ステッピングモーターとサーボモーターの違いを徹底比較

2017年2月13日

 

―――――――――――――――――――

当ブログでは、読者の皆様により分かりやすく情報をお伝えするため、AIツールを「文章の校正」に活用しています。

―――――――――――――――――――

 

ここでは モーターの種類 である「ステッピングモーターとサーボモーターの違い」についてのメモです。

 

機械設計において、モーターの選定は装置の性能を左右する重要なプロセスです。 特に精密な位置決めが求められる場面で候補となる、ステッピングモーターとサーボモーター。私もかつて、その違いが明確に分からず、どちらを選ぶべきか選定に頭を悩ませた経験があります。

 

両者の特性を深く理解しないまま選択してしまうと、コストの増大や性能不足といった失敗や後悔につながる可能性も否定できません。

 

この記事では、機械設計者が最適な選択をするために、ステッピングモーターとサーボモーターの比較を行い、それぞれのメリットやデメリットを明らかにしていきます。 まず、両モーターの心臓部である基本的な動作原理の違いから解説を始めます。 次に、トルクや速度といった具体的な性能面での比較を行い、それぞれの得意な領域を明確にします。 さらに、設計者にとって避けて通れないコストや制御の難易度といった実用的な選定基準にも触れ、最終的に、どのような用途にどちらのモーターが最適なのか、具体的な選び方までを網羅的に解説することで、疑問を解消します。

基礎から学ぶ!ステッピングモーター サーボモーター 違い

モーターの性能や特性の違いは、その根本的な動作原理に起因します。  ここでは、両者の最も本質的な違いである制御方式と、それに伴う信頼性の差について解説します。

 

制御方式のオープンループとは?

ステッピングモーターの制御方式は、基本的に「オープンループ」と呼ばれます。 これは、コントローラーがモーターに対して一方的に「これだけ動きなさい」というパルス信号を送るだけのシンプルな仕組みです。  モーター側から「指令通りに動けたか」という返事(フィードバック)がないため、オープンループ(開ループ)という名前がついています。

 

この方式のメリットは、構成が非常にシンプルで低コストな点にあります。 コントローラー、ドライバー、モーターという 最小限の構成で精密な位置決めが可能であり、複雑な調整も必要ありません。

 

一方で、デメリットは信頼性に関するものです。 何らかの理由でモーターが指令通りの動きができなかった場合、例えば予期せぬ大きな負荷がかかった時でも、コントローラーはそのズレを検知できません。 このため、設計段階で想定される負荷に対して十分な余裕を持たせたトルク設計が不可欠となります。

 

 

フィードバック制御のクローズドループ

サーボモーターは、「クローズドループ」という制御方式を採用 しています。  これは、モーターの動きを常に監視し、指令通りに動いているかを確認しながら制御する、より高度な仕組みです。

 

具体的には、モーターの軸に搭載された「エンコーダ」というセンサーが、現在の回転位置や速度を常に検出します。 その情報をドライバー(制御装置)にフィードバックし、ドライバーは指令値と現在値の差(偏差)を計算します。 そして、この 偏差がゼロになるように、モーターへ流す電流をリアルタイムで調整し続ける のです。

 

この方式の最大のメリットは、高い信頼性と精度です。 予期せぬ負荷がかかって位置がズレそうになっても、システムが即座にそれを検知して補正しようと働きます。  そのため、オープンループ制御で起こりうる位置ずれのリスクが原理的にありません。 ただし、このフィードバック機構のためにシステム構成が複雑になり、コストが高くなるという側面も持ち合わせています。

 

 

位置情報を検出するエンコーダの役割

前述の通り、クローズドループ制御の心臓部と言えるのがエンコーダです。  エンコーダはモーターの回転軸に取り付けられた高精度のセンサーで、軸がどれだけ回転したかを非常に細かく検出する役割を担います。

 

エンコーダの性能は、モーターの位置決め精度、つまり「分解能」に直結します。  例えば、近年の高性能なサーボモーターには、1回転を数百万以上に分割して検出できる超高分解能エンコーダが搭載されています。これにより、極めて精密な位置制御や滑らかな速度制御が実現可能になります。

 

このように、エンコーダはサーボモーターが「指令に対して忠実に動作する」ための「目」として機能する、不可欠なコンポーネントです。  エンコーダの存在が、ステッピングモーターとの決定的な違いの一つを生み出していると考えられます。

 

 

