今日は「モーター選定の要素であるインクリメンタルとアブソリュートの違い」についてのメモです。
メカ設計初心者に向けて、モーターの選定要素であるインクリメンタルとアブソリュートについて最低限理解しておく事をメモしておきます。
インクリメンタルとアブソリュート
インクリメンタルとアブソリュートの違いを簡潔に説明
では、早速メモしていきます。 インクリメンタルとアブソリュートはどんなものか、簡単に説明すると
インクリメンタル
モーターが 動く前と動いた後でどれくらいの角度を移動したか でモーターの回転位置を把握する
アブソリュート
モーターが 原点から何度の位置にいるか ででモーターの回転位置を把握する
となります。 もう少し難しく(正確に)説明すると
部分引用:三菱電機様資料より
- 絶対位置指令方式(ABS:ABSOLUTE):原点からの距離を指令する方式。
例)Aに行くには、原点から500番地へ。Bに行くには、原点から1300番地に行きなさいの命令を与える。
- インクリメンタル位置指令方式(INC:INCREMENTAL):現在位置を起点にして、次の位置決め点までの方向と距離を指令する方式
例)Aに行くには、起点から右へ500m。Bに行くには、Aから右へ800m行きなさいの命令を与える。
となります。 このアブソリュートはバッテリレスのタイプもあるので、メカ設計で実際に選定するのは、インクリメンタル・アブソリュート・バッテリレスアブソリュート の3種類からとなります。
では、3種類の基本的な内容を纏めます。
インクリメンタルは
インクリメンタルのモーターは、ドライバ電源がOFFのときにモーターの位置情報を保持していません。※電源ONの時位置情報が保持できています。
アブソリュートは
アブソリュートのモーターは、ドライバ電源がOFFのときにモーターの位置情報を保持しています。※ドライバ電源OFFの時、バッテリ電源を供給され位置情報を保持している。ユーザーがバッテリの電池切れを気にします。
バッテリレスアブソリュートは
バッテリレスアブソリュートのモーターは、電源がOFFのときにモーターの位置情報を保持しています。そしてさらにバッテリがありません。
以上のように簡単な仕分けが出来ますね。
メカ設計ではこの3種類をどう使い分けるか
もう少し深くこの3種類を理解してみます。
インクリメンタルは
インクリメンタルのモーターは、電源がOFFになってしまうと位置情報がないので原点復帰動作が必要になり、戻る先の原点センサーが必要です。
簡易的な設備では問題となりませんが、複雑な装置であるとその原点復帰プログラムを作成するのも大変になります。複数軸を利用する場合は各軸ごと行なう必要があるのと、戻り方も正しくプログラムしないと原点復帰の際に当たってしまうこともありえます。
ロールフィーダなどのピッチ送りなどにはインクリメンタルを選択するのを基本として良いでしょう。
また、ワーク搬送中に非常停止を喰らうと原点復帰動作を行なう必要があるので、途中でのワークの取り出しなどが面倒になる場合があります。
(バッテリレス)アブソリュートは
アブソリュートのモーターは、電源がOFFのときにモーターの位置情報を保持しているので、原点復帰無しで作業原点まで移動できます。
自分で居場所が解るので、外部の原点センサーなんかが必要ない場合もあります。(これは電気屋さんと相談してください)アブソリュートモーターで活きてくる場所は、例えば「電動チャック」のような、(押し付けでない)把持をしている状態で電源OFFを喰らったとしても再起動時に原点復帰が不要なので、把持した状態で次の作業に移ることができるのです。※押し付けている場合は押し付けではなくなります。
また、X/Y/Zなどの複合動作を行なう装置には(バッテリレス)アブソリュートを選択すると良いと思います。
バッテリレスは物理的にバッテリースペースが不要になり、バッテリに関してメンテナンスも不要になるので良いことばかりですね。そのため今ではバッテリレスがスタンダードの選択であると思います。
バッテリレスアブソリュートのモーターは高いのか
やること成すこということ無しのバッテリレスアブソリュートですが、機能が充実している分、値段が高いイメージがあります。
しかし、バッテリレスアブソリュートのモーターはコストメリットが大きいんです。簡単に言えばバッテリが無いためインクリメンタル仕様のモーターと同じくらいの価格帯になります。通常のアブソリュートはバッテリがありますのでコストは高いですね。
補足
補足です。
例えば、装置内で長距離走る「ラック&ピニオン」や、上下昇降する「ボールねじ+モーター」などを原点復帰が必要なインクリメンタルで設計してしまうと、原点復帰異常停止の際にかなり時間が掛かるのでアブソリュートを選択してください。
以上です。
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