ベアリング取付部のはめあい公差設計・面粗さ設計|要点の完全解説

 

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当ブログでは、読者の皆様により分かりやすく情報をお伝えするため、AIツールを文章の校正に活用しています。

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ここでは ベアリングの使い方 で最も重要となる 「ベアリング取付部のはめあい公差設計・面粗さ設計」 についてのメモです。

 

多くのWEBサイトでは、はめあい公差の基本について解説されていますが、それぞれの情報が断片的で、設計全体を体系的に理解するには不十分な場合があります。  例えば、公差等級の選び方には触れていても、それがベアリングの内部すきまにどう影響するのか、あるいは圧入が必要な条件と組立性のバランスについてまで踏み込んでいる情報は多くありません。

 

この記事は、そうした情報である点と点だった知識を線で結び、ベアリング取付部の公差設計を網羅的に理解することを目的としています。

 

まず、はめあいの基本的な考え方と3つの種類を整理し、設計の土台を固めます。 次に、荷重条件に応じた適切な寸法公差の選定方法を具体的に解説し、実践的なスキルを身につけます。 さらに、ベアリングの性能を保証する上で欠かせない幾何公差の重要性へと話を進め、最後に、肩の高さや隅の丸みといった、見落としがちながらも致命的な不具合につながりかねない関連部分の設計上の注意点 をメモします。

 

この記事を最後まで読むことで、自信を持って最適な公差設計を行えるようになるはずです。

ベアリング取付部の公差設計の基本となる「はめあい」

ベアリングの性能を最大限に引き出すためには、取り付け部分の公差設計が極めて重要 です。  特に、軸やハウジングとの関係性を決める「はめあい」の考え方は、全ての設計の基礎となります。 ここでは、不適切な公差設定が引き起こすトラブルを避け、安定した機械性能を実現するための基本的な知識を解説します。

 

はめあいの3つの種類とは?

ベアリングの取り付けにおけるはめあいには、主に3つの種類が存在 します。  これらは、軸とベアリング内輪、あるいはハウジングとベアリング外輪の寸法関係によって定義されるものです。

 

まず一つ目は「すきまばめ」です。  これは、穴の寸法が軸の寸法よりも常に大きくなるよう設定され、部品間に必ずすき間ができるはめあいを指します。この方式の利点は、部品の組立や分解が容易になる点にあります。

 

二つ目は「しまりばめ」と呼ばれます。こちらは逆に、穴の寸法が軸よりも小さく設定されており、圧力をかけてはめ込むことで強固に固定する方法です。部品同士の滑りを防ぎ、力を確実に伝えたい場合などに用いられます。

 

そして三つ目が、両者の中間的な性質を持つ「中間ばめ」です。これは、組み合わせる部品の寸法によって、わずかなすきま、またはしまりのどちらの状態にもなり得るはめあいを指します。設計の意図に応じて、幅広い用途で活用されます。

 

 

しまりばめとすきまばめの使い分け

しまりばめとすきまばめは、ベアリングにかかる荷重の状態に応じて使い分けるのが設計の基本原則 です。  この選択を誤ると、ベアリングの性能が十分に発揮されないだけでなく、機械全体の故障につながる可能性も考えられます。

 

具体的な使い分けの基準は、荷重が「回転」するか「静止」するかという点にあります。  例えば、ベアリングの内輪が軸と一緒に回転し、外輪がハウジングに固定されている場合を考えてみましょう。  このとき、回転する内輪には「しまりばめ」を適用し、静止している外輪には「すきまばめ」を適用するのが一般的です。

 

このように言うと、なぜ回転する側にしまりばめが必要なのか疑問に思うかもしれません。 その理由は、次に説明する 「クリープ」という有害な現象を防ぐため です。

 

 

クリープ現象の発生メカニズム

クリープとは、はめあい面の固定力が不十分な状態でベアリングに回転荷重がかかった際に、軌道輪が相手部品に対して微小な滑りを起こし、円周方向にずれていく現象のこと です。  この現象は、ベアリングの寿命を著しく縮める原因となるため、設計段階で必ず対策しなければなりません。

 

 

軌道輪とは

ここで言う「軌道輪」とは、ベアリングを構成する主要な部品である内輪と外輪のことを指します。  これらのリング状の部品には、ボールやころといった転動体が転がるための溝(軌道溝)が設けられており、ベアリングの滑らかな回転を支える走路の役割を果たしています。

