ここでは「高分子ポリエチレン素材(超高分子PE)」についてメモしています。
高分子ポリエチレンの概要
高分子ポリエチレンは、エチレンが多数結合した、非常に長い鎖状の分子(高分子)から構成される熱可塑性樹脂の一種。 分子量が非常に大きい(一般的に100万以上)ことが特徴で、通常のポリエチレン(低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなど)よりもさらに優れた特性を持っている。 この超高分子量である点が、高分子ポリエチレンが特別な用途で利用される理由。
高分子ポリエチレンの記号や一般的な呼ばれ方
一般的に特に統一された記号はないが、私たち設計者の間では「超高分子量ポリエチレン、超高分子PE、高機能ポリエチレン」などと呼ばれることがある。
※UHMW-PE (Ultra-High Molecular Weight Polyethylene)とも表記される。
高分子ポリエチレンの特徴
高分子ポリエチレンは、その 超高分子量故 に、以下のような優れた特徴を持っている。
- 高い耐摩耗性:あらゆるプラスチックの中で最も高いレベルの耐摩耗性を示します。金属や他のエンジニアリングプラスチックと比較しても、非常に摩耗しにくい材料
- 低い摩擦係数:自己潤滑性に優れ、摩擦係数が非常に低いため、摺動部品として優れた性能を発揮する。
- 優れた耐衝撃性:低温下でも高い耐衝撃性を維持し、割れにくい性質を持つ。
- 良好な耐薬品性: 酸、アルカリ、溶剤など、多くの化学物質に対して安定。
- 食品衛生性:無毒であり、食品に直接触れる用途にも使用できる。
- 電気絶縁性:優れた電気絶縁性を持っている。
一方で、以下のような点には注意が必要とされる。
- 耐熱性:連続使用温度は比較的低く、高温下では軟化しやすい。
- 成形性:高い粘度のために、射出成形などの一般的なプラスチック成形法が適用しにくい場合がある。圧縮成形や押出し成形などが用いられる。
- 接着性:表面が滑りやすいため、接着が難しい場合がある。
分子ポリエチレンの機械部品への用途
機械部品に使う場合の主な用途は以下の通り。
- 摺動部品:ギア、ベアリング、スライドプレート、チェーンガイド、コンベアガイドなど、摩耗を低減し、スムーズな動きを実現する部品。
- ライニング材:ホッパーやシュートの内面ライニング、タンクの内張りなど、粉体や液体などの付着を防ぎ、摩耗を抑制する用途。
- シール材:パッキン、ガスケットなど、高い耐摩耗性と耐薬品性を活かしたシール部品。
- 搬送部品:ローラー、スクリューコンベアなど、耐摩耗性と低い摩擦係数を活かした搬送部品。
- その他:人工関節、医療機器部品、繊維機械部品、製紙機械部品など、特殊な環境下や高い性能が求められる分野。
各材料メーカーによる高分子ポリエチレン材質の名称
各材料メーカーは、独自の商品名で高分子ポリエチレン素材を提供しています。以下に代表的な例を挙げます。
- デュポン (現:Celanese):Hifax®
- 三井化学:ハイゼックス®ミリオン
- 三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ (旧:クオドラントポリペンコ):TIVAR®、Borotron®
- AGC:フロロテクト®UHMW
※上記の名称は、各メーカーの製品グレードによってさらに細分化されている場合がある。
高分子ポリエチレン素材に似た材料
高分子ポリエチレンと類似した特性を持つ材料としては、以下のようなものが挙げられます。
- 高密度ポリエチレン (HDPE): 耐薬品性や電気絶縁性に優れますが、耐摩耗性は高分子ポリエチレンに劣る。
- ポリプロピレン (PP):軽量で耐薬品性に優れますが、耐摩耗性や耐衝撃性は高分子ポリエチレンに劣る。
- ポリアセタール (POM):機械的強度や耐摩耗性に優れますが、耐薬品性は高分子ポリエチレンと異なる。
- ポリアミド (PA):機械的強度や耐摩耗性に優れますが、吸水性がある。
- フッ素樹脂 (PTFEなど):極めて低い摩擦係数と優れた耐薬品性を持ちますが、耐摩耗性は高分子ポリエチレンと同程度か劣る場合がある。
以上です。