位置ずれリスクとなる脱調の有無

機械設計において、信頼性は最も重要な要素の一つです。  その観点から、両モーターの決定的な違いが「脱調」という現象の有無です。

 

脱調とは、ステッピングモーター特有の現象 で、急な加減速や過大な負荷によって、モーターの回転がコントローラーからのパルス信号に追従できなくなる状態を指します。  オープンループ制御の最大の問題点は、この脱調が発生してもシステム側で検知できないこと です。  一度脱調すると、指令上の位置と実際の位置の間にズレが生じ、そのズレは原点復帰を行うまで累積し続けます。

 

これは、加工不良や装置の破損に直結する深刻なリスクとなり得ます。 ただし、設計段階で負荷を正確に予測し、十分なトルクのマージンを確保することで、この脱調のリスクは大幅に低減できることも事実です。

 

一方、サーボモーターはクローズドループ制御により、原理的に脱調しません。  もしモーターの能力を超える過大な負荷がかかった場合、指令位置と実位置の偏差が異常に拡大します。システムはこの異常を即座に検知し、「過負荷アラーム」を発生させて安全にモーターを停止させます。  このように、サーボモーターは異常事態に対して予測可能で制御された対応を取るため、システムの信頼性が非常に高い と言えます。

 

 

性能で比較するステッピングモーター サーボモーター 違い

モーターを選定する上で、トルクや速度といった具体的な性能指標の比較は欠かせません。ここでは、機械の動作に直接影響する性能特性の違いを詳しく見ていきます。

 

重要指標であるトルク特性の比較

モーターの力を示すトルクは、選定における最も基本的な指標です。ステッピングモーターとサーボモーターでは、回転速度に対するトルクの特性が大きく異なります。

 

ステッピングモーターは、停止時や低速回転域で非常に高いトルクを発揮するのが最大の特徴です。  しかし、回転速度が上がるにつれて、そのトルクは急激に低下していく傾向があります。  ステッピングモーターのトルク は 一般的なkW(キロワット)からトルクを想定できない のですが、ステッピングモーターは比較的ゆっくりとした動きで、大きな力が必要な用途に適しています。

 

一方、サーボモーターは、低速から定格の高速回転域まで、比較的安定したフラットなトルクを発生させることができます。 さらに、短時間であれば定格トルクを大幅に上回る「瞬時最大トルク」を出すことができ、重いものを素早く加速させる能力に長けています。

特性 ステッピングモーター サーボモーター
得意な速度域 低速〜中速域 低速〜高速域
トルク特性 低速で高く、高速で低下 広い速度域で安定
瞬発力 - 瞬時最大トルクにより高い

このトルク特性の違いから、長い距離を高速で移動させる用途にはサーボモーターが、短い距離を確実な力で動かす用途にはステッピングモーターが選ばれることが多くなります。

 

 

モーターのトルクに対するサイズの違い

「同じトルクならサイズはどちらが大きいのか」という疑問は、設計者にとって非常に重要 です。こ の問いに対する答えは、どの領域のトルクを基準にするかで変わるため、一概には言えません。

 

まず、停止時や低速域での力強さを基準にするならば、ステッピングモーターはサーボモーターに比べて「小型で高トルク」であると言えます。 これは、ステッピングモーターがローターとステーターに多くの歯(極)を設け、電磁石の力でがっちりとかみ合わせることでトルクを生み出す構造に由来します。

 

一方で、サーボモーターは高性能な永久磁石と高度な電流制御によって、高速回転で高い出力を生み出す設計思想に基づいています。 そのため、モーター単体で比較すると、同じ取付角寸法でも低速トルクはステッピングモーターに劣る場合があります。

 

しかし、ここで大切なのは、サーボモーターは高速回転が得意なため、減速機と組み合わせることでトルクを増幅させるのが一般的であるという点 です。例えば、大きな減速比を持つ減速機を使えば、より小型のサーボモーターで最終的に大きなトルクを得ることが可能になります。 これにより、装置全体の小型化や軽量化に貢献するケースも少なくありません。

 

以上の点を踏まえると、モーター単体のサイズで判断するのではなく、減速機を含めた駆動システム全体として、要求される速度とトルクを最も効率的に実現できるのはどちらか、という視点で選択することが大切になります。

 

 

得意な回転速度の領域はどこか

前述のトルク特性とも関連しますが、両モーターにはそれぞれ得意とする回転速度の領域があります。

 

