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組立図の書き方

2017年2月16日

 

今日は 「組立図の書き方」 についてをメモします。

 

3DCADの普及により 従来より組立図を書く機会も少なくなってきているように見えますが、組立図というのは、実際に組み立てるときだけに必要な図面ではない ので、機械設計者はこの組立図をいつでも適切に書けるようになっておくと良いと思います。

組立図の書き方

組立図とは

組立図というのは 複数部品が組み合わさった完成品が図面になっている わけですが、  ほんの数点の部品が組み上がる製品ならすぐ書けるものの 部品点数が増えれば増えるほど組立図は難しくなってきます。

 

組立図をどう書いたら良いか解らない(特に初心者)方にとって、組立図を作るのは苦痛だと思うんですが、そもそも 組立図に書いていく内容は各企業の内部だけで作り上げられる外に出ないノウハウの塊 です。

 

その為、初めから組立図を書ける設計者はおらず、長い年月を掛け、色々な経験をして最適な組立図が書けるようになると思います。 私の場合、3DCADによる作図をしているので、各面一瞬で出せますし、断面も自由自在。風船も打ち込む事がなく、2次元CADの時よりも負荷が減ってきていてそれほど苦ではないです。

 

どちらかというと好きな作業です。

 

その組立図は、CADでも手書きでも 求められる要素は同じ なので、 組立図ってどうあるべきなのか を軸にしながら組立図の書き方を以下メモしいきます。

 

 

組立図の定義

組立図の定義って皆さん知っていますでしょうか? ものづくりWEBの「組立図の書き方 - 機械設計エンジニアの基礎知識」にはこんなことが書いてあります。

 

引用(ものづくりWEBより)
組立図は製品全体を表せるように 正面図、平面図、側面図 の3方向のビューで表し必要に応じてその他の投影図や断面図を追加します。
組立図には製品全体の最外形(製品の大きさ)の寸法を記入します。

 

その他で、辞書関連で行くとこんなことが書いてありました。

 

引用(大車林さんより)
複数の部品を組み立てて、機能上、または取り扱い上のまとまり状態を表現した図面。アッシー図ともいい、部品図と区別して呼ばれている。
組立図だけで対象製品や対象部位の全体像は把握できるが、個々の部品・部位の詳細についての情報量が不足しがち。それを補完するために部品図や詳細図を併用して使われることが多い。単純な組立て図の場合は、個々の構成部品に形状寸法や仕様を併記して、部品図や詳細図を兼ねる手法も使われている。

 

以上のように組立図の説明が書かれています。 要するに組立図の書き方は設計者次第 ということが解りますよね。

 

 

組立図に必要な項目は大きく分けて「3つ」

さて、ここからは私の考えを書いていきます。

 

組立図を書くに当たって、ベースとなる考えは 「誰が見ても、何がどうなっているか解るもの」 ですが、そのために組立図へ記載する必要のあるもの大きく分けて3つあります。

 

  1.  設計者・設備管理者向けの 能力値(テキスト)を記載 すること
  2.  組立・調整者向けに、 機械を組み立てるための情報(寸法など)を記載 すること
  3.  発注に必要な 部品表や風船を記載 すること

この3つです。 複数のユニットによって構成される機械になると、上記を 全体図、部分組立図 などの階層ごと組立図を作っていきます。

 

  1. 全体図(ユニットA/B/Cが組み合わさったもの)
  2. ユニットA 組立図
  3. ユニットB 組立図
  4. ユニットC 組立図

 

こんなイメージです。

 

① 設計者・設備管理者向けの能力値(テキストや表)

1つ目の「設計者・設備管理者」向けの能力値(許容値)とは、この機械は どの速度でどう動くとか、他の設備との関連性だとか、可搬重量は最大ここまでとか そんな能力を数値で記載する事 です。

上の図でいうと左上の 薄赤部(場所は問わない)に表を作り 左に項目、右に値 の表を作って貼るなどをします。(ちなみに右上は部品表)

