモしておきます。
重量物を搬送するローラーコンベア
重量物の搬送に適した駆動とは
重量物の対象として パレットやドラム缶搬送 の場合は チェーン駆動のローラコンベヤが良い です。 元々、チェーン駆動のローラコンベヤは 軽荷重から重荷重まで幅広く使われているんですが、重量物の搬送においては 駆動が滑らない確実な搬送 ができます。
重量物に駆動力を伝える要素(接線力)
ローラーコンベアは、ワーク接触面がローラーの円周面となるので、ワークの搬送面の 形状によっては駆動力がうまく伝わらず搬送が出来ない状況になります。 その駆動力を 接線力 と言って、駆動ローラーコンベアでは重要な選定要素の一つになります。
ローラーCVに出てくる接線力(㎏)の求め方
接線力は 進行方向への駆動力 です。 ローラーコンベアを用いて搬送する場合、搬送物の重量と必要に応じて傾斜角度、そしてコンベアローラーに対する各材質の摩擦係数の情報が必要になります。
水平または斜面に平行な力で 引き上げる場合 の必要接線力
必要接線力F(N)=9.8W(μ・cosθ+sinθ) ※水平の場合はθ=0
水平または斜面に平行な力で 引き下げる場合 の必要接線力
必要接線力F(N)=9.8W(μ・cosθ+sinθ) ※水平の場合はθ=0
9.8N=1kgf
F:必要接線力(N)
W:搬送物の質量(kgf)
μ:搬送物の摩擦係数(金属0.01〜0.06、樹脂0.02〜0.08、段ボール0.05〜0.2、ゴム0.1)
θ:コンベアの傾斜角度
参考計算例:200㎏の金属を搬送する場合の必要接線力の場合
必要接線力F(N)=9.8*200(0.02) =39.2N となります。
つまり、上記の場合 39.2N が駆動力として必要なので ローラー1本あたりの必要接線力をカタログで確認し、 搬送物下面に何本配置(配置のピッチ)できるか、そしてそれらで駆動力が足りるかの確認 をしてください。 また、コンベアの耐荷重単位である 1mあたりの耐荷重 も把握が必要になります。
中間で停止したい場合に選ぶべきコンベア
重量物をコンベア搬送する場合、軽いワーク搬送のように ワークにストッパーを掛けて止め、コンベアは回しっぱなしという作業は難しい ので、コンベア上の中間位置でワークを止める為にコンベアの仕様選択をします。
ワークを止める方法としては ローラーがスリップするロープレッシャーか、駆動が切れるゼロプレッシャー仕様のコンベアを使えば中間停止が可能になります。 それらの名称は アキュームレーティング(メイキコウ)やアキュームローラ(マキテック)などと呼ばれているわけですが、そのロープレッシャーとゼロプレッシャーは、以下の違いがあります。
ロープレッシャータイプ+ストッパー
ロープレッシャーは、外部ストッパーでワークを止めて、駆動するローラーはスリップします。(駆動は動いているがローラーは回転が止まっている)
コンベアの流れ方向に掛かる力をラインプレッシャと言いますが、その力を低く抑えたロープレッシャタイプのコンベアはラインプレッシャの2%〜10%目安で調整が可能です。
画像はメイキコウ様カタログよりお借りしました。
つまり、ストッパーの設計は このラインプレッシャーが静荷重で掛かり、衝突時の負荷計算も必要という事になります。
衝突時の荷重を計算する場合は こちら をご確認ください。 ロープレッシャータイプは搬送耐荷重のラインナップが多いのが特徴的 ですが、環境によってはワーク底面がこすれてしまうのがデメリットになります。
ゼロプレッシャータイプ
ゼロプレッシャータイプは 駆動が掛からないためにラインプレッシャーもありません。
手前のワークに対し、距離を取って停止することができるため、搬送物の底面を傷つけない事と、同一のコンベア上でランダム混入にも対応可能というメリットがあります。 ただ、搬送耐荷重のラインナップが少ないです。
その他:ローラーコンベアを利用する際の注意点
ローラーコンベアの軸受けは 衝撃に弱いので 重量物を搬送する場合は 以下のことに注意が必要です。
- 積載時に衝撃を掛けることはNG
- 脱荷時に衝撃を掛けることはNG
- 底面が平でないワークの方向転換時の突っかかりの衝撃はNG
- コンベアからの脱落防止ガイドが狭いとワークとの接触抵抗により搬送がスムーズにいかない
となります。
その他:チェーン駆動のコンベアを使う場合の設計考慮
チェーンコンベアを扱う場合、 チェーンの初期伸び が起こります。
これは コンベアが長くなれば伸びる量も増える わけですが、 上記の初期伸び以上にチェーンが伸びる場合も有ります。 この場合、原因としてはコンベヤに異常に荷重がかかった事(スティックしているのにモーターが強く引っ張るため)が懸念されるので、駆動側に保守点検で人が入りやすいレイアウトをしておくべき です。
最後に。重量物の搬送は事前にメーカーに確認した方が無難
重量物の形状によって搬送が難しい事があるので、その場合は一部が変わるカスタム品になるなど、メーカーに過去の実績を聞いた方が良い です。
しかし、コンベアに関しては産業機械に限らず物流などにも幅広く利用されていることから、各営業所が個別にノウハウや実績を持っていることが多いらしく、 担当の営業所に相談する方が良いそうです。 つまり、コンベアというすぐに手に入りそうなものですが、使おうと思うと ノウハウの塊 なので 早めの行動をおすすめします。
以上です。
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