ステッピングモーターは、トルクが最も効率的に発揮できる1000rpm以下の低速域での使用が一般的 です。 これ以上の高速回転も可能ですが、トルクが大幅に低下するため、実用的ではないケースが多く見られます。 特に、停止状態から素早く動き出す応答性には優れています。

 

対照的に、サーボモーターは非常に広い速度範囲で優れた性能を発揮します。 最新のACサーボモーターの中には、定格回転速度3000rpm、最高回転速度6700rpm以上に達するモデルも存在し、高速性が求められるアプリケーションの標準的な選択肢となっています。 低速から高速まで、滑らかで安定した回転を維持できるのが強み です。

 

 

高精度な位置決めと分解能の関係

精密な位置決め能力は、両モーターが選ばれる大きな理由ですが、その精度と分解能の考え方には違いがあります。

 

ステッピングモーターの分解能は、モーター固有の「ステップ角」によって決まります。例えば、標準的な5相ステッピングモーターのステップ角は0.72°です。 これは、1パルスの指令で0.72°回転することを意味します。 マイクロステップ駆動という技術でステップ角をさらに細かく分割し、見かけ上の分解能を上げることは可能ですが、モーター自体の機械的な精度が最終的な位置決め精度の上限となります。

 

一方、サーボモーターの分解能は、搭載されているエンコーダの性能に依存 します。  前述の通り、近年のエンコーダは非常に高分解能であり、理論上はステッピングモーターをはるかに上回る細かな位置決めが可能です。指令値と現在値のズレを常に補正し続けるため、高い絶対精度を維持できます。

 

 

停止時の振動ハンチングと対策

モーターが目標位置で静かに停止できるかどうかも、用途によっては非常に大切な要素 です。

 

ステッピングモーターは、指令パルスの入力が止まると、電磁石の力でその位置にがっちりと固定されます。 この自己保持力は非常に強く、サーボモーターに見られるような微小な振動(ハンチング)が発生しません。 この特性は、測定器のステージや顕微鏡のピント調整など、停止中に外部からの振動を嫌う用途で大きなメリットとなります。

 

対してサーボモーターは、停止時も常に位置のズレを監視し、補正しようと動作し続けています。 そのため、目標位置の周辺でモーターが細かく振動する「ハンチング」という現象が起きることがあります。このハンチングは、後述するゲインチューニングによって最小限に抑えることが可能ですが、完全な静止が求められる場合には注意が必要です。

 

 

応答性を最適化するゲインチューニング

サーボモーターの性能を最大限に引き出すためには、「ゲインチューニング」という調整作業が不可欠 です。 これは、制御の応答性(ゲイン)を、接続される機械の重さ(イナーシャ)や剛性といった物理的な特性に合わせて最適化するプロセス を指します。

 

このチューニングが不適切だと、動作が遅くなったり、目標位置を行き過ぎるオーバーシュートが発生したり、停止時にハンチングが収まらなかったりといった問題が生じます。 近年のサーボアンプには、この作業を自動で行うオートチューニング機能が搭載されており、立ち上げ工数は大幅に削減されています。しかし、非常に高い応答性が求められる場合や、ベルト駆動のように剛性が低い機構では、依然として専門的な知識に基づいた手動での微調整が必要になることがあります。

 

一方、オープンループのステッピングモーターは、このようなゲインチューニングは基本的に不要です。この手軽さが、ステッピングモーターが広く採用される理由の一つ になっています。

 

 

負荷の慣性を示すイナーシャの重要性

イナーシャ(慣性モーメント) は、物体の回転のしにくさを示す値であり、モーター選定において非常に重要なパラメータです。 特にサーボモーターは、このイナーシャの影響を強く受けます。

 

サーボモーターの選定では、 「負荷イナーシャ比」(モーターのイナーシャに対する負荷のイナーシャの比率)を考慮する必要があります。  この比率が高すぎると、制御が不安定になりやすく、ゲインチューニングが困難になります。  そのため、イナーシャの大きな負荷を駆動する際には、より大型のモーターを選定したり、減速機を介して見かけ上のイナーシャ比を下げたりといった対策が求められます。

 

これに対し、ステッピングモーターはサーボモーターに比べて大きなイナーシャ比を許容できる傾向があります。 特に、エンコーダを搭載したクローズドループ・ステッピングモーターは、イナーシャの大きな負荷に対してもチューニングレスで安定した駆動が可能な場合が多く、この点が大きな利点となることがあります。