 

冒頭で、実際に組み立てるときだけに必要な図面ではない と書きましたが、まさにこの部分 で、ここで書いた組立図を使ってDRをしたり、CADモデルを開けない部署へ回ったり、設計完了前にも組立図が必要になってきます。 組立図をDRに持ち込むメリットは 俯瞰的にその機械を見ることができ、モデルでは確認に手間のかかる寸法を全体を見渡すことができる こと です。

 

組立図が不要という人の多くに 今は3Dモデルを見ながら組み立てられるから不要 という意見もありますが、それは各シチュエーション別で必要性が変わってくるので、DRなど組立以外のポイントでも使われることを考えると 半分正解で半分間違っている と個人的には思っています。

 

 

② 組立・調整者向けに、機械を組み立てるための情報(寸法)を入れる

2つ目の「組立・調整者」向けには、その機械を組み立てるための情報を入れていきます。  例えば、

 

  • 部品同士をどう当て付けて固定する とかのコメントを入れたり
  • 特定の調整ネジはこの寸法で取り付ける必要がある とかコメントを入れたり
  • 特定のねじに対して締め付けトルクは何N・mです とかコメントを入れたり
  • 搬送レベルの高さはこの高さです とかコメントを入れたり

 

こんな内容です。 上記のような言葉で表すしかない方法もありますが、基本的には「寸法」によって表現する事が多い です。 組立図寸法の入れ方については記事後半で触れます。

 

寸法入れや要所要所のコメントは 関わるそれぞれの 「担当者としての目線」 で組立図を書いていけばいいと思います。  出図以降関わる担当者はどんな情報を組立図から読み取りたいのか。 を考えながら記入していくということです。

 

 

③ 部品表を載せそれに連動する風船を各部品に上げる

組立図には 漏れがない部品表と上げ忘れのない風船が必要 です。

画像はイメージ把握用のオリジナル画像用で作成したものですので少し雑です・・・。

 

どの部品がどこにつくのか、締結に座金が必要か、材質はSUSなのか など、細かい情報に風船をたどって確認できるようにします。 よろしければ 図面内に必要な部品表の参考 をご確認ください。

 

 

このように、 組立図というのはその対象となるユニットの 外形・寸法・仕様・構成が解るようにされた図面 を指します。

 

 

組立図作図でとても重要な事

組立図を書く上でとても大切な事だと思うのは 誰が見ても、何がどうなっているか解るものを書くという意識 だと思っています。

 

その図面は、これから多くの人に利用されるんです。図面って、将来の可能性を左右する大切な物なんですよ。 たかが1分のレイアウトを考える時間にどれだけ未来の効率化が出来るのか。 誰でも解るくらいシンプルで解りやすいものだとしたら、それに関わる人達の図面を眺める時間が個々では短い時間かもしれませんが、まとめるとかなりの効果になるんです。 ただ単純にお絵かきだと捉えているとだめ なんです。

引用:【必読】図面の役割と製図者の意識

 

図面は組立図・部品図共に誰が見るか特定できません。 特に組立図の書き方はセンスが分かれるところ。

 

その組立図を見るのは一人じゃなくて最終的にどこの階層の人まで見るか解りませんから、経験を色々と積んでいく中で自分なりの表現方法・表現の仕方を増やすしかない と思っています。 図面のレイアウトにしても、寸法の入れるべき所や注記を書く必要があるところを見せようと思ったら、おのずと正面・平面・右側面・部分詳細図・断面図などが決まってくる と思います。

 

そして きれいな図面は仕事もきれいに収める ことができるので、私たち設計者は組立図に対して拘りを持つことも大切だと考えています。

 

組立図の寸法の入れ方

次に、組立図の寸法・テキストの入れ方」についてです。 3DCADの普及により、今では3Dモデルを見ながら組立をする機会が増えてきました。 そうなると「モデルの使い勝手」に目がいきがちになってしまうために組立図の寸法の入れ方など、時間を掛けて丁寧に教わる事も減っているんじゃないかと思っています。

