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エアシリンダから電動シリンダへの置き換え・比較する際の基本知識

2023年12月23日

今日は 「エアシリンダから電動シリンダへの置き換え・比較する際の基本知識」 についてのメモです。

 

※この記事では、ロボシリンダ、エレキシリンダー、その他電動アクチュエータを電動シリンダーとしています。

 

機械の設計をしていると、簡単な動きに対して エアシリンダー と 電動シリンダー を比較したり、選択する場面にあたります。

 

お客様からの要求によってどちらを選択するか変わりますし、最近では 出来るだけ電動化していく といった形で、エアで元々設計していた機械を電動化へシフトすることもあり、私たち設計者はその時、エアシリンダの仕様を満たす電動シリンダを選択していく事になります。

 

物理的なスペースの問題で変更できない場所もありますし、エンドユーザー様の考えもあるわけで、結論としてエアを使ってはいけないという事ではないです。エアシリンダーを電動化しようと思っている人は多く、お客様から 「実際どうなのか、上手く代替え出来るのか」 などと、実際はそこの把握が難しいのが現実で 一歩踏み出せない お客様もいらっしゃいます。

 

私は基本的に電動派ではあるんですが、やはり 設置環境を加味したメリット・デメリットがあります。

 

この記事では、エアシリンダと電動シリンダを比較する際の 基本知識(把握しておくべきポイント) をメカ設計者目線でメモしていきます。 この エア駆動と電動の選択は、実装した時の機械生産能力や保守・メンテナンスに関しても影響を及ぼす ので、 まだよく解らない人は是非一読して把握してみてください。

エアシリンダから電動シリンダへの切替

結論、基本的にエアシリンダを電動化するのはほぼ出来る

エアシリンダーを電動化するにあたって、空圧機器を従来から扱ってきたユーザーからしてみると、

 

  • 一部を電動化するなら全部やりたい
  • 置き換えられるラインナップがあるのか
  • コストはどうなのか

 

といった疑問がでます。  結論、電動化はラインナップも多く、コストも設計次第では安くいける と思います。

 

具体的に言うと、 押す・引く・掴む などに 必要な基本計算が間違っていなければ 物理的なスペースに問題がない限り電動化は出来ると考えて良いです。

 

コストも設計次第では安くいける と表現したのには理由があって、私たち設計者の選択によってはコストが高い機器が選択される場合もあるからです。 サーボ仕様とパルスモーターではコストが全然違うし、多点のロボシリンダと2点位置のエレシリンダでもトータルコストが変わってきます。

 

 

電動化はエアシリンダよりもピンポイントな速度計算が必要になるがより正確な作業が可能になる

設計者目線から考えるエアシリンダから電動化することのメリットは、タクト計算がしやすい事があげられます。

 

エアシリンダでは、予定している時間内に仕事を終わらせるために 供給エアの圧力やエアの流速を変えるなどして 現場現物でざっくり スピードを変えます。 対して電動シリンダは エアシリンダーのように 無理を基本的にはさせられない ので、設計段階で動作サイクルなどを設計します。

 

電動化にすることで、予定通りの動きを寿命まである程度把握しながら実現できます。

 

 

設置スペースの比較

エアシリンダは周辺部品が多く電動シリンダはモーターが付く 

エアシリンダと電動シリンダを比べると スペースの問題が一番最初に挙げられる事が多い です。

 

確かに 電動シリンダは駆動部にモーターが付くのでサイズ的には大きくなりがち ですが、使用する上ではあまり影響が無いと個人的には思います。

 

例えば、エアシリンダを使ってワークを押し出す場合、 内部圧力をどこかで止めないとエアシリンダは動き続けます。 それが、内部で当たって止まるのか、外部にストッパーを付けてそこに当てて止めるのか。

 

電動シリンダの動作はエアシリンダと違い 座標という概念に基づいて行われるので、原点からの移動量で動作を行い、指定位置で自分で止まります。 そしてその位置を駆動部に触れずに変更できるメリットがあります。

 

エアシリンダではどうしてもスピコンに手が届くかどうかや、速度を上げるためにスピコンを緩めても、衝撃が強くなって思うように行かない事もあります。 そうなると、ショックアブソーバが必要になったり、案外スペースを取るのがエアシリンダーです。

 

 

