女性の設計士が育ってきた理由

2017年8月7日




 

今日は「女性の設計士が育ってきた理由」についてのメモです。僕の勤める設計会社での女性設計士の成長について書こうと思います。その女性設計士は「設計を知らない」ところから始まって今は大きく成長しています。その成長の記録メモです。

女性の設計士

設計士になろうとする方の多くが男性であり、その設計士の入り口も狭き門といいますか、工業系の人が流れで設計士の道に進むようなものであり、なかなか一般の方にとってはなじみの少ない職業だと思っています。この女性設計士は僕のサポート役として入社してきました。もう3年くらい経ちますかね。

 

当時その女性は特に設計したいわけではなく、人が欲しいから従業員の知り合いで誰か居ない?と聞いたところたまたまその期間仕事していなくて一旦入ってもらった・・・というような状況。

 

始めは設計をもちろん知らなかった

その女性設計士は、人がガヤガヤしている雰囲気が苦手で設計に対しても最初は不安があったと思います。もちろん「設計」の言葉と実務でどんなことをするのか頭の中で結びつかなかったと思います。

 

「設計ですか!私頑張ります!!!」という感じではなくて、「私はここで何するんですか」といった感じでした。

 

そんな女性にいきなり覚えてもらったものは3DCAD

その女性設計士に始めに触ってもらったのが「3DCAD」でした。それに深い意味は無く、ただ3DCADの仕事をしていたからです。

 

でも今思えば「3DCAD」から設計士にさせて良かったな。と思っています。2Dは平面に重ねられた線を一つの部品として理解するまでに時間が掛かるし、設計の難しさをモロに感じてしまうからです。

 

参考記事:2DCAD及び3DCADの違いと使い分け

 

「私はここで何するんですか」という女性に「今から部品図の起こし方教えるね」なんてとてもいえませんでした。3DCADは操作さえ慣れてしまえばイメージがすぐ掴み易い。機能面をマスターしようと考えると3DCADは奥が深いですが「お絵かき感覚」でCADを捕らえるととても面白いソフトです。

 

 

面白いから頑張れる?表現の仕方は本人に任せる

これは女性設計士に限らず、設計の仕方(表現の仕方)は極力本人に任せるのがポイントです。「こういう風にやって」というよりも「こんなことが解るような絵にして」という教え方が重要ですよね。やり方が決まってしまうとその設計は「労働」になってしまいます。

 

そうではなくて、「こうしたいからどうしたら良いか」考えてもらうことが設計士としての大切な「表現力」のUPにつながると思います。時には僕の意図が伝わっていなくて「出来上がったものが全部やり直し」ということも何度も繰り返しました。

 

参考記事:仕事の効率を上げる方法(新人さんによくある傾向)

 

 

常に言い聞かせていたのが「根拠」と「記録」を残すこと。

男性はとても器用です。ものの考え方もしっかりとしている場合が多い。ですが女性は結構不安なまま作業を進めることがあります。

 

これ、教えるのにどっちが良いかというと不安を持ちながら作業をしている人です。不安だから聞いてもらえるし、不安であるなら「そうした根拠」と「記録」を残すことだけ教えれば設計がつみあがっていきます。

 

これ大切ですよね。操作も器用、考えも器用であった場合、意外と後でその履歴を追えない場合があります。それって設計での手戻りで根拠を示すのにまた同じ手間が掛かったりします。ですからその女性はいつからか「そうした根拠」と「記録」を残すようになってきていました。

 

 

本人に任せるから本人なりの攻略法を身につく

もちろん設計の納期は待ってくれませんから、その女性がやってきた仕事の多くは「作業をしたけど間に合わなくて僕が仕上げる」という結末を迎えることが多かったです。でもそれは始めから考慮していたことなので、なんの問題もありません。それを感じてかわかりませんが、一つの仕事でも「複数の終わりをイメージした仕事」をするようになってきました。

 

意味伝わりますかね?

