今日は「2DCADと3DCADの違いについて私が感じたこと・結論の纏め」についてのメモです。
私は元々2DCADにて機械設計をしていました。 現在では2DCADから3DCADに移行し、3DCADのみで機械の設計をしています。 当初、2DCADから3DCADに移行した時にも多くの気づきがあったわけですが、長年使ってきて今頃気づく新しい出来事もあります。
そこで今日は、2DCADと3DCADの違いについて私が感じたこと・結論を纏めてみたいと思います。
2DCADと3DCADの違い(一般的な情報)
まず先に、2D・3Dの一般的な違いをご確認ください。
2DCADは「三角法」というルールに基づき、正面図、平面図、側面図という構成で描かれており、3つの角度から見た形を2Dの図面で表現します。これは手書き図面と同じ作業ですが、コンピュータで行うところが2D CADのメリットです。
簡単な図面であれば誰でも理解できると思いますが、複雑な図面を理解するには経験が必要です。
3D CADでは立体そのものを作成するため、任意の視点から立体をすぐに見ることができ、複雑な立体を認識しやすいことがメリットです。3DCADデータがあれば、専門知識がない方でも容易に形状を把握でき、コミニュケーションが図りやすくなります。
という事ですね。 では、もう少し踏み込んで私の個人的な意見を話してみようと思います。
2DCADと3DCADの使い分け
2DCAD・3DCADはモノが違うし、必要とされるステージが違う。
どうしても2DCADは3DCADに比べて古いイメージを持ちます。 しかし、フリーランスで仕事をしている私から見える お客様が使用する2DCAD・3DCADの割合は半々です。
というのも、2DCADと3DCADそれぞれ必要とされるステージが違うから なんですよね。 2DCAD・3DCADが一般的にどう使い分けられているかというと、
- 製品設計は3DCADが殆ど
- 機械設備設計は半々
- 配管、プラント系は2DCADもしくは2D要素が強い3DCADが多い
という一般的な使い分けで、現実もこのような割合です。
製品設計は3DCADを使う場所が多い
製品設計は、周辺の隣接機械など関係がなく 基本的に単体で完結できるもの です。 これに関しては3DCADを利用するのが一般的です。
その理由は
- モデルをぐるぐる回しながら見ることが出来、ムダな空間を省いた構造で設計できる(効率化)
- 斜面や少し複雑なスイープ形状などが容易にモデル化できる(デザイン)
- 3Dプリンタなどで使えるデータを出力できる(試作が早い)
- シミュレーションなどの解析が可能(品質向上)
解りやすいところでいえば上記の理由になります。
設備設計は2DCADと3DCADが半々、今は3DCADが段々増えてきている
では次に機械設備などの設計で使われるCADの説明をします。 ここで言う機械設備とは組立設備や加工機などの生産設備です。
機械設備の設計では、製品設計と違い設計した機器の隣接設備や建屋の壁など取り合い関係を表す場合が多いので、融通の利く2DCADが未だに根強く利用されています。
2DCADでササッと描ける内容も、3DCADで設計・表現するためには基本、モデルを起こさないとダメなので手間になってきます。 そんな事があるので3DCADへの移行が難しいく、2DCADによる設計が未だに残っている理由の多くはこれです。
とはいえ、そんな苦難を乗り越え3DCADのみで機械設備を設計している企業様も多くいらっしゃるので、勤める会社選びがCAD選びみたいなものですね。
私が使っているもの
私の使っている3DCADはソリッドワークスというダッソーシステムズが提供しているCADになります。 ソリッドワークスはミドルレンジの3DCADで2DCAD機能には弱いですが作図機能や直感的な設計操作に関しては抜群です。
私がソリッドワークスを利用している理由は、モデル作成に履歴があって、一部を変えると自動的にあっちもっこっちも、図面でさえも変わってくれる機能、そしてその関係性を切ることができないという機能は非常に便利だからです。
ポカミスを軽減してくれるメリットが大きいのです。(私自身がポンコツなので、これら機能がないと設計が出来ない体になっています)
覚えやすさ
2DCADと3DCADどちらが覚えやすいか
2DCADと3DCADのどちらが覚えやすいかを比較するには以下の2項目があります。
- 覚えるための環境が整っているか(教育環境やマニュアルなどが十分か)
- 覚えるための作業が出来るか
です。