電動シリンダは形状バリエーションが豊富

電動シリンダはモーター駆動の制御となりますので、エアシリンダと単純にサイズ比較するとエアシリンダより設置スペースを必要としますが電動シリンダは各メーカーが モーターストレートもあればモーター折り返し、更にはケーブルの取り出し方向を選択できたり、バリエーションが豊富 です。

 

 

電動シリンダは同じ形状なのに出力選択肢が多い

エアシリンダの方がコンパクトに設置しやすいが 電動シリンダは出力選択肢が多いというメリットがあります。

 

電動シリンダの構成は

  • モータ+ボールネジ(出力幅が豊富)
  • モータ+タイミングベルト(長距離に有利)

 

などがありますが、ボールねじを使うタイプはボールねじのリードが選択できるので、 比較的ゆっくりな動作で高推力 や 比較的高速で低推力 などの選択が可能 です。 (※リードとは:ねじ・ボールねじなどで1回転あたりに進む量)

 

つまり、エアシリンダのように 1形状で一定の速度と推力で尚且つ衝撃コントロールが難しい ことは無く、 その範囲内で設定が出来るというメリットが大きい です。

 

つまり、ここで しっかり計算できていれば電動化でも十分コンパクトに設計できることも設計者として知っておくべき だと思います。

 

 

 

エアチャック・ロータリ・押付動作の電動化も可能

まずはこの動画を見てください。

 

 

 

 

 

このように、今はあらゆるものが電動シリンダに置き換えが可能 となっています。(これはIAIさんのエレキシリンダ:通称エレシリです)

 

 

エアチャックの電動化

エアチャックの電動化は思ったよりすんなり変えることが出来る と思います。 但し、エアシリンダのチャックの特徴である把持距離が離れるとチャック力が減衰していく部分は電動チャックも同じ なので、選定機種の把持力グラフを見て選定していくだけです。

 

 

ロータリーの電動化

エアシリンダでいう ロータリーシリンダの電動シリンダ化も可能 です。 この時も 回転に関わる計算をして置き換えますが、その時に必要な項目は主に 慣性モーメントの算出で、その慣性モーメント(負荷イナーシャ)を許容できる機種を選ぶことになります。 エア式のロータリーは 加速・減速は考慮しずらいのですが、電動化に当たっては加減速も考慮する必要 があります。

 

 

押付動作(ピン圧入やかしめ)は電動化

エアシリンダでは容易な押し付けですが、 一部の電動シリンダを除いて押付動作は可能 で、中にも  押し付け停止安定性に優れたものもある ので、選定は用途に応じてメーカーに確認すればよいです。(その殆どがカタログに押付動作が可能かどうかが解る)

 

また、中には オプションでロードセルを付けて力制御できるものもあり、押付け力のフィードバックをとることで、従来の押付け動作に比べて高精度の押付制御が可能になります。

 

正確な押付け力の管理ができるのでピンの圧入作業も可能になり、ピン圧入やかしめ作業もできます。 むしろ電動化することで圧入する際の閾(しきい)値設定によってピンの圧入が正確に出来たのかも判定できるのと、完了位置まで到達しているかの確認もできるのが電動化のメリットですね。

 

ちなみに、例えば50stの範囲内で押付動作をする場合、ストローク範囲内であれば2種類以上の押付も可能 となります。

 

 

補足:電動シリンダの縦使いは少し注意

垂直設置の場合、通常運転では問題ないですが 長期間停止した時にグリスがモータユニットに流れ込んで稀に不具合を発生する可能性があるそう なのでモーターはできるだけ上側になる様設置するのが望ましいと思っています。(決してダメでは無い)

 

 

最後に

最近では 電動シリンダを使った新規設計の機械が多くなっていますが、従来のエア仕様の機械も根強く存在します。 まだこれから電動シリンダを使うという設計者の方は、まず電動シリンダを触ってみるなどするとよりイメージが湧きます。

 

そして、電動化によって求められるのは正確な計算 です。 単純に元圧によって得られる推力だけを見てエアシリンダを選定していたのが、電動化になることで駆動対象の重さや加減速、駆動速度など選定時に計算することが増えるので、 選定に時間が掛かる分、出来上がった装置は狙いのものができやすく、長期利用が出来、メンテナンス回数が減るのも電動化のメリット となります。

 

 

以上です。

 

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