今日は、【圧入力・引抜力の計算書】中空軸とベアリング内径の場合についてのメモです。ベアリングの圧入は3タイプあり「中空軸とベアリングの内径・中実軸とベアリング内径・ハウジングとベアリング外径」となります。今回は初回で、中空軸とベアリング内径での圧入計算になります。残りの計算は次回からの記事で順次公開していきます。
圧入計算
圧入計算の信憑性について
ベアリングに限らず「圧入」という行程において圧入力のバラつきは避けて通れません。ベアリングメーカーのカタログにおいても
引用NSKより
実際の圧入力や引抜力はは、軌道輪と軸(又はハウジング穴)が傾いて取り付けられたり、加えられる力が軌道輪の円周上に一様に与えられなかったりすると、計算上の値よりはるかに大きくなる。
とされていますし、私の経験上NTNさんの「エアリングハンドブック」に記載があるように
引用NTNより
はめあい面圧に実際有効に働くしめしろ、すなわち有効しめしろは軸受内径や軸の寸法測定値より計算したしめしろ(理論しめしろ)より小さい。これは主として仕上面粗さの影響によるもので減少量を見込む必要があります。
といった形で、計算上のしめ代はそのまま実際の圧入しめしろになるとは限らないのです。
このしめしろは、圧入面を加工する人と面粗さを詰めることで、できるだけ計算値に近づけることができますし、逆に実際の圧入力に計算値を近づけることができます。さらに圧入の品質をコントロールするには「適切な冶具」も必要になってきます。
中空軸を内径に圧入する際の圧入力と引き抜き力
この計算書はNTNさんの「転がり軸受けハンドブック」とNSKさんの「テクニカルレポート」を元に作成しています。
計算に必要な項目
d 径〔軸or内輪〕(mm)
d1 径〔中空径〕(mm)
Smax 設計しめしろ最大(mm)
Smin 設計しめしろ最小(mm)
G しめ代の減少量(μm)
D 軸受けの外径(mm)
B 軸受けの幅 (mm)
E 弾性係数(MPa)
P 軸ポアソン数
μ1 摩擦係数
μ2 摩擦係数
圧入力と引き抜き力の計算
- 想定される中間値の有効しめしろを求める
S''[mm]=(((Smax-Smin)/2)+Smin)-(G/1000)
- 内輪軌道径(平均溝径)を求める(一般式採用)
D1[mm]=1.05*(((4*d)+D)/5)
- 軸径と内輪軌道径の比を求める
k[-]=d/D1
- 中空径と軸径の比を求める
k1[-]=d1/d
- 中空軸の場合のはめあい面圧を求める
Pm[N/mm^2]=(S''/d)*(1/((((P-1)/(P*E))-((3.33-1)/(3.33*208000)))+(2*((k1^2/(E*(1-k1^2)))+(1/(208000*(1-k^2)))))))
- 内輪内径はめあい面の円周方向最大応力を求める
τmax[N/mm^2]=Pm*((1+k^2)/(1-k^2))
- 内輪と軸を入する際に必要な力を求める
K[N]=μ1*Pm*3.14*d*B
- 内輪から軸を引き抜く際に必要な力を求める
H[N]=μ2*Pm*3.14*d*B
計算エクセルのダウンロード
ここでは「中空軸とベアリング内径の圧入計算」のエクセルシートをダウンロードできます。どうぞご利用ください。
【圧入力・引抜力の計算書】中空軸とベアリング内径の場合_180510