今日は 「電磁弁の耐久性・寿命(公称寿命)について」 のメモです。
先日、電磁弁の耐久性・寿命について色々調ごとがあったのですが、その時に調べた 電磁弁の耐久性・寿命・寿命に影響を及ぼす要素をまとめ、寿命を延ばす上でポイントとなることをメモ しています。
電磁弁の寿命かな? と思った方が情報の整理に見てもらえれば幸いです。
電磁弁の寿命について
電磁弁の寿命を確認する方法
まず先に、各電磁弁の寿命に関する情報は、製品の技術仕様やメーカーに直接問い合わせることで得られます。
例えば SMCさんでは電磁弁の寿命を 公称寿命(こうしょう寿命)としており、SMCさんにおける限られた動作条件で作動させた場合の規定耐久回数を公称寿命としています。 今回私がSMCさんに特定の製品について問い合わせた所、その電磁弁の公称寿命は1億回のもの でした。
この電磁弁の公称寿命は、SMCのテスト結果に基づいており、全ての条件を保証するものではないとの事ですが、製品の耐久性を示す重要な指標です。
CKDさんでは下記引用のように、寿命を ①機械的寿命、②シール寿命、③電気的寿命 に分けて説明しています。 CKDさんでも各電磁弁ごとの耐久性は問い合わせることで得られると説明しています。
電磁弁の寿命は主に、①機械的寿命、②シール寿命、③電気的寿命によって影響されます。弊社では、カタログには記載しておらず、公称寿命という名目でお伝えしております。詳細はお近くの営業所にお問合せください。
電磁弁の寿命に影響する要素
CKDさんの説明にもあるように、電磁弁の寿命は
- 機械的寿命
- シール寿命
- 電気的寿命
にわけられます。
ここで重要だと考えるのは、 単純な電磁弁の寿命なのか扱いや関連機器による動作不良なのかを見極める必要がある と私は思っています。 他の製品もいくつか見て回ったんですが、エア回路に使われる電磁弁の寿命は大体1億回あたりでした。
で、 私が疑問に思ったこと。
「電磁弁って1億回も動けるのに、早期に寿命を迎える(迎えたと思ってしまう)のはひょっとしたら電磁弁以外のメカ的影響もあるのではないか?」
ということです。
そもそもエアシリンダの寿命が500万回 というざっくりな記憶があり、それに比べたら電磁弁は壊れない気がしたんです。 そこで、さらに深く情報をさがしていると、いくつか 電磁弁の寿命に直接影響があるメカニズムが見つかりました ので箇条書きでメモします。 電磁弁の早期故障に悩まれている方はヒントが見つかるかもしれません。
① 機械的寿命
①-1 環境(雰囲気)
これは動作環境によって機械的な寿命に差がでるそうです。
- 高温(低温)
- 湿度が高い環境
- 腐食性ガスや液体
これらによって 電磁弁を構成する材質の劣化や腐食が進み電磁弁の寿命が短くなる可能性があるそうです。
また、これは多くのエア回路がそうだと思いますが、ドレンやゴミが作動不良などの原因となる可能性があるので、バルブ近くの上流側にエアフィルタを取付けて使用する必要があります。
①-2 背圧の影響
バルブをマニホールドで使用する場合、背圧によりエアシリンダの誤作動が発生する恐れがあるそうです。 例えば単動のエアシリンダなどです。 そのような場合には、排気ポートにチェック弁を入れるなどの対策をすると良いそうです。
背圧とは
流体装置の配管や排管の流れに抵抗する液体や気体にかかる圧力
チェック弁とは
流体の逆流を防ぐ目的で配管に取り付けられる逆流防止弁、これに該当する可能性がある場合は、使用機器メーカーに確認するのが良いと思います。
①-3 マニホールドのサイレンサ目詰まり
マニホールドにサイレンサを取り付ける場合、サイレンサ目詰まりによって排気抵抗が上がる ようです。 空圧機器の動作が安定しない場合は電磁弁の確認と併せて排気も適切にできているかを確認してください。
①-4 放置による内部固着
これは案外盲点になる気がしています。 長期間保持後の再始動時に内部シールの固着によって1回目の応答時間に遅れを生じる場合があるそうです。
② シール寿命
電磁弁は開閉動作を繰り返すため、使用頻度が高いほど 機械的なストレスがより増大し摩耗や疲労が早く進みます。
中でも、電磁弁の材質は耐久性に大きく影響するようで、例えば、耐腐食性が高い材料は厳しい環境下でも長持ちする傾向にありますが、プラスチックや安価な金属材料を使用した電磁弁は、腐食や劣化が早く進む可能性があるそうです。
これは選定する私たちではわからない部分なので、結果的な 動作寿命回数を問い合わせるのが適切 だと思います。
②-1 電磁弁の取付向きとシール材質の関係
PISCOさんの情報では 「ソレノイドバルブを50m/s2以下の振動の中で使用する場合、振動方向がスプール弁に対し直角になるように取付けてください」 という説明がありました。 50m/s2以下 がどれくらいかは私たちでは解らないかもしれないので必要に応じてメーカーに確認した方が良いです。
そのソレノイドバルブのスプールとは下図の内部部品になります。
このスプールと接触するシール部が ここでのポイント になります。
弾性体シール
パッキンを持ったスプール弁をスライドして切換を行うため、エア漏れが少ない。
メタルシール
金属のスプール弁をスライドして切換を行うため長寿命。
メタルシールのシングルソレノイドの場合、取付姿勢は自由で、ダブルソレノイドおよび3位置のバルブの場合は、スプール弁が水平になるように取付けるのが理想とのことです。 ちなみに、 弾性体シールの場合給油が必要なバルブを除きいて初期潤滑剤により無給油で使用でき、メタルシールは無給油で使用できます。
②-2 無給油に給油している
エア回路のルブリケータは使用については使用する電磁弁の型式において使ってよいかご確認ください。
③ 電気的寿命
③-1 サージによる誤作動
サージとは標準的な電磁弁は供給電源をOFFにした際に逆起電圧が発生します。これらの突発的な高電圧が電子機器に被害を与えます。
【例】非通電状態の電磁弁が切り換わる場合がある。
サージによる誤作動の恐れがある場合には、サージ対策が出来る電磁弁を選択すると良いそうです。 呼び方としては
- サージキラー
- サージアブソーバ
- サージ電圧保護回路
などで、バルブ内部で発生したサージが出力接点へ影響を与えないよう、出力接点の保護が出来るものを選択すると良いです。
最後に
以上、 どれか該当するものがあればピンポイントに対策してみてください。
電磁弁を調べ出したらとても奥の深いアイテムでした。
この記事を読むと 始めからメタルシールで選定する必要性を感じる方も多いかと思いますが、弾性シールタイプで駆動されている機器が多くて主力も多いのでその判断は慎重に行うのと、もし故障や寿命が早期に来るとしたら、環境・構造・機械的な不良も考えられるため、電磁弁だけに意識を向けることは勿体ないのかもしれないです。
もし電磁弁の早期故障に悩んでいる方がいたら、動作環境やそれが駆動する エアシリンダの故障(スティック・動作不良が電磁弁の故障?と勘違いすることもあるため) も視野にいれて総合的に判断してもらえればと思います。
以上です。
-
空圧その他
空圧その他 製品別の計算 エアスライドテーブル【MXQ】シリーズの評価選定計算 マグネット式ロッドレスシリンダ【CY1H】の評価選定計算式 メカジョイント式ロッドレスシリンダ【MY2】の壁掛け評価選定 ...
続きを見る