多品種ワークを扱う機械が持つ要素

2019年3月10日




 

今日は「多品種ワークを扱う機械が持つべき要素」についてメモを残そうと思います。

 

最近、多品種に対応する需要が僕の周りには増してきている印象です。そのおかげで僕は多品種対応の機械を設計することが増えてきました。今日は多品種を扱う機械を設計する中で解ってきたことを、これから多品種の機械を導入しようと考えている方に向けてシェアしたいと思っています。

 

何かの参考になれば幸いです。※感覚的な文章になっていると思いますので上手く伝わらなかったらごめんなさい。

多品種を生産する専用機の課題・不安要素

まず「多品種ワークを扱う機械が持つ要素」の話をする前に、多品種の機械について課題を少しまとめてみます。

 

【課題1】多品種対応の機械をどう作っていけばよいか解らない

昔、機械はパワーとお金を掛け、とにかく一つを大量作る機械が求められた時代でした。今は効率良く多品種少量生産化する時代です。作ったは良いけれど、細かい所まで対応できず結局使い物にならなかったり、投資するに値するかが疑問な場合もあります。今は多品種を少量で作る事が求められているのに、どう作っていけば良いか悩んでる会社さんも多いはず。これをどう皆が克服していくか、とても大きな課題だと思います。

 

 

【課題2】そもそも多品種の設備はどんなイメージか把握出来ない

多品種になると、どこまでを範囲に含めるかという事もあり、装置自体どんなボリューム感になるのかイメージがしづらいです。我々設計士も、仕様書を見ただけではイメージがかなり難しいです。設計を始める前のポンチ絵と、設計を始めてからの形にも大きな差が出てくることもあります。

 

また、多品種に対応した機械を見たことがない人も多いです。色々な多品種の機械を見ることが出来ればイメージが浮かび上がるかもしれません。

 

 

【課題3】多品種化することで得られる数値的なメリットを把握しにくい

多品種対応の一例ですが、工場内にある特定機種専用の組立ライン複数を合体させ1ラインにするというような物の場合、機械が1台になることで生産スペースとしてのメリットは把握できます。しかし、多品種になることで、段取りに対して人の手がどれだけ必要?生産の調整方法やタイミングは?補充は?など、個人レベルで決めきれない内容が多すぎるのです。そのため、多品種化の話が進まず実現できない所もあります。

 

いざ着手しても、スペース以外のメリットを把握するまでに検討を深くまで進めないと判断出来ない基準が沢山あります。これは生産技術のスキルに左右される部分かもしれません。

 

製品の品質と、製造側が求める機械品質

いくつか課題を書いてみましたが、多品種対応というのは口で言うのは簡単ですが、実現は結構大変でして、ワークの形状違いにどう機械を合わせ込んで行くか設計者の腕試し的な所がありますし、生産数に応じて段取り替えをする必要が出てくる生産側の許容の問題も出てきます。多品種を扱うようになると基準・考え方が複雑になるので、製品の品質と機械の品質バランスをどう取るかも大きな課題の一つになってきます。少し解りやすく説明してみたいと思います。

 

例えば、同じ力でクランプして同じ組み方をしているのに製品の品質が同じにならない事が起きます。その原因は、多品種のため高さ違うワークがくるから、同じクランプを使っても使用しているストロークが違うためにクランプに掛かるモーメントが変わって全く同じクランプの品質にならない事から起きたりします。

 

多品種を扱う機械で起こりがちな所ですが、今まで当たり前とされてきた共通部材をより多く利用する機械では逆に製品のバラつきが起きる可能性が高いということです。そのため、単品を扱う専用機では製品の品質が安定するものの、多品種対応の機械では品質を安定させることが少し難しくなります。

 

そういった懸念がある場合、製作側(設計側)からどうするかの判断を求められることがあると思いますので、上記の部分は機械を発注する側も多品種は品質の安定を得難い場合があることを把握しておくと良いと思います。

 

 

多品種を扱う機械

これから新しい多品種対応の機械を作ろうとしている方は、その機械がどんな品質をもつ機械なのか何を目的としているのか、しっかりメカ・ソフトの各設計者と話し合って決める必要があります。

 

伝えた=出来る  ではありません。

 

下記に今思い出せる範囲だけですが、多品種の機械を作る上で共通認識として持っていると良い内容をメモします。※多品種に限らない内容もあります

 

 

共通認識

機械の仕様

発注の仕方にもよりますが、初期段階、打診段階での仕様書は非常に重要です。ただ、先ほども書きましたが仕様書提出以降の変更に柔軟に対応し合う仕事の仕方が重要だと思います。

