ねじ規格の比較ガイド:メートル・ユニファイ・ウィットウォースの違い

 

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ここでは ねじの規格である 「メートル・ユニファイ・ウィットウォースの違い」についてのメモです。

 

機械設計では海外製の部品を設計に組み込んだり、輸入機械のメンテナンスを行ったりする場面では、メートルねじ、ユニファイねじ、ウィットウォースねじといった異なる規格のねじに遭遇します。

 

多くのWEBサイトでは、個々の規格を解説していますが、設計者が現場で本当に知りたい「3つの主要規格を横断的に比較し、どう使い分けるか」という視点に特化した情報は多くありません。  この記事では、メートルねじ・ユニファイねじ・ウィットウォースねじの比較に焦点を当て、それぞれの特徴から寸法、強度、そして選定方法までを、数多くの比較表を用いて網羅的にメモしています。

主要三大規格の全体比較

設計の現場では、まずどの規格体系に属するねじなのかを大まかに把握することが第一歩です。 世界には数多くのねじ規格が存在しますが、締結用として主に使われるのは「ISOメートルねじ」「ユニファイねじ」「ウィットウォースねじ」の3つです。

 

これらの基本的な違いを理解するだけで、海外製の部品を扱う際や、未知のねじを特定する際の大きな手がかりとなります。以下の表で、各規格の核心的な特徴は以下となります。

項目 ISOメートルねじ ユニファイねじ (UTS) ウィットウォースねじ (BSW)
主な規格名 JIS B 0205, ISO 68-1 ANSI/ASME B1.1 BS 84
ねじ山角度 60° 60° 55°
寸法単位 ミリメートル (mm) インチ (inch) インチ (inch)
ピッチ表記 ピッチ (mm) 山数 (TPI) 山数 (TPI)
主な使用地域 全世界(北米を除く) 北米、航空宇宙産業 旧英国製機械、英国の一部産業

この表から、メートルねじとユニファイねじはねじ山の角度が同じ60°で見た目が似ていますが、寸法単位が根本的に異なるため互換性がないことがわかります。

 

一方で、ウィットウォースねじは角度が55°と独特であるため、形状で区別することが可能です。 ユニファイねじとウィットウォースねじは、どちらもインチを基準としていますが、規格としては別物ですので注意が必要です。

 

 

ねじの呼び方と寸法:メートル・ユニファイ・ウィットウォースの比較

規格の全体像を掴んだら、次に図面や仕様書で使われる「ねじの呼び方」を正確に理解する必要があります。 日本で標準のメートルねじ(JIS)、アメリカ製品で多用されるユニファイねじ、そして古い英国機械に見られるウィットウォースねじでは、寸法の表記方法が全く異なります。

 

基本的な表記法の違い

ねじを特定するための基本的な情報は「呼び径(太さ)」と「ピッチ(ねじ山の粗さ)」です。  この2つの情報の表し方が、3つの規格の最も大きな違いと言えます。

規格 表記例 解説
ISOメートルねじ M8 ・呼び径8mmの並目ねじ
・ピッチは標準値のため省略
M8x1.0 ・呼び径8mm、ピッチ1.0mmの細目ねじ
・ピッチの明記が必須
ユニファイねじ 1/4-20 UNC ・呼び径1/4インチ(約6.35mm)
・1インチあたり20山の並目ねじ
ウィットウォースねじ W1/4-20 ・呼び径1/4インチ(約6.35mm)
・1インチあたり20山の並目ねじ

 

 

近似サイズ比較が出来る表

海外から輸入した装置のメンテナンスで、「インチねじをJISのメートルねじに置き換えたい」と考える場面は少なくありません。  しかし、前述の通り各規格に 直接の互換性はないため、あくまで「サイズが近い代替品」を探すことになります。

 

表A:ISOメートル並目ねじ寸法(JIS B 0205-4準拠)

呼び径 (d) ピッチ (P) めねじ内径 (D1)
M1 0.25 0.729
M1.2 0.25 0.929
M1.6 0.35 1.221
M2 0.4 1.567
M2.5 0.45 2.013
M3 0.5 2.459
M4 0.7 3.242
M5 0.8 4.134
M6 1 4.917
M8 1.25 6.647
M10 1.5 8.376
M12 1.75 10.106
M16 2 13.835
M20 2.5 17.294
M24 3 20.752
M30 3.5 26.211
M36 4 31.670

表B:ISOメートル細目ねじ寸法(抜粋)