 

 

用途とコストで選ぶステッピングモーター サーボモーター 違い

これまで見てきた原理や性能の違いを踏まえ、最終的な選定は、装置の用途や予算といった実用的な観点から行われます。ここでは、具体的なアプリケーション例とコストについて解説します。

 

 

導入時と運用時のトータルコスト

コストは、モーター選定における最も重要な判断基準の一つです。 ただし、部品単価だけでなく、長期的な視点でのトータルコストを考えることが大切です。

 

初期導入コスト

モーターとドライバーを合わせた初期導入コストでは、ステッピングモーターが圧倒的に有利 です。   同程度の出力のサーボモーターシステムと比較して、数分の一の価格で導入できる場合も少なくありません。このコストメリットが、ステッピングモーターが広く採用される最大の理由と言えるでしょう。

 

運用コスト(ランニングコスト)

一方で、長期的な運用まで含めたトータルコストで考えると、評価が変わることがあります。  ステッピングモーターは、停止中であっても常に定格に近い電流を流し続けるため、消費電力が大きくなる傾向があります。 これにより、モーターやドライバーの発熱も大きくなります。

 

対照的に、サーボモーターは負荷に応じて必要なだけの電流しか流しません。  停止時や軽負荷時の消費電力は非常に小さく、エネルギー効率に優れています。そのため、ランニングコストである電気代を削減できるほか、発熱が少ないため制御盤の冷却などにかかる付随的なコストも抑えることが可能です。

コスト項目 ステッピングモーター サーボモーター
初期導入コスト 低い 高い
消費電力 高い(常時通電) 低い(負荷追従)
発熱 大きい 小さい
トータルコスト 用途によりサーボより高くなる可能性 初期コストは高いが省エネ

 

 

産業用ロボットや3Dプリンターでの用途

両モーターの特性は、それぞれの代表的な用途に明確に表れています。

 

ステッピングモーターの主な用途

コストが重視され、負荷が比較的一定で予測可能な、低速から中速の位置決めタスクで広く採用されています。

  • 3Dプリンター、家庭用プリンター:X軸、Y軸、Z軸の駆動など、精密な位置決めが求められる箇所で使用されます。
  • 監視カメラ:首振り機能の駆動部。
  • ATMや券売機:紙幣や切符の搬送機構。
  • 分析機器や検査装置:サンプルの搬送ステージなど。

 

サーボモーターの主な用途

高速性、高精度、そして変動する負荷への動的な対応が求められる、要求の厳しいアプリケーションでその真価を発揮します。

  • 産業用ロボット:多関節ロボットのアーム駆動など、高速かつ高精度な動作が不可欠な箇所。
  • 工作機械(CNC):高速で複雑な加工を行うための軸駆動。
  • 半導体製造装置:高速・高精度なウエハ搬送など。
  • 包装機:高速で製品を搬送・梱包するライン。

 

 

ステッピングモーター サーボモーター 違いを理解し選ぶ

この記事では、ステッピングモーターとサーボモーターの違いについて、多角的に解説してきました。  最適なモーターを選定するためには、これらの違いを正しく理解し、設計する装置の要求仕様と照らし合わせることが鍵となります。最後に、選定のポイントをまとめます。

 

  • 制御方式はステッピングがオープンループ、サーボがクローズドループ
  • オープンループはシンプルで低コストだが脱調リスクがある
  • クローズドループはエンコーダで位置を監視し高信頼性を実現
  • 脱調はステッピング特有の位置ずれでサーボでは発生しない
  • トルクはステッピングが低速域、サーボが広範囲の速度域で得意
  • 低速トルク基準ならステッピングは小型高トルク、システム全体ではサーボが小型化に貢献する場合もある
  • 回転速度はステッピングが低・中速、サーボが高速まで対応
  • 位置決め分解能はステッピングがステップ角、サーボがエンコーダ性能に依存
  • 停止時の安定性はステッピングが高くハンチングがない
  • サーボは性能発揮にゲインチューニングが必要
  • イナーシャの大きな負荷にはステッピングが有利な場合がある
  • 初期コストはステッピングが安価
  • ランニングコストはサーボが省エネで有利
  • 3Dプリンターなどにはステッピングモーターが多用される
  • 産業用ロボットなど高負荷・高速用途にはサーボモーターが必須
  • 両者のメリット・デメリットを理解し用途に合わせて選択することが大切

 

以上です。