 

ただ、組立図がこれから先に不要かというとそうではないです。 私は様々な機械を設計していく中でどうしても組立図が必要なポイントが発生しているからです。 組立時はもちろんですが、打合せを効率よく行うため、設計者同士のやり取りなどに重要な役割を持っています。

 

組立図寸法の入れ方と順番

本当は、参考の組立図を用いて説明するのがベストですが、図面というのは外部に出せないものなので、 ここでは組立図の寸法の入れ方を文章でお伝えすることにします。

 

組立図に入れる寸法は下記 ①〜⑥+補足 を記載すればOKですが、 組立図は 基本的に累進寸法ではなく並 列・平行寸法を使って入れていきます。 それは、実際の組立時に現場では測定をしながら、組立を行うため認識しやすい寸法が理想だからです。

 

また、大切なのは 伝えること なので 寸法が入れづらいものや把握しづらいレイアウトの場合は寸法を入れながらレイアウトも直していけると良いと思います。

 

①全体・概略寸法を入れる

組立図に 必要な寸法、まず一つ目は全体・概略寸法 です。 主に

 

  • 全長
  • 全幅
  • 全高
  • 分割位置
  • その他目安となる位置

です。(下のイメージ図は平面の場合)

私が大体意識している全体寸法は2つ あり、カバーを含めた全体寸法とカバーを省いた装置自体の全体寸法になります。 カバーが装置に密着している場合はカバーを含めた寸法で全体寸分としますが、装置からカバーが離れ、自立して立っている場合は、カバーを含めた最大寸法と、カバー内の装置最大寸法に区別(実際には図面2枚目を作るなど)し、空間がどれくらい空いているかの寸法も入れています。

 

全体寸法を入れる目的は、全体のスケールを把握するためですが、最大寸法をいれるといっても、ネジの微妙な飛び出しも含めるなどの どこの部分か解りづらい端数の寸法は必要無い限り加えません。

 

 

②機械のとなる基準寸法を入れる

次に、装置の基準寸法を入れます。 基準寸法も大きく分けて2つ あります。

 

  • 設備が据え付けられている基準寸法(設備中心や中心から設備端面、その他構成する部分の設定位置など)
  • 設備の仕様基準寸法

上記の 二つです。

 

1つ目は、設備が据え付けられている基準寸法になります。その機械が建屋の何処から何処に設置基準があるのかや、設備中心から左右にどれだけ出ているかなどの設置するための基準寸法などになります。

 

2つ目は設備の仕様基準寸法です。例えば搬送装置であれば、機械内の搬送ピッチなどの寸法です。これは実機では目に見えない部分がほとんどですが、非常に重要です。ポイントは、上記1つ目の基準から2つ目の仕様基準寸法に寸法が繋がると、見る人が解りやすいです。

 

 

③駆動・可動寸法を入れていく

機械に含まれる駆動機器の動くストロークを記載 します。 ストロークと合わせて表現したいのは、可動した後の絵になります。可動した絵は「二点鎖線」で記載します。

※重要 組立図でここを注意深く記載しないと干渉を逃したりしますので絶対にサボらないようにしたいところです。
※組立図が出せないため、簡易図面で失礼します。

 

2DCADでは可動前のモデルをパターンコピーして隠線を消し、実線の部分を二点鎖線にするのが一般的だと思いますが、3DCADになってからこのパターンコピーするのが少し表現しずらい場合もあります。ここをサボらないように記載します。 このストロークの寸法を記載し、更にそこから干渉物までの距離などを記載しておくと良い です。

 

 

 

④ユニットの全体寸法とユニットの構成寸法を入れる

次にユニット寸法を入れていきます。 

 