実際、上記2つが満足であれば 私の経験上おそらく操作自体を覚えるのはほぼ同じ だと思います。
絵を描くこと自体が出来ればよいとすれば2DCADでも3DCADでもすぐに出来ます。 しかし、絵を書いた先の機能 応力の解析や変位の検証、干渉チェック を使いこなそうと思えば3DCADのほうが覚える項目が増えますので3DCADを覚えるにはそれなりの環境が必要です。
実は、3DCADを使っているといっても全ての機能を満遍なく使うところは殆ど無いと思います。 設計に必要のない解析はしませんし、モデルの作り方ですら人それぞれなので。
作業面
2次元CADと3DCAD覚えたらどちらのほうが作業が早いか
では次に、操作を十分覚えた際に、実際どっちが速く設計できるの? という疑問に触れてみます。
結論を言いますが
- 2DCADはスタートダッシュ(計画図)が圧倒的に早い
- 3DCADは設計中盤から後半でスピードが伸びてくる
- 最高速は圧倒的に3DCAD(後半チェックなどが少ない)
です。
3DCADは「履歴」を持つものと持たないものがありますが、どの3DCADも「関連性」というものがあり「アッセンブリの部品モデルを直すと関連の部品図も直っている」ということが大きな効率化を図っています。
私も始めは アセンブリ変わってモデルも変わるなんて怖くて仕方がない状態 でしたが、慣れてくると関連性も含めた設計をするようになりますので、たいした問題ではありませんでした。 2DCADの情報は線と文字 なので、計画などのポンチ絵は最速ですが、後半は細かい部分を書いていくのが辛くなってきます。
- 3DCADによって作られるモデルは 3面がすべて一致しているのが当たり前 ですが
- 2DCADによって書かれた1面は 設計者が2面目、3面目を書かなきゃだめなのが当たり前 です
つまり、機械設計において計画などの設計が2DCAD並みに3DCADの操作を早くできれば 3DCADのほうが全体で見たら圧倒的に早い(気にするところが少なくて済む) ということになります。
スキル面
2DCADと3DCAD、どちらも設計に要するスキルは同等です
これはすごく重要なところです。「図面を見る」という観点から言えば、先ほどのキーエンスさん引用にあります通り
- 2DCAD:複雑な図面を理解するには経験が必要
- 3DCAD:専門知識がない方でも容易に形状を把握でき、コミニュケーションが図りやすい
ということです。 2DCADを扱う場合、図解力は3DCADより必要 です。
ただ、誤解があるといけないので説明しますが、2D図面を見て モノの成り立ちを把握できる というのが図面を読むスキルで その構造が成り立っているか、品質は満足かの判断は2DCAD、3DCAD共に必要です。
つまり、2DCADも3DCADも設計しているモノの見え方が違うだけで設計の本質は 寸法・公差・幾何公差・形状 にあって、2D図面だろうが3Dモデルであろうが見え方が違うだけの話だと思うのです。 目標の成果物が同じものだとして、そこにアプローチするツールが2Dだろうが3Dだろうが設計スキルは同じ という事です。
どんなに3DCADが良くても2DCADは覚えておいた方が良いと思う
結論は 必要ないなら覚えなくて良い ということになりますが、メカ設計のエンジニアが不足している今、2DCADのスキルは以前より必要とされている気がします。
というのも、私の知る範囲では昔2DCADで作った設備の老朽化による更新設計や、新規の装置を付け加える場合などの仕事が増えてきているような気もいたします。 2DCADと3DCADをバリバリ扱える20~30代の設計者は比較的少ないというのも、各企業様が頭を悩ましているところですね。
2DCADを扱える設計士がこれからもっと不足してくる中、今ある設備を3Dモデルに置き換えるにはものすごいパワーが必要で、思ったより投資効果が薄い場合考えられます。 私の思いとしては、技術の継承も含めて若手設計者やこれからCADを勉強する方は2DCAD・3DCAD両方で設計が行えるのが理想 と思います。
私は3DCADしか使わないのですが、色々なお客様と付き合っていく中で2DCADをやらない事による機会損失も起きています。 2DCADも扱える状況だったら仕事には困らないのかもしれません。
3DCADのみで食べていけますが、2DCAD設計も請けられることで経営が安定する事は間違いないでしょう。
以上です。
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