 

発注側・受注側共に「仕様書」以外の要求が出てくることを承知している → 〇

仕様を設計に丸投げする → X

仕様の最終決定は製作側ではなく発注側 → 〇

 

 

開発レベル・開発費用

多品種の機械は単品の機械よりも複雑なものになると思います。そのため発注側は機械の費用を多く見積もっておく必要があります。

 

単品機械の価格で多品種が作れると思っている → X

既設のノウハウがあるから簡単に多品種化できると考えている → X

デバッグ、調整期間が単品機械の1.5倍程度掛かることを認識している → 〇

既設機械の正式図を一式提供できる → 〇

既設機械のノウハウを提供できる → 〇

図面が無くスケッチしてノウハウを再現する → X

 

段取り

多品種を扱う機械は「多品種の少量生産」を目的としている所が多いと思います。そこで考えたいのが段取りについてです。段取りの品質が良いのは、段取り回数が少なく、簡易的に交換でき尚且つ繰り返しの取付け精度・強度が抜群といったところでしょうか。毎回人の手で付け替える作業の不安定さは多くの方が理解している所でして、段取り部品の点数が多いと段取りの品質も悪いことになります。

 

段取り部品を個別に交換 → X

段取り部品をユニット化 → 〇

段取りせずに予め冶具を載せてしまっておく  → ◎

 

多品種対応の部材補充・供給

部材の補充・供給方法もしっかり考えておかなくてはいけません。ここでいう補充は作業員による作業で、供給は機械内部で機械でライン投入する部分です。補充でのポイントは補充タイミングに許容時間を持たせる事、そして動いている機械のとなりで補充しますから、機械の動作にあまり影響のない補充場所です。供給でのポイントは、補充されたワークが正しいものか判別するのと、NG品の排出を設け、尚且つできる限り機械を止めないような方法です。いちいち止まるような機械にはしない方が良いと思います。

 

補充回数減らす →  ◯

部材減少アラーム  → ◯

稼働中でも部材補充できる構造 → 〇

ワーク供給で識別センサが付いている → 〇

ワークNG排出場所を設けている → ◯

センサはセンサメーカーにて検証済みの物を使う → 〇

3~5回NGが連続の場合に装置がアラームなど → ◯

 

不具合品への対処

製造中の不具合品も、各品種ごとに対処する方法が違うと思うのでワークの全型式把握、対処の方法を決めておく必要があります。仕様書の段階で明確な指示がない場合、機構を出来る限り同じにしたいという設計士の想いから不具合品の排出が簡易的になります。実際は同形状の公差違いで別の機種に流用できる部材もある場合があるので不具合品の排出にも始めから注意が必要です。機構に大きく影響しますのでNG排出での動きが変更しやすいような設計をしておくのが良いです。

また、不具合対応や生産調整などで途中から別ワークを入れる場合もあるかもしれないのでそれも考慮しているか重要です。

 

後で分別して排出しやすい構造にしていない → X

後で分別して排出しやすい構造にする → 〇

 

作業エリア(機械周辺エリア)

多品種になると機械エリアが増えます。品種毎に部材をストックする場所が必要ですし、組立の設備では生産のパスラインを一直線にすると、部材供給は装置前後・上下あらゆるところから供給の必要が出てきます。(例:反オペ側など一定方向からの供給が難しくなります)また、それらスペースに加え、補充・段取りなどで頻繁に人が入って作業するスペースも必要になるので思ったより設備が大きくなってしまいます。

 

単品機械と多品種機械の機械エリアは同程度だと思っている → X

機械エリア拡大を理解している → 〇

 

まとめ

僕が求めている多品種対応の機械は「平均的に品質の良いもの作る機械」ではなく「各製品ごと品質抜群」です。設計士の課題は安定した既存の専用機を参考にしつつも、レイアウトから見直しを掛け最適な多品種専用機を作ることです。

 

依頼側は1機種の専用機と違い、ボリュームの上がる所が多く、決めごとがとても多くなります。また、失敗した場合のリスクも大きいため、リスクを減らすような発注方法の見直し、発注先に丸投げしないこと、仕様書の随時書き換え、お互いにコミュニケーションを取り合い、一緒に考えながら形にしていくのが良いかと思います。

 

多品種対応は大変ですが、量産では外国にもう勝てない状況です。難しいことをさらっとやり遂げる、私たち日本人の腕の見せ所なのかもしれませんね。

 

以上です。

 

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