呼び径 (d) ピッチ (P) めねじ内径 (D1)
M8 1 6.917
M10 1.25 8.647
M10 1 8.917
M12 1.5 10.376
M12 1.25 10.647
M16 1.5 14.376
M20 1.5 18.376
M24 2 21.835

表C:ユニファイ並目ねじ(UNC)寸法(ANSI/ASME B1.1準拠)

呼び径 山数 (TPI) 外径 (mm) めねじ下穴径 (mm)
No.4 40 2.845 2.35
No.6 32 3.505 2.85
No.8 32 4.166 3.50
No.10 24 4.826 4.00
1/4 20 6.350 5.35
5/16 18 7.938 6.80
3/8 16 9.525 8.25
1/2 13 12.700 11.15
5/8 11 15.875 14.05
3/4 10 19.050 17.00
1 8 25.400 22.85

表D:ユニファイ細目ねじ(UNF)寸法(ANSI/ASME B1.1準拠)

呼び径 山数 (TPI) 外径 (mm) めねじ下穴径 (mm)
No.4 48 2.845 2.45
No.6 40 3.505 3.00
No.8 36 4.166 3.60
No.10 32 4.826 4.20
1/4 28 6.350 5.50
5/16 24 7.938 6.90
3/8 24 9.525 8.50
1/2 20 12.700 11.50
5/8 18 15.875 14.50
3/4 16 19.050 17.50
1 12 25.400 23.25

表E:ウィットウォースねじ(BSW)寸法(BS 84準拠)

呼び径 (inch) 山数 (TPI) 外径 (mm) ピッチ (mm)
1/8 40 3.175 0.635
3/16 24 4.763 1.058
1/4 20 6.350 1.270
5/16 18 7.938 1.411
3/8 16 9.525 1.588
1/2 12 12.700 2.117
5/8 11 15.875 2.309
3/4 10 19.050 2.540
1 8 25.400 3.175

 

 

設計の要:強度区分の国際比較

ねじの選定において、寸法と同じくらい重要なのが「強度」です。特に鋼製のボルトは、規格によって強度を示す方法が異なり、これを理解しないと重大な事故につながる可能性があります。

 

メートルねじの強度区分 (ISO/JIS)

メートルねじの場合、「8.8」や「10.9」といった数字で 強度区分 が示されます。これはボルトの頭部に刻印されており、非常に分かりやすい体系です。

  • 最初の数字:公称引張強さ(破断する力)を100で割った値 (単位: MPa)
  • 2番目の数字:降伏点(元に戻らなくなる力)が引張強さの何%かを示す

 

ユニファイねじの強度区分 (SAE)

ユニファイねじでは、主にSAE J429という規格で強度が定められ、「Grade」で呼ばれます。ボルト頭部の放射状の線(ラジアルライン)の本数で識別するのが特徴です。

  • Grade 2: 線なし(低強度)
  • Grade 5: 3本の線(中強度)
  • Grade 8: 6本の線(高強度)

 

ウィットウォースねじの強度区分 (BS)

ウィットウォースねじは歴史が古く、現代のメートルねじやユニファイねじほど体系化された強度区分が一般的ではありません。 しかし、BS 916などの旧英国規格では、材質と強度に応じてアルファベットの文字(例: R, T, V)をボルト頭部に刻印する規定がありました 。

 

 

強度区分 近似値比較表

異なる規格の強度を比較できるよう、近似的な値を以下の表にまとめました。設計で強度計算を行う際の参考にしてください。

規格体系 強度等級 (頭部刻印) 公称引張強さ (MPa) 公称引張強さ (PSI) 相当する強度レベル
ISO/JIS (メートル) 4.8 420 約 60,900 低強度
SAE (ユニファイ) Grade 2 (線なし) 510 (~3/4") 74,000 低強度
ISO/JIS (メートル) 8.8 830 約 120,400 中強度 (高張力)
SAE (ユニファイ) Grade 5 (3本線) 827 120,000 中強度 (高張力)
BS (ウィットウォース) R 695 - 850 100,800 - 123,300 中強度 (高張力)
ISO/JIS (メートル) 10.9 1040 約 150,800 高強度 (高張力)
SAE (ユニファイ) Grade 8 (6本線) 1034 150,000 高強度 (高張力)

注意: この表はあくまで近似的な比較です。各規格で試験方法や定義が異なるため、厳密な設計では必ず元の規格書を参照してください。

 

 

用途で選ぶ:並目ねじと細目ねじの使い分け

メートルねじとユニファイねじのどちらにも、標準的なピッチの「並目」と、それより細かいピッチの「細目」が存在 します。

 

