焼き入れの種類

2019年9月5日

 

ここでは 焼き入れ をする場合の選択肢である 「焼き入れの種類」 についてメモしています。

焼き入れの種類

ズブ焼入れ

表面、内部ともに均一に硬度を得る。(真空・ソルト・他)全体焼入ともいう

 

大気焼き入れ

燃焼に通常の大気(空気)を用いる安価、もっとも基本的な構造、特殊鋼においては酸化・脱炭するため不向き

 

雰囲気焼き入れ

目的に合わせて雰囲気ガスを調整して行う雰囲気ガスは不活性ガスを使用することが多い。(酸化・脱炭防止)

 

塩浴焼き入れ

処理品を塩浴中に浸漬して加熱した後、低温ンの塩浴に入れて焼き入れする。熱処理方法としてはマルテンパーになる、酸化・脱炭は起きにくい

 

真空焼き入れ

真空中で焼入れ、光沢性に富む脱気を行い炉内の大気を破棄し、真空炉で熱処理を行うため、酸化・脱炭が起きない冷却は窒素ガスを使用する、素材よりも金型や部品などの完成に近い状態の物に使用される

 

表面焼き入れ

表面から数ミクロン~数ミリの範囲で硬度を得る。(浸炭・窒化・高周波・他)

 

浸炭焼き入れ

焼き入れ業界の割合40%のシェアで、値段は安い。一般的には鋼表面から炭素を拡散固溶させそのまま全体に焼き入れをお行うことで表面のみ硬化させる。浸炭深さ0.8mm~1.0mm、内部はソフトで表面が硬い。 非常に衝撃に強い

有効硬化層:規定硬度が確保されている深さ(Hv550)
全体硬化層:炭素がしみこんでいる全体深さ

炭素含有量の少ない鋼も浸炭焼入れできる。(SCM420など) 炭素含有量の高い鋼に使うと、過剰炭素になってしまいもろくなってしまう。炉内雰囲気の炭素量が多いと浸炭になる。金属の炭素量が多いと脱炭となる。(含有量がならされてしまう)

 

固形浸炭焼き入れ

木炭を主な材料と浸炭材を添加し、密閉後900℃~1000℃で加熱。染み込んだ製品を均一化させる焼準熱処理を行ったあとに焼入れ→焼き戻しを行う

 

液体浸炭焼き入れ

ソルトバスで浸炭した後、油焼き入れをする。浸炭と同時に窒化も受けるため、浸炭窒化処理の一方法。 (衰退気味)  防炭剤が塩浴に溶け出してしまうため、防炭は行えない。歪が少ない、納期早い、現状コスト意識が高い企業様が利用している

 

ガス浸炭焼き入れ

炉内で浸炭性ガス雰囲気ガス化でワークを加温し、炭素を拡散させる。 (現在の主流) 大量生産に適している、自動化可能、品質管理がしやすい、比較的安価、浸炭深さを自由に調整できる

 

真空浸炭焼き入れ

高温短時間処理が可能、表面に不完全焼入層が生じしにくい、複雑形状の浸炭が可能、SUSにも浸炭が (注目されている) 行える。ガス浸炭と比べ、浸炭のばらつきがない。自由度が高い分コストが高い

 

プラズマ浸炭焼き入れ

短時間処理が可能(ガス浸炭の約半分)、チタン・SUSにも浸炭が行える、浸炭層の制御が容易(注目されている) 放電で発生したプラズマの中で電気化学的作用によりイオンが表面に作用し浸炭。低温処理、低歪み、耐食性を損なわない時効硬化。宇宙分野で利用されている。

 

高周波焼き入れ

高周波電源に接続された加熱コイルに、電流を流しジュール熱によって鋼を加熱する。加熱された部分に水や冷却材(割れ防止剤等)で急冷し、焼き入れする。高い自由度、部分的、表面だけ硬くできる、深さを制御できる。 急速加熱、急速冷却ができるため、熱を加える時間が短い。よって変寸があまりない。コイルは手作りで行っている。(熟練者を要する)

 

メリット

  • 表面硬さが高く、優れた耐摩耗性
  • 表面圧縮残留応力が大きく、優れた疲れ強さ
  • 微細な組織で優れた延性、靭性
  • 変寸が少ない

デメリット

  • 処理時間が短いため、わずかな変更が大きく品質に影響する
  • コイルは職人が作るが職人が減少している
  • 凹部に昇温不足、凸部は過温になる
  • 6mm以下の部位は溶融の可能性があり処理が困難

高周波焼き入れの中でも数種類ある

  • 低周波:深くじっくり熱を入れる、深く硬化層を入れる
  • 中波層:中間
  • 高周波:浅く早く加熱する、表面だけが硬い
  • 有効硬化深さ1mm、全硬化層深さ2mm

 

窒化

窒素が鋼中の合金元素と反応して硬い窒化物を形成することで表面を硬化させる方法を 窒化 という。

 

クライオ処理をする目的

原子から緻密に並べるのが目的。音響関係の部品に多くに使われる。クライオは時間がたっていてもかけられる。すぐやる必要はない。

 

蒸着法

鋼の最表面層に化合物を密着形成させて耐摩耗性、耐食性などの特性を付与する方法。コーティング、めっき技術の一種

 

CVD:C(Chemical)V(Vapor)D(Deposition)

化学蒸着法。目的とする薄膜の構成元素を含むガスを加熱した素材に供給し化学反応によりきわめて薄い膜を堆積させる

 

熱CVD

熱エネルギーによって原料ガスに生じる分解生物や化学反応を利用し、薄膜を堆積させる方法。500~1200℃の成膜温度で処理を行う

 

プラズマCVD

高周波、マイクロ派等により原料ガスをプラズマ化させ、素材の表面に薄膜を析出堆積させる。300~600℃と低温で成膜処理を行う。

 

光CVD

紫外線やレーザなど、光のエネルギーによって原料ガスの分解・反応を促進し、薄膜を堆積させる

ポイント:CVDで生成可能な被膜=炭化チタン(TiC)及び炭窒化チタン膜(TiCN)

 

PVD:P(Physical)V(Vapor)D(Deposition)

物理蒸着法。目的とする薄膜の材料を、様々な方法で蒸発させ、その蒸発物質を物理的手法で素表面に堆積させ、きわめて薄い膜を生成させる

PVD:真空蒸着は真空中で成膜う材料を加熱し、蒸発または昇華させて、対象物表面に蒸発物質を堆積させ、薄膜を形成する方法。金属以外の有機物に多く用いられる、高純度の皮膜を得られる。密着力がやや弱い

 

PVDで生成可能な皮膜

  • TiN  :窒化チタン Ti(チタン)+N(窒素)
  • TiCN :炭窒化チタン Ti(チタン)+C(炭素)+N(窒素)皮膜の重ね方により色が異なる。
  • TiALN:窒化チタンアルミ膜 Ti(チタン)+AL(アルミ)+N(窒素)
  • CrN  :窒化クロム膜 Cr(クロム)+N(窒素)
  • DLC  :ダイヤモンドライクカーボン Diamond Like Carbon(ダイヤモンド状カーボン)

 

イオンプレーティング

蒸発物質をプラズマに通過させることで+の電荷をもたせた対象物に衝突させて薄膜を堆積させる。

 

以上です。

 

まとめ記事
シャフトを高周波焼き入れしているイメージ画像(AI作成)
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