今日は「サーボモーターとステッピングモーターの違い・使い分け方」についてのメモです。
機械の設計をする上で、駆動源であるモーターの選定はメーカーを含めると幅も広く選定が難しいです。特にステッピングモーターは慣れてこないと実際の能力を把握しずらかったりしますので、ここでは制御を必要とする駆動に使われるサーボモータとステッピングモーターの違いと使い分けについて纏めています。
この記事では ステッピングモーターとサーボモーターの概要を解りやすく説明しているので 機械設計初心者の方は是非参考にしてみてください。
サーボモーターとステッピングモーターの違いと使い分け
サーボモーターとステッピングモーターの使い分けをするには、サーボモーターとステッピングモーターの違いを把握する必要があります。
サーボモーターとステッピングモーターの違い「従来常識」
ここでは、設計初心者に向けてサーボモーターとステッピングモーターの使い分けをするために必要な大きな違いを纏めました。
サーボモーターは高いがステッピングモーターは安い
サーボモーターに比べてステッピングモーターは一般的に「使いやすくて安い」と言われていますが、安いといっても購入の安さと制御がシンプルで結果的に安いというのがあります。ステッピングモーターはセンサもフィードバックも不要なので構造物がシンプルで制御もシンプルということです。
サーボモーターとステッピングモーターはトルク特性が違う
サーボモーターは中回転域から高回転域までフラットなトルク特性が特徴で、ステッピングモーターのトルク特性はフラットではなく、低~中回転域においてトルクが高く高回転域ではトルクが下がってきます。
サーボモーターは過負荷アラーム。ステッピングモーターは脱調
急激な速度変化及び過負荷時において、サーボモーターとステッピングモーターは私たちに対して違う反応をします。サーボモーターは過負荷アラームが鳴り停止、ステッピングモーターはアラーム無く脱調し同期を失います。脱調とは「入力パルスに同期しなくなった状態」であり回転角度を制御できなくなってしまいます。但し、設計が適切で容量選定が適切なモーターを使用の場合、モーターが脱調することはありません。
応答性はステッピングモーターの方が勝っている
サーボモーターはエンコーダのフィードバックを待つので指令に対しての「遅れ」が存在するんですが、「オープンループ制御ステッピングモーター」はパルスに同期して動作するので「遅れがほぼ無い」です。そのため実は複数モーターの同期運転にも特性的には適しています。
停止精度はサーボモーターもステッピングモーターも高い
停止精度はサーボモーター及びステッピングモーター両者高精度であると考えてよいです。参考までにですが、ステッピングモーターの停止誤差はステップ間で累積しません。
サーボモーターとステッピングモーターの違い「新常識」
従来の常識において、サーボモーターとステッピングモーターを比べると、ステッピングモーターのコスト面の安さが選定のメインとなり、能力はなかなか理解されないまま「制御=サーボモーター」という流れが強かったと思います。うまくステッピングモーターを使えば安く設備を作れるのにあえてサーボを選んでしまっているという設計士も多いはずです。
最近では少し制御の常識が変わってきて、ステッピングモーターとサーボモーターの使い分けがより明確になってきました。以下がその新常識です。
サーボモーターもステッピングモーターもフィードバックはできる
今までのステッピングモーターはノンフィードバックが当たり前な所から、今ではセンサ内蔵のクローズドループ制御タイプのステッピングモーターもありますし、エンコーダー付きのステッピングモーターもありますので、フィードバックはサーボモーター・ステッピングモーターいずれも可能であると考えたほうが良いです。エンコーダーをつけることによりステッピングモーターの弱点である効率の悪さも改善されているようです。
サーボモーターとステッピングモーターの使い分けまとめ
以下にサーボモーターとステッピングモーターの使い分けを私なりの順番にて記載いたします。これが全てではないと思いますが、サーボモーターとステッピングモーターの特色を生かした判断ができるようにしてあります。
装置に必要な制御の把握
フィードバックが必要なときはサーボモーターか、エンコーダ付きのステッピングモーターもしくはセンサ内蔵のクローズドループ制御タイプのステッピングモーターを利用する。→この時点ではどちらを選択しても良い
補間運転などの高度な制御が必要な場合はサーボモーターを選択する
補間運転とは位置決めにおいて2台あるいは3台のモータを同時運転して合成した運動をさせることです。その際にはサーボモーターを選ぶ必要があります。
低~中回転域はステッピングモーター。中~高回転域はサーボモーターを使用する。
装置の駆動に必要な回転速度が低~中回転域であればステッピングモーターでも良く、中~高回転域の回転を使用する場合はサーボモーターを選ぶ必要があります。
低回転はサーボモーターに不向きという意味ではなく、ステッピングモーターのトルク特性上、低~中回転域においてはステッピングモーターを使うメリットが大きいかも知れないといったところです。そして超が付くほどの低回転の場合はステッピングモーターを選択するのが良いかもしれません。ステッピングモーターは回転テーブルなどの角度割り出し、インチングなどに有利です。
※インチング(寸動運転)とは・・・ジョギングとも言い、モータの微回転等の始動電流の開閉を頻繁に行う事。
結局最後は使い方を2パターンで検討してみる
例えば物を搬送する場合において「モーター+ボールねじ」というのは一般的ですがその場合はモーターを高回転域でまわす必要が出てきます。その「物を運ぶ」ということを考えたとき「モーター+プーリー+ベルト」という設計が可能か検討します。この場合であればモーターはそれほど高回転を必要としないはずです。そうなればステッピングモーターを利用する検討ができます。この構成になればかなりコストを下げることができます。
また「モーター+ボールねじ」においても、高回転使わなくて良い設計であった場合、低~中回転域に強いステッピングモーターに置き換えることも検討の一つになってきます。よって、サーボモーターとステッピングモーターをどう使い分けるかは、装置に要求されている性能が出せる機構なのかが先です。
私としては、サーボモーターが確実に必要なのは
- 止む終えず高回転で使用するとき
- 複数台で補間運転の必要性があるとき
ステッピングモーターが確実に必要なところは
- 超低回転で位置決めが必要なとき
以上となります。その他についてはサーボモーターとステッピングモーターの2パターンでの検討をする必要があると考えています。
以上です。
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