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LMガイドの動きが悪い理由・原因は大きく分けて3つ

2020年3月30日

今日は「LMガイドの動きが悪い理由・原因は大きく分けて3つ」についてのメモです。少し前の話になりますが、ある機械の組立後・調整作業の際にLMガイドの動きが悪かったものを見たことがありました。

 

動きの悪さを具体的に言うと、250stするハズが残り5st位残して止まってしまう状態で、手で押せば最後まで動く状態。つまり、LMガイドの動きが悪く余裕で駆動するはずのエアシリンダの推力では足りなかった事になります。

 

LMガイドの動きが悪かった原因は、LMガイドが正しく取り付けられていなかった事による動作不良でした。正しく取り付けられていなかった際の構造は以下の通りで、ノックピンを位置決めに使った取付けでした。(画像はイメージ)

LMガイドの動きが悪くなる理由

このような位置決めをしている設備メーカーさんもいることかと。私も過去にこのような位置決めをしている設計をみて「ラフな所はこんなやり方しても良いんだな。よし、やろう(パクろう)」と一時取り入れた事もありましたが、よくよく考えてみたら良くない状況になりうる可能性が高いので最近はしていないです。

LMガイドの動きが悪くなる原因

では、LMガイドの動きが悪くなる原因の3つを箇条書きにまとめます。

 

  1. LMガイドの基準が合っていない
  2. LMガイドの取り付け方法が悪い
  3. LMガイドを正しく取り付けられない設計をしている

 

と、なります。ではそれら詳細を説明していきます。

 

 

その1:LMガイドの基準が合っていない

LMガイド自体に基準面が有ります。この基準面を間違えると正常に動作しない=動きが悪くなる可能性があります。

 

 

基準側・従動側LMガイドの基準面(THKの場合)

例えば、並級以上の精度を必要とするLMガイドにおいて、同一平面に2軸を設置する際、LMガイドアセンブリは2本になります。その片方が基準LMガイドとなり、もう片方が従動側LMガイドとなりますが、その違いは以下の通り。

 

LMガイドの動きが悪くなる理由_1(THKさんから借りました)

  • 基準となるLMレール:製造番号末尾に「KB」と刻印がある
  • 従動となるLMレール:製造番号末尾に「KB」がない

※並級は指示がないのでどちらでもOK

 

さらに、基準・従動LMガイドアセンブリのブロック及びレール自体にも基準面があります。

LMガイドの動きが悪くなる理由_2

(THKさんから借りました)

 

  • 基準側(末尾に「KB」付き)のLMブロックには:THKマークの反対側を基準面とされる
  • 基準側(末尾に「KB」付き)のLMレールには:線引きマーク側

 

基準ではない従動側の表示は以下の通りです。

 

  • 従動側(末尾に「KB」なし)のLMブロックには:基準面なし
  • 従動側(末尾に「KB」なし)のLMレールには:線引きマーク側が基準

 

従動側のLMガイドアセンブリの、ブロックに基準面が無くLMレールにある理由は、LMレールを固定しLMブロックをフリーで使うためです。このように、基準とされるものが逆についていたりすることで精度の低下・動きの状態悪化につながります。

 

 

その2:LMガイドの取付け方法が悪い

LMガイドには適切な取付け方法がありますが、取付方法を誤るとLMガイドの動きがわるくなります。

 

 

LMガイドの取付け順序

LMガイドの取付順序は以下の通りです。

  1. LMレールの基準面側(線引きマーク側)を突き当てる
  2. LMレールを押しボルト(もしくはプレート等)で密着させる(押付ける)
  3. LMブロックの基準面側(THKマークの反対側)を突き当てる
  4. LMブロックを押しボルト(もしくはプレート等)で密着させる(押付ける)

※押しボルトや押しプレートが無い場合は、小型バイスなどで押付けて固定しますが、この順番・取付けが適切でないとLMのレールが「ハの字」になってしまうので、途中から抵抗がきつくなり動作が悪くなってしまいます。

 

 

突き当てて固定しない・出来ない場合

突き当てて固定しない・出来ない場合は以下の方法があります

 

  1. 走らせながら仮締めを徐々に本締めへと行う方法
    ⇒ 機会組立の部屋より:LMガイドの従動側の平行出し
  2. 偏芯クランプボルトを利用する方法
    LMガイド・リニアガイドのレール固定にお勧めの方法

 

冒頭で説明したノックピンによるLMガイド設置の問題は

  • 押し当てれない構造だった
  • 押し当てれない為に取付が困難、結局「ハの字」に取り付いていた

というのが原因でした。

 

 

その3:LMガイドを正しく取付けられない設計をしている

ここからは設計者が特に気をつける所で、その1及びその2が不可能な設計をしている場合はLMガイドの動きが悪くても仕方がありません。逆に言えば上記二つを満足する設計が出来れば 加工機械の機械精度に依存させる=LMガイドのカタログ能力を出しやすくなります。

 

LMガイドの動きが悪いという事の重大性は、LMガイド取り付けの具合によって駆動の能力が足りなくなる可能性があることです。LMガイドを適切に取付けられず、結果的に動きが悪い場合に起こる不具合は

 

  • 動作スピードが落ちる
  • ひどいと動きが途中で止まる

 

このような結果になってしまった場合は 駆動のパワーを上げてしまう などの間違った改善をする可能性もありますね。

 

少し話が飛んでしまいますが、LMガイドの摩擦係数は0.001~0.003とされており、普通に計算するとかなりの重量物でも小さい力で押せる事になります。しかし、実際は計算よりも大きい力が必要になるのが殆どだと思います。それはグリスの抵抗もありますし、与圧があるか無いかでも違ってくるんですが、設計で予定していた押し力を満足させるには取付方法によるロスはあってはならないのです。もちろん多少の誤差は吸収できるというのもLMガイドの売りですが、多少の誤差=誤差が合ってもほぼ無抵抗で駆動するわけではないのです。

 

ですから大切な事は、正しい取付が出来るように周辺を含めた設計をする事が重要で、設計として

 

  • 正しく取り付けられるスペースを確保したり
  • スペースの確保が難しい場合はサブユニット可して組めるようにしたり

 

これらが出来てようやくカタログスペックの動きが可能になるとお考えください。

 

以上です。

 

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