 

もし、回転する軌道輪をすきまばめで取り付けてしまうと、荷重がかかる部分で軌道輪がわずかにたわみ、その反対側で相手部品との間に微小なすき間が生まれます。  荷重の方向が回転と共に移動していくと、このすき間も移動し、結果として軌道輪がゆっくりと滑るように回転してしまうのです。

 

一度クリープが発生すると、はめあい面の摩耗が進行します。  そして、摩耗によって生じた金属粉がベアリング内部に侵入し、潤滑剤を汚染してしまいます。  これが、最終的には次に解説する「焼き付き」といった致命的な故障につながるため、クリープの防止は極めて大切です。

 

なお、NTNのウェブサイトでは、クリープによる損傷事例が写真付きで紹介 されています。

 

 

焼き付きとは

焼き付きとは、ベアリングの故障の中でも特に深刻な損傷状態の一つです。  潤滑不良や過大な荷重、過小なすきまなどが原因で回転中に急激な発熱が起こり、軌道輪や転動体の表面が局部的に溶融し、互いに溶着してしまう現象を指します。  一度焼き付きが発生すると、ベアリングは回転不能となり、機械全体が停止する重大なトラブルに至ります。  クリープによる潤滑剤の汚染は、この焼き付きを引き起こす主要な原因の一つです。

 

 

回転荷重と静止荷重の見極め方

前述の通り、クリープを防ぐためには、回転荷重がかかる軌道輪をしまりばめにすることが不可欠 です。  そのため、設計者は荷重が「回転荷重」なのか「静止荷重」なのかを正確に見極める必要があります。

 

回転荷重とは、軌道輪に対して荷重の方向が相対的に回転している状態 を指します。  一方、静止荷重とは、軌道輪に対して荷重の方向が常に一定である状態 を意味します。この違いを、具体的なケーススタディで見ていきましょう。

 

 

ケーススタディ1:電動機のロータ軸

  • 状況: 電動機のロータ軸がベアリングで支持され、軸(内輪)が高速回転します。ハウジング(外輪)は固定されています。荷重は、ロータの自重やベルトの張力など、空間的に固定された方向にかかります。
  • 解析:
    • 内輪: 回転する内輪から見ると、静止している荷重(自重など)が、あたかも自分の周りをぐるぐると回っているように作用します。これが「回転荷重」です。
    • 外輪: 固定されている外輪から見ると、荷重の方向は常に一定です。これが「静止荷重」です。
  • 結論: 回転荷重を受ける内輪は「しまりばめ」で軸に固定し、静止荷重を受ける外輪は「すきまばめ」でハウジングに取り付けます。

 

ケーススタディ2:自動車の車輪(ハブユニット)

  • 状況: 車軸(内輪側)は車体に固定されており、タイヤと共にハブ(外輪)が回転します。荷重は、車両の重量であり、常に鉛直下向きにかかります。
  • 解析:
    • 内輪: 固定されている内輪から見ると、荷重の方向は常に鉛直下向きで一定です。これが「静止荷重」です。
    • 外輪: 回転する外輪から見ると、静止している荷重(車両重量)が、あたかも外輪の内側をぐるぐると回っているように作用します。これが「回転荷重」です。
  • 結論: 回転荷重を受ける外輪は「しまりばめ」でハブに固定し、静止荷重を受ける内輪は「すきまばめ」で車軸に取り付けます。

 

ケーススタディ3:コンベアのアイドラローラー

  • 状況: ローラーの両端を支持する軸はフレームに固定されています。ローラー本体(ハウジング兼外輪)がベルトの動きに合わせて回転します。 荷重は、搬送物の重量であり、常に鉛直下向きにかかります。
  • 解析: この構造は、ケーススタディ2の車輪と全く同じです。 固定された軸に取り付く内輪には「静止荷重」が、回転するローラー本体(外輪)には「回転荷重」が作用します。
  • 結論: 外輪は「しまりばめ」、内輪は「すきまばめ」となります。

 

 

