今日は「ねじにロックタイトを塗布すると、ねじの軸力が変わる」についてのメモです。
ロックタイトをねじに塗布することで 摩擦力の均等化 が図れます。
この摩擦力の均等化は、正確には「摩擦力減」という考えでも良いかと思います。 ねじを締めこんでいくとき、その締め付けトルクはネジ部の摩擦であったり、座面(ねじ首の座面)の摩擦が ねじの締め付けトルクに影響 してきます。
同じ締め付けトルクでも、摩擦が少ないものは軸力が大きく、摩擦の大きい物は軸力が少なくなります。 ボールネジでの推力と、台形ネジの推力が違うように、回転方向の力が推力に置き換わる効率が変わるのです。
今日はそこの部分を計算式を使ってメモします。 シビアな設計・組立をされる方は是非参考にしてみてください。
ロックタイトは「摩擦力の均等化」が出来るので軸力が変わる。
それでは計算式を参考にメモしていきます。
締付トルク(ロックタイトの塗布を想定しない場合)
締付軸力1383*((有効径2.675/2)*((ねじ摩擦係数0.25/COS(RADIANS(30)))+リード角0.0595)+(座面摩擦係数0.25*(座有効径5.5/2)))/1000=1.6Nm
締付トルク(ロックタイトの塗布をする場合)
※次の式は締め付け軸力を「1737N」としています。ロックタイトの塗布をするので、摩擦係数は0.1です。
締付軸力1737*((有効径2.675/2)*((ねじ摩擦係数0.1/COS(RADIANS(30)))+リード角0.0595)+(座面摩擦係数0.25*(座有効径5.5/2)))/1000=1.6Nm
このように、摩擦が減ることで同じ締付けトルクでも軸力が違うことがわかります。
逆に計算してみると、もし同じ「1383N」の軸力を得ようとして、ロックタイト塗布有りと塗布なしで締付けトルクを想定する場合は
- ロックタイト塗布なし:1.6Nm
- ロックタイト塗布有り:1.27Nm となります。
※ロックタイト塗布しない場合の摩擦係数0.25及び塗布する場合の0.1は私の基準です。ロックタイトに指示されているものではありません。またこれらは経験からくる内容ですのでご理解ください。
設計においてねじの締結にロックタイトを利用するかは初めから決めておくこと
上記のように、ねじにロックタイトを塗布すると軸力が変わることが解りました。ここで意識しておくことは「バラつきがある」ということです。ロックタイトの塗布推奨として
- 貫通穴には、ナットが締まる位置でねじに数滴塗布する。
- 袋穴には、穴部の底にねじゆるみ止め接着剤を数滴たらす。
というのがありますが、このロックタイト塗布量が多くなってしまうと
摩擦力減 → 軸力が耐力を超える → ねじに思ったより負荷が掛かる → 想定外に破壊される
ということになります。 シーリングも兼ねてロックタイトを塗布するときは
- ねじ側に360度塗布し、隙間を完全に充填するようにする。
- 大きなねじや隙間には、タップ側にも360度塗布する。
とあります。
実際はねじが「摩擦力減」により、ちぎれるようなことは少ないのですが、振動・衝撃によりしばらく経ってからねじが伸びてしまい締結トルクのダウン(軸力不足)に陥り、固定物が動いてしまうことがあります。
そのため、設計においては指定のねじに対してロックタイトを塗布するかしないか、もしくは塗布量を適切に指示する必要があります。 特にぎりぎりの設計の物は注意してください。
最後に、この摩擦係数を含んだ計算をボルトサイズを変えたりして把握したい方は ねじの締め付けトルクと軸力の計算式 にあります計算シートをご利用ください。
以上です。
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