設計要件に応じてこれらを正しく使い分けることが、信頼性の高い製品開発の鍵となります。(ウィットウォースねじにも並目BSWと細目BSFがありますが、現在では特殊な保守用途に限られるため、ここではメートルねじとユニファイねじの比較に絞って解説します。)

項目 並目ねじ (メートル並目 / UNC) 細目ねじ (メートル細目 / UNF)
強度 標準 高い(有効断面積が大きい)
耐振動性 標準 高い(リード角が小さく緩みにくい)
精密調整 不向き 適している(1回転での移動量が少ない)
組立性 容易(ねじ山が頑丈で扱いやすい) 注意が必要(ねじ山が損傷しやすい)
かじり・焼き付き 発生しにくい 発生しやすい(接触面積が大きい)
入手性・コスト 非常に良い・安価 悪い・高価
推奨用途 一般的な部品締結全般 高い強度や耐振動性が求められる箇所、微調整が必要な箇所

特別な理由がない限り、入手性や組立性の観点から並目ねじを標準として採用するのが基本です。  細目ねじは、その採用を正当化する明確な工学的理由がある場合にのみ、慎重に検討すべき選択肢と言えます。

 

 

実践ガイド:未知のねじの識別と選定フロー

未知のねじを特定する手順

輸入機械のメンテナンスなどで、規格が不明なねじに遭遇した場合は、以下の手順で体系的に特定作業を進めることができます。

 

  1. 外径を測定する:まずノギスでねじの外径を正確に測定します。測定値が整数のミリメートルに近いか、あるいは単純なインチの分数に換算できるかを確認し、メートルねじかインチねじかの見当をつけます。
  2. ピッチ(山数)を測定する:ピッチゲージをねじ山に当て、光が漏れず完全に一致するものを探します。これが最も確実な識別方法です。メートルねじならピッチ(mm)、インチねじなら山数(TPI)が判明します。
  3. ねじ山角度を確認する:可能であれば、ねじ山形状ゲージなどで角度を確認します。60°か55°かを見分けることで、ユニファイねじとウィットウォースねじを区別できます。
  4. 規格表と照合する:測定で得られた「外径」と「ピッチ/山数」の組み合わせを、本記事の比較表や各種規格表と照合し、最終的に規格を特定します。

 

 

設計要件からの選定フロー

新規にねじを選定する場合は、以下の思考フローで進めることで、論理的で間違いのない選定が可能になります。

  1. 基本規格の決定:製品のターゲット市場はどこか?(日本/欧州→メートルねじ、北米→ユニファイねじ)
  2. 詳細仕様の絞り込み:高い強度や耐振動性が必要か?(Yes→細目ねじ、No→並目ねじ)
  3. 強度と材質の確定:締結部にどれくらいの荷重がかかるか?腐食環境ではないか?(荷重計算→強度区分決定、環境→材質決定)
  4. 寸法の最終決定:締結する部材の厚さは?(厚さ→ねじ長さ決定)

 

 

メートル・ユニファイ・ウィットウォースねじ規格の選び方まとめ

この記事では、設計者が実務で直面する課題に対応できるよう、主要な3つのねじ規格を比較し、一目でわかるように整理しました。  最後に、規格の違いや重要なポイントをまとめます。

 

  • 新規設計の基本は国際標準であるISOメートルねじとする
  • 北米市場や航空宇宙分野ではユニファイねじの知識が不可欠
  • 旧式設備の保守ではウィットウォースねじなどの歴史的規格も考慮に入れる
  • ねじ山角度(60°か55°か)は互換性を決める根本的な要素
  • メートルねじはピッチ(mm)、インチねじは山数(TPI)で目の粗さを示す
  • 特別な理由がなければ、入手しやすく扱いやすい並目ねじを選ぶ
  • 高強度や耐振動性が求められる場合に限り、細目ねじの採用を検討する
  • 細目ねじは高性能だが、かじりやすく高価である点に注意が必要
  • 強度区分を正しく理解し、ボルトとナットを適切に組み合わせる
  • 使用環境(荷重、温度、腐食性)に応じて最適な材質を選定する
  • JISやANSI/ASMEといった各国の規格とISOとの関係を把握しておく
  • ねじの選定は強度、市場、コスト、入手性を総合的に判断する
  • 十分な強度を確保するため、ねじのかみ合い長さを呼び径の1〜1.5倍以上確保する
  • 図面には規格、ピッチ、強度区分まで曖昧さなく明確に記載する

 

以上です。