はめあい選定の基本パターン

これらの関係性をまとめると、はめあいの選定は以下の表のように整理できます。

運転条件 対象の軌道輪 荷重の種類 推奨はめあい 主な目的・理由
内輪回転・外輪静止 内輪 回転荷重 しまりばめ クリープ防止
(モーター、ポンプなど) 外輪 静止荷重 すきまばめ 組立・分解の容易化、熱膨張の吸収
内輪静止・外輪回転 内輪 静止荷重 すきまばめ 組立・分解の容易化、熱膨張の吸収
(車輪、コンベアローラーなど) 外輪 回転荷重 しまりばめ クリープ防止

この表は、はめあい設計における最も基本的な考え方 を示しています。  実際の設計では、これに加えて荷重の大きさや温度、精度要求などを考慮して、しまりやきすまの度合いを調整していくことになります。

 

 

実践的なベアリング取付部の公差選定プロセス

はめあいの基本原則を理解した上で、次に行うのが具体的な公差の選定です。ここでは、図面に指示するための寸法公差や等級の選び方、そして選定時に必ず考慮すべき注意点について、実践的なプロセスを解説していきます。

 

寸法公差とはめあい公差の関係

設計図面でよく目にする「寸法公差」と「はめあい公差」は、密接な関係 にあります。  寸法公差とは、部品を加工する際に許容される寸法のばらつきの範囲を定めたものです。

 

一方、はめあい公差は、軸と穴のように組み合わされる二つの部品の関係性を決めるもので、それぞれの部品の寸法公差の組み合わせによって決まります。  例えば、軸の寸法公差とベアリング内輪の穴の寸法公差をどう設定するかによって、前述した「すきまばめ」や「しまりばめ」といったはめあいの状態が決まる のです。

 

つまり、設計者は目的とするはめあい(すきま、しまりなど)を実現するために、軸とハウジングの寸法公差を適切に選定する必要があります。

 

 

公差等級(IT等級)の選び方

寸法公差の厳しさを表す指標として、国際規格であるISOによって「公差等級(IT等級)」が定められています。  ITはInternational Toleranceの略です。  この等級は、ベアリングそのものではなく、ベアリングが取り付けられる相手部品、すなわち軸やハウジングの加工精度に対して適用されるもの です。  等級は数字で表され、数字が小さいほど公差の幅が狭く、より高い加工精度が求められることを意味します。

 

一般的な産業機械の場合、ベアリングを取り付ける軸にはIT6、ハウジングの穴にはIT7の公差等級が推奨されることが多いです。  ただし、工作機械の主軸のように極めて高い回転精度が求められる用途では、IT5やIT4といった、さらに厳しい公差等級が選定されます。

 

ここで、IT等級とJISで定められる公差記号の関係 について補足しますが、 JISのはめあい公差の表記(例:h6)は、2つの要素で構成されています。

 

アルファベット(hの部分)は「公差域クラス」と呼ばれ、基準寸法に対して公差がどの位置にあるかを示します。  例えば、hは基準軸、gはそれより細い軸、そして数字の「6」が「IT基本公差等級」そのものを表します。 つまり、

  • h5 は、公差域クラスが h で、IT基本公差等級が IT5 であることを意味します。
  • h6 は、公差域クラスが h で、IT基本公差等級が IT6 であることを意味します。

 

JISはめあい公差クラスの例(ハウジング材質が鋳鉄・鋼の場合)

適用対象 IT等級 JIS公差クラス はめあいの種類 備考
IT6 g6 すきまばめ 軸が穴より常に小さい
h6 すきまばめ 基準軸
js6 中間ばめ すきまにも、しまりにもなりうる
k6 中間ばめ
m6 しまりばめ 軸が穴より常に大きい
p6 しまりばめ
ハウジング穴 IT7 G7 すきまばめ
H7 すきまばめ 基準穴として最も一般的に使用される
JS7 中間ばめ
K7 中間ばめ
M7 しまりばめ
P7 しまりばめ

 

もちろん、公差を厳しくすればするほど加工コストは上昇します。  このため、機械に求められる性能とコストのバランスを考慮して、最適な公差等級を選択することが大切です。

 

 

温度変化によるはめあいの影響

機械の運転中、ベアリングは内部の摩擦や外部からの熱伝導によって発熱します。  この温度変化は、はめあいの状態に大きな影響を与えるため、設計段階で必ず考慮しなければなりません。

 