 

途中で僕が仕事を引き継ぐにも「引き継ぎやすく」してきたんですよね。この引継ぎのし易さはその女性オリジナルです。エクセルシートに経過のメモを残したり仕事終わりにはちゃんとメールで説明しておいてくれるようになりました。

 

引き続き仕事をすることになっても「根拠」と「記録」があるからどう転んでも良いわけです。相手に説明することは自分の頭の中を整理する意味でもとても重要ですよね。

 

気づいたら僕よりCAD操作がうまくなっていた

これ、あれですよね。継続は力なりといいますか、はっきり言って今では僕がCAD操作をその女性に聞くほどです。そうなった理由は簡単で

 

僕の知らない操作を調べてもらったり、こう表現したいからこんなこと表現できる機能ないか探してと、そんな仕事の振り方をしていました。ですから僕より操作が出来るようになるのは当然ですよね。

 

今ではその女性設計士が開発最前線の特殊部隊。

その女性はCADオペレーターからこの設計士の道を歩んできました。CADオペレーターと設計業務は違うのはよくある話ですが、僕はCADオペレーターさんこそ「設計士として向いている」と考えているんですよね。

 

CADを扱えるって、ある意味作業が早いって事ですし、

 

例えると、

 

いくらサーキットの攻略方、走るラインを知っていても、そのラインを通れなきゃ結果遅い。車を正しく操れる人は、サーキットの攻略方を知らなくてもラインの取り方を教えればスムーズにトレースしてくれる。しかも速く。

 

という感じです。

 

最近なんとなく思うことがあって、僕だってこんだけ設計していても「終わりが見えない設計の奥深さ」があるんです。そんな奥深いものが出来るようになったら一人前だ!という考えではなくて、設計業務って

 

  • 設計するためのツールを扱えること
  • 設計するための知識、経験

 

この二つが必要ですが、設計するためのツールに特化しているの事はものすごい武器ですよね。ですからこの女性が今開発の前線で戦っている理由の一つは設計ツールを適切に扱えるからなんですよね。あとは設計ツールを人並みにしか使えない僕らの意図を把握する努力とその表現力を磨いてきたからだと思うんですよね。

 

それなのに「設計するための知識と経験」を追加で得てもらうことは負担が大きすぎるわけです。まぁ、でも今は開発の先端で戦っていますのでそのうち設計士として大きく成長すると思いますのでちょっと放置状態ですね。

 

 

設計士を「1」から育てるならCADスペシャリストをまず目指す

設計士を「1」から育てるなんて途方も無い・・・とお考えの方も多いかと思いますが、3年もすれば化けます。 まぁ、一番気をつけたいのが

 

「こうしなさい」という設計のルールで縛ってしまうこと

 

ですね。これがあるから気持ちの休むところがなくなりますし、何より仕事が楽しくない。こんな温いこと言ってはいけないのかもしれませんが、楽しんで設計の仕事をしてもらえるのが一番良いですよね。

 

短納期でめまぐるしく入れ替わる仕事の瞬間、瞬間に「任務」を与えてそれがその人のやる気につながればとんでもない能力を発揮すると思います。その任務一つ一つに「課題」があってそれに立ち向かう「動機」があればいいんです。結果、間に合わなくて誰かがその仕事を引き継いだとしても「根拠と記録」が残っていることでその人のやった仕事に価値が生まれますよね。

 

今では「私はここで何するんですか」といっていた女性が大きく成長してきていることにうれしい私でした。

 

 

まとめ

なんか久しぶりにダラダラ書いてしまいましたが、エンジニア不足の今どうエンジニアを育てていくかも課題ですので、もし設計士を「1」から育てる必要がある方は、とにかくCADなどの設計ツールをマスターさせることに集中してみてはいかがでしょうか。今回記事に書いた女性設計士はこれから真の設計へ自然と入っていくかと思いますが、また真の設計が出来るようになったころ再登場してもらおうと思います。

 

以上です

 

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