ユニット寸法のポイントは ユニット全体の寸法とそのユニットを構成する積み上げの寸法を記載していきます。  流れとしては サブユニット → 詳細へ入れていくわけですが、 ユニット寸法は工程別に分けるようにしたり、その組立て前に組んでおくサブユニットなどの寸法であったり、組立ての順番などで寸法を切り分ける ことがあります。

 

これはあくまで組立てのし易さを意識するものであり、ユニットの寸法が入っていることで見難くなるようであれば記載はしません。

 

 

⑤特記寸法を入れていく

特記寸法の 勘所は 購入品などの情報です。 主に

 

  • 購入品の取付寸法(カタログ値)
  • 購入品の特殊寸法、細目ピッチなど一般的ではない部分の記載(代表:フローティングジョイントや調整ねじなど)

 

組立図に悪影響が無い限り購入品の取り付けピッチや動作に関係する部分の寸法を入れていきます。 組立図には、仕様に重要な購入品の寸法を入れますが検図目的の意味がほとんどです。機械設計では、購入品のCADデータをダウンロードして使う事があります。その中間ファイルが実際の製品(カタログ寸法)と違う事はたまにありますのでミスを防止する上で大変重要な寸法となります。

 

補足:過去の購入品確認ミス

万が一寸法が違っていた場合、その他部品への影響も大きいことから、 私は組立図に悪影響が無い限り購入品の取り付けピッチや動作に関係する部分の寸法を入れて最後にカタログと照合しています。

 

 

⑥調整寸法を入れていく

調整寸法とは、例えばロッドシリンダーにフローティングジョイントを付ける際「ネジ部をどれだけねじ込ませるのか」などの、適当に組んではいけない部分や位置決めの無い場所(調整が必要な場所)の組立するための指示寸法です。

また、そういった部分は部分詳細図や断面などを書き、内部でネジが突き当たってないかなどを見て解るようにすると良いのと、少し離れた場所で調整を行う場合 「どこ」を調整するための場所かを明確にしておくと尚良いです。

 

例えば、ハンドルを回して調整する場合、風船のよこに「〇〇調整用」などと記載します。

 

さらに、調整組立後に「どことどこの距離がこの寸法ならオッケー」という寸法があると良いです。 例えば組み立てた後の関連する他の部品までの距離などです。機械は部品(公差)の積み立てで出来上がっているので部分詳細図と同じように組んでも、結果的に寸法が若干ずれたりすることがあるためです。

 

 

 

補足:組立図にあると便利なテキスト

ここからは、寸法以外に組立図で重要な役割をする注記やテキストについてです。

 

補足-1 強度メンバーのサイズ(鋼材やシャフト径など)を記載する

強度メンバーとは、機械を支える鋼材 です。その鋼材のサイズを記載することにより、事前に強度が足りているかの検討がし易くなります。

 

これは特に計画段階で必要な内容になりますので、私の場合計画段階の組立図に 強度メンバーを記載 して、詳細に入るときに消します。全ての部材を記載する必要はなく、その装置で強度や剛性を特に注意するべき場所のみ記載します。(実際にこれでお客様も事前に確認できるので「もっとゴツくして」などの要求を初期でもらうことが出来ます)

 

 

補足-2 組立時に注意することを記載する

組立時に注意することとは「一般的なやり方と違います」という場所を記載 します。例えば特定のネジに対して「ロックタイト塗布」の指示をするような、普段は使わないけどここだけは利用してくださいねって場所です。ネジの締め付けトルクなんかも、これに該当します。

 

 

補足-3 勘違いし易そうな場所へのコメント

上記の組立時に注意することと似ていますが、勘違いし易そうな場所と見分けのつかないような場所へ、それらが解るようにコメントを記載するという事です。

 

例えば「RL」という記載を利用しますが、ただの「R側」と記載するのではなく「上流よりみてR側」などです。また組立図順番なども重要ですので記載するようにします。ちょっとしたことですが、その図面に関わる人たちの気持ちになって組立図を作成するとよいと思います。

 

これが組立図の基本です。 以上です。

 

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