特に重要なのが、内輪と軸のしまりばめです。  通常、運転中のベアリング内輪は、軸よりも温度が高くなります。  鋼材同士であっても、温度の高い内輪の方が熱膨張量が大きくなるため、結果として軸とのしまりばめは緩んでしまいます。  この温度差によるしめしろの減少量は非常に大きく、特に高速回転する機械では支配的な要因となることもあります。

 

したがって、設計者は運転時の温度上昇を見越して、常温でのしめしろをあらかじめ大きく設定しておく必要があります。 もしこの配慮がなければ、運転温度に達した際に有効なしめしろが失われ、クリープが発生するリスクが高まります。

 

 

低温環境での考慮点

逆に、寒冷地で使用される機械など、極めて低温の環境では、温度上昇とは逆の現象が起こります。  機械全体が冷やされると、各部品は収縮します。  ここで注意が必要なのは、ハウジングにアルミニウム合金などの鋼とは異なる材料を使用している場合です。

 

アルミニウム合金は鋼よりも熱収縮率が大きいため、低温環境下では鋼製のベアリング外輪よりも大きく収縮します。  その結果、常温ではすきまばめや中間ばめであっても、低温時には強いしまりばめとなり、ベアリングの内部すきまを過度に減少させてしまう可能性があります。

 

あくまでも推測ですが、例えば冷凍倉庫内で稼働する搬送装置や、寒冷地仕様の建設機械などがこれに該当すると考えられます。  このような場合は、低温時の収縮を見越して、常温では通常より緩めのはめあい(すきまを大きめに取る)を選定するか、C3やC4といった大きめの内部すきまを持つベアリングを使用するなどの対策が必要です。

 

 

ハウジング材質による公差の選定

標準的なはめあいの推奨値は、多くの場合、ハウジングが鋳鉄や鋼でできていることを前提 としています。  もし、軽量化などの目的でアルミニウム合金のような軽合金をハウジングに使用する場合は、公差の選定に注意が必要です。

 

軽合金は、鋳鉄や鋼に比べて主に二つの点で特性が異なります。

  1. 熱膨張係数が大きい:アルミニウム合金の熱膨張係数は鋼の約2倍です。  そのため、機械全体の温度が上昇すると、鋼製のベアリング外輪よりもアルミ製ハウジングの方が大きく膨張し、はめあいが緩む方向に変化します。
  2. 剛性が低い(ヤング率が低い):アルミニウム合金の剛性は鋼の約1/3です。 そのため、同じしまりばめで外輪を圧入しても、ハウジングが変形しやすく、期待した固定力が得られない可能性があります。

これらの理由から、軽合金製ハウジングを使用する場合は、鋳鉄や鋼製ハウジングの場合よりも一段階強いしまりばめ(締まり側の公差)を選定するのが一般的です。

ハウジング材質 荷重条件 軸方向移動 推奨公差クラス はめあいの種類
鋳鉄・鋼 外輪回転 不要 P7 しまりばめ
内輪回転(固定側) 不要 K7 中間ばめ
内輪回転(自由側) 必要 H7 すきまばめ
軽合金 外輪回転 不要 R7 しまりばめ
(アルミニウム等) 内輪回転(固定側) 不要 M7 中間ばめ
内輪回転(自由側) 必要 G7 すきまばめ

 

 

圧入が必要になる条件とは

圧入とは、しまりばめを実現するための代表的な組立方法です。   部品を強固に固定する必要がある場合、特に大きな荷重がかかる機械や、トルクを確実に伝えたい箇所で採用されます。

 

例えば、鉄道車両や粉砕機のように非常に大きな荷重を受けるベアリングでは、クリープを防ぐために強いしまりばめが必須となり、圧入による取り付けが行われます。  圧入を行うにはプレス機などの専用設備が必要で、組立や分解には大きな力が必要です。

注意点として、圧入によって部品を損傷させずに分解することは困難になる場合があります。  このため、定期的なメンテナンスで分解が必要な箇所については、圧入を避けるか、あるいは分解しやすい構造を工夫する必要があります。

 

 

内部すきまの変化を必ず考慮する

しまりばめを選定する際に、設計上最も注意すべき点の一つが、ベアリングの「内部すきま」の変化 です。  内部すきまとは、ベアリング内部に設けられた微小な遊びのことで、これが無いとベアリングはスムーズに回転できません。

 

