電磁ブレーキの開発業務と生産技術

2018年1月8日




 

今日は「電磁ブレーキの開発業務と生産技術」についてのメモです。以前、電磁ブレーキメーカーの開発・生産技術業務に携わっていたので、今日は電磁ブレーキの開発・生産技術について記事にしてみたいと思います。

電磁ブレーキ

電磁ブレーキの開発業務

私が携わっていた電磁ブレーキの開発は主にモーター用でした。モーター用の電磁ブレーキは基本的には「無励磁作動形電磁ブレーキ」といって、モーターが動く時は励磁して解放、止まるときは無励磁にしてブレーキを作動させる形です。大変シンプルな構造ではありますが、モーターの種類・モーターが利用される環境によって特殊なアレンジが必要な場合があります。

 

電磁ブレーキの開発で難しいところは、お客様の希望スペックに対して与えられたスペース内でどのように納めるかがカギとなります。モーターメーカーが多くあるように、ブレーキに対する要求も様々です。逆に、電磁ブレーキを新規で利用するお客様にたいしては、こちら側から必要スペックを把握できるように保持トルク、動作電圧、使用環境温度などいくつもの項目アンケートを取り、開発します。

 

解析ソフトなどはあまり利用しません。

 

電磁ブレーキは、モーター停止時にモーターのシャフトをロックする役目があります。現代ではロボット用途のモーターの要求で制動ブレーキの要求がありますが、従来の保持ブレーキを制動に利用すると、摩擦材の磨耗が激しくなり動作不良になります。そのため、私が携わった新しい電磁ブレーキの開発は、制動にも使える電磁ブレーキでした。

 

今では、あるブレーキにおいて数万回の制動を可能にした電磁ブレーキも開発されていますので、それを採用したロボットはますます高寿命になっていくと思います。最近では寿命が把握出来る電磁ブレーキも出てきているので、電磁ブレーキの開発は、数十年の沈黙を破り、次のフェーズへ移行していますのでどんな製品が開発されるのか楽しみです。

 

電磁ブレーキの生産技術業務

電磁ブレーキの生産技術は、基本的には開発される電磁ブレーキをいかに安定して生産するかという部分が一番の仕事になります。主に生産ラインの構築、ライン上での不具合対処になります。

 

電磁ブレーキの構造は非常にシンプルで、構成部品点数も少ないです。そのために、スペックにギリギリ入っている電磁ブレーキユニットは、構成部品の精度や品質のばらつきに性能が左右されてしまうために、そのばらつきを出来るだけ組立ラインで補えるような行程を踏んだり、部品に対して追加で管理項目を指定する仕事もあります。

 

電磁ブレーキの部品で精度を求められるのが、組上がった時にできる「ギャップ」です。ギャップはブレーキサイズにもよりますが、各部品の積み上げた結果、大体0.07~0.1辺りを狙って設計してあるので、それから外れる製品は吸引速度への影響や、寿命にも影響してきます。そのため、電磁ブレーキの生産における管理項目の重要なところは、トルク、ギャップになります。

 

電磁ブレーキの試作は、生産ラインで生産性を把握し、開発へフィードバックします。このときに生産に必要なジグも設計し、同時に評価します。最近では3Dプリンターでその形状を先に検討することもあります。これは電磁ブレーキに限らず生産されるもの全てに当てはまることですが、このフィードバックのルートや、フィードバックをどう生産側から捉えて、どう伝えるのか。とても大切です。

 

電磁ブレーキの生産設備は各メーカーにより様々です。先ほど書きましたが、部品がシンプルではありますが、管理項目の違いや、微妙な寸法違い、組み立てに「カンコツ」にたよらざるを得ない場合も多いために、どのメーカーも手組が多いようです。

 

以上です。

 

関連記事:生産技術