しまりばめで内輪を軸に圧入すると、内輪は外側に押し広げられます。 この変形によって、ベアリングの内部すきまは減少してしまうのです。  同様に、外輪をハウジングにしまりばめで取り付けると、外輪が内側に圧縮され、やはり内部すきまは減少します。

 

もし、この減少量が大きすぎて内部すきまがゼロ、あるいはマイナス(予圧状態)になると、ベアリング内部で過大な力が発生します。  その結果、異常な発熱や回転トルクの増大を引き起こし、ベアリングが早期に破損する原因となるのです。  このため、しまりばめを選定する際は、すきまの減少量を計算し、運転状態で適切なすきまが残ることを必ず確認しなければなりません。

 

 

ベアリング取付部の形状を保証する幾何公差

ベアリングの性能を正しく引き出すためには、はめあい部の直径を管理する寸法公差だけでは不十分です。  部品の「形状」そのものの精度を規制する「幾何公差」も同時に考慮する必要があります。ここでは、見落とされがちですが非常に重要な、幾何公差や関連部分の設計について解説します。

 

幾何公差の重要性と種類

幾何公差とは、部品の形状が、幾何学的に正しい円や直線、平面からどれだけずれているかを規制するもの です。  たとえ直径が寸法公差の範囲内であっても、形状が楕円であったり歪んでいたりすると、ベアリングは正しく機能しません。

 

不正確な形状の軸やハウジングにベアリングを取り付けると、軌道輪が変形してしまいます。 その結果、ベアリング内部の荷重が不均一になり、振動や騒音の発生、さらには早期破損の原因となるのです。

 

ベアリングの取り付けで特に大切となる幾何公差には、形状そのものを規制する「真円度」や「円筒度」、そして取り付け基準面との位置関係を規制する「振れ」などがあります。

 

 

真円度と円筒度の指定方法

真円度とは、部品の断面形状が、数学的な真円からどれだけ外れているかを示す指標 です。 また、円筒度は、部品全体の形状が、完全な円筒からどれだけずれているかを規制するもので、真円度や真直度などを包括した、より厳しい公差といえます。

 

はめあい面にこれらの形状誤差があると、ベアリングをはめ込んだ際に接触圧力が不均一になります。  圧力が高い部分ではベアリングの軌道輪が局部的に変形し、逆に圧力が低い部分ではクリープが発生する起点となる可能性があります。

 

一般的に、はめあい面の円筒度は、寸法公差のIT等級よりも1~2等級厳しいものが要求されます。  例えば、軸の寸法公差をIT6で指定した場合、円筒度はIT5やIT4で規制することが推奨されます。

 

 

肩の振れ精度が寿命を左右する

ベアリングは、軸やハウジングに設けられた「肩」と呼ばれる段差に端面を当てて、軸方向の位置決めを行います。 この肩面の精度、特に「振れ」の精度は、ベアリングの寿命に直接影響を与える重要な要素 です。

 

振れとは、部品を回転させたときに、その表面がどれだけ位置ずれするかを示す値です。 もし、軸の肩面が回転中心に対して傾いている(軸方向の振れが大きい)と、ベアリングは傾いた状態で取り付けられてしまいます。

 

この傾きは、ベアリング内部に無理な力を発生させ、軌道面の端に過大な応力が集中する「エッジロード(端部集中荷重)」という現象を引き起こします。 エッジロードはベアリングの寿命を著しく低下させる最も有害な要因の一つであるため、肩の振れは厳しく管理する必要があります。

 

 

はめあい面の表面粗さの基準

はめあい面の仕上げ状態、すなわち「表面粗さ」も、はめあいの品質を左右します。  表面が粗すぎると、圧入時に表面の凹凸の山が潰れてしまい、設計した通りのしまりばめ効果が得られなくなる可能性があります。  この有効しめしろの減少に加え、粗い表面は局部的な応力集中を引き起こし、疲労寿命を低下させる一因にもなります。

 

一般的に推奨されるはめあい面の算術平均粗さRaは、ベアリングの大きさによって異なります。  例えば、小形ベアリングを取り付ける軸の場合、Raは0.8μm以下が推奨 されます。 一方、ハウジングの穴は、軸ほど厳しい仕上げは要求されず、1.6μm以下が目安 となります。

 

通常、これらの表面粗さは旋削加工で達成可能ですが、回転の振れや音響に対して特に厳しい要求がある場合には、研削仕上げが推奨されます。

 

 

総合的な精度と表面粗さの推奨値

ベアリングの等級に応じて推奨される、寸法公差、幾何公差、表面粗さの関係を以下の表にまとめます。

軸受等級 部品 対象 寸法公差等級 幾何公差等級 (円筒度/振れ) 表面粗さ Ra (μm)
普通級 はめあい部 IT6 IT5 ≦1.6
肩部 - IT5 (アキシャル振れ) -
ハウジング はめあい部 IT7 IT6 ≦3.2
肩部 - IT6 (アキシャル振れ) -
精密級 はめあい部 IT5 IT3 - IT4 ≦0.8
(P5, P4) 肩部 - IT3 (アキシャル振れ) -
ハウジング はめあい部 IT6 IT4 - IT5 ≦1.6
肩部 - IT4 (アキシャル振れ) -

(注) 上記は一般的な指針です。より高精度な軸受では、さらに厳しい公差が要求されます。

 

 

肩高さと隅の丸みの設計基準

ベアリングを支持する肩の形状設計には、二つの重要なルールがあります。それは「肩高さ」と「隅の丸み」の寸法 です。

 

まず、肩高さについては、ベアリングの端面を十分に支持できる高さが必要です。 具体的には、ベアリングの面取り寸法よりも肩が高くなるように設計しなければなりません。 これにより、ベアリングの端面が肩にしっかりと接触し、安定した支持が可能になります。

 

一方で、肩を高くしすぎることにも注意が必要です。肩の径が大きすぎると、ベアリングの分解時にプーラーなどの工具をかけるスペースがなくなったり、シール付きベアリングの場合はシール部分に干渉したりする可能性があります。  そのため、肩の高さ(径)は、ベアリングメーカーがカタログの寸法表で推奨している肩径(da, Da)の値を基準に設計するのが最も安全で確実 です。

 

次に、隅の丸み(フィレット半径)です。応力集中を避けるため、肩の根元には必ず丸みを設けますが、この半径が大きすぎるとベアリングの面取り部分と干渉してしまいます。  そのため、隅の丸みの半径は、ベアリングの面取り寸法よりも必ず小さく設計する必要があります。  このルールを守らないと、ベアリングが傾いて取り付けられ、早期破損の原因となります。

 

 

最適なベアリング公差設計の要点

ここまで解説してきたように、最適なベアリング取付部の公差設計とは、単に一つの数値を決めることではありません。  まず、はめあいの基本原則に基づき、荷重条件から「しまりばめ」か「すきまばめ」かを選択します。  次に、寸法公差や公差等級を決定し、それに伴う内部すきまの変化を必ず確認することが必要です。

 

そして、寸法だけでなく、真円度や円筒度、振れといった幾何公差を適切に指定し、さらには表面粗さや肩の形状といった細部に至るまで配慮することが、ベアリングの性能を100%引き出すための鍵となります。  これらの要素を総合的に検討し、機械に求められる性能とコストのバランスを取りながら、最適な設計を目指しましょう。

 

  • はめあいには「すきま」「しまり」「中間」の3種類がある
  • 回転荷重がかかる軌道輪は「しまりばめ」にする
  • 静止荷重がかかる軌道輪は「すきまばめ」にできる
  • しまりばめはクリープ現象を防止するために不可欠
  • 荷重の大きさに応じてしまりばめの強さを調整する
  • 寸法公差の組み合わせではめあいの状態が決まる
  • 公差等級(IT等級)は数字が小さいほど高精度
  • 軸はIT6、ハウジングはIT7が一般的な基準
  • しまりばめはベアリングの内部すきまを減少させる
  • 温度上昇による熱膨張も内部すきまを減少させる
  • 内部すきまの減少量を見越してすきまクラス(C3など)を選ぶ
  • 寸法公差だけでなく幾何公差の指定も大切
  • はめあい面の真円度や円筒度は寸法公差より厳しくする
  • 肩の振れ精度はベアリングの傾きを防ぎ寿命を守る
  • 肩の高さはベアリングの面取りより高くする
  • 隅の丸みはベアリングの面取りより小さくする
  • はめあい面の表面粗さも適切に管理する

 

以上です。

 

まとめ記事
転がり軸受と、オイレスベアリングが、同じ空